第2話 転生したての猫妖精。
前世で好きだったもの。
犬とか猫とかふわふわもふもふした生き物。
人間と虫以外の生き物。
辛くて泣きたいときすがり付けたのは犬とか猫とかだったから。
だから私はいつも猫になりたいと思っていた。
自由だし可愛いし、ひとりでも生きていけそうだと思ってた。
気ままに歩き、気ままに眠り、気ままに遊ぶ。
羨ましくて仕方なかった。
猫が。
だからでしょうか。
私が
死ねたと思ってゆっくり目を閉じて、再び目が覚めたらモフモフだった。
香箱の体勢で寝ていたらしい私が眠りから覚めて最初に目に入ったのは自分の手。いや脚、前足か。
もふもふというよりふわふわのまだずっと柔らかな毛に覆われた小さな手、いや前足ね。
ひょいと持ち上げて裏返して見れば小さなピンクの肉球がある。
もう一方の前足にもあり、そっとさわれば柔らかくプニプニしていて弾力も程々。
魅惑の肉球ゲットォー!
パシパシと尻尾が地面を叩いて、自分に尻尾があることに気がついた。
振り返って見るとまだ細い、でも長い、針金みたいな尻尾。
あれ?と思う。
あんまり太くな、いやほっそ。
ほっそい。細いよ。
どうやら憧れの四つ足ではあるけれど栄養状態は良くないらしい。
気がついてしまうとお腹が減っていることも自覚してしまう。
自覚すれば更に認識は進み、更にお腹がペコペコに。
どうしようか。とにかくご飯。でもどうやって?もう人間に媚を売ることで生きるのは嫌だ。
悩んでみてはたと思う。もう自分は人間なんかじゃないんだ。四つ足だ。憧れの。
狩りをする。
そうだ、狩りをしよう。自分の力で生きてやるんだ。
意気揚々と立ち上り歩き出そうとしたところで大きな水溜まりに通せんぼされた。
ムッとするけどそこで初めて自分の姿、その全貌が目に入る。
毛の色はうっすらぼんやりだけどどうやらグレー、に見える。
耳は頭上、三角である。
ああ、憧れの猫。私は猫になったのだ。
嬉しい。
きゅうと細くなった瞳孔。瞳はオッドアイだ。金と銀?赤と青?よくわからない。でも猫だ。猫なのだ。
それだけで浮かれる私は背中についた異物に気づかなかった。
薄く透き通る羽が二対四枚付いていたのに。
私はとにかくロシアンブルーっぽい猫になったことに満足してうきうきと水溜まりを迂回して進んだ。
獲物を探すために。
まだ子猫らしい出しっぱなしの小さな爪にかかるのはどんな生き物だろう。
できればお肉が良い。
お肉食べたい。
私は鶏肉が好きだった。
でも鶏は大きいし、鳥は飛んで逃げるだろうし。
でもやっぱり草は嫌だ。お肉が良い。
キョロキョロと見回しながら歩き回った。
結果。
取れたのはどんくさいどぶネズミ。
いや確かに猫と言えばネズミだけどさ。
不味いよ?臭いよ?
仕方なく嫌々次に捕まえたセミのような虫は、目をつぶってがぶっとやったらハンバーガー。
ジューシーで歯応えもあって………美味しかった。
辛い。
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