二日目 2/5

「だから! 皐月ちゃんみたいに、貴方の本当の妹として振る舞わせて、ってこと!」

「あ、ああ……そりゃお前の好きなようにすればいいさ……」

 突然の出来事に、どぎまぎする龍野。

「お兄ちゃーん? そろそろ準備終わった?」

 廊下から、壁越しに声が掛かった。皐月だ。

「ああ。今玄関に行くさ」

「先に行ってるねー」

 そそくさと去る皐月。その気配を感じつつ、龍野が切り出す。

「そういうわけだ、睦月。行くぞ」

「!」

「返事をくれよ。行って良いのかわかんねえじゃねぇか」

「う、うん! 兄卑!」

「そこは変わらないのな……」

 睦月の準備が終わったのを確認した龍野。二人はすぐに玄関に向かった。


「よし、全員集合だな。残り時間は八分、よくやった!」

 龍範が笑顔で叫ぶ。

「それじゃあいつも通り、予定前倒しだ! 八分は自由行動の時間に追加してやる!」

「「はーい!」」

 龍野、睦月、紗耶香以外の須王家全員が一斉に返事をする。

「ねえ兄卑」

「何だ」

「思ったけど……お父様って、軍人なのかしら?」

「元自衛官と聞いたけど……いや、わからん。親父、自分の過去はほとんど話さないんだ。『土』当主だということ以外はな」

「ふうん……」

 そして全員が素早く車に乗り込んだ。


 大型ショッピングモール『クレイドル』。

 日本の玄関である成田にあるため、海外からの観光客が毎日無数に訪れている。大型ショッピングモールという肩書に恥じぬ品揃えで、地元住民はもとより、遠くから訪ねてくる人々からの人気は非常に高い。

 そんな人々の需要を満たす所に、須王家“七人”は到着した。

「よし、スーパーマーケットエリアに向かうぞ!」

 小隊の指揮官ばりのノリで、六人を導く龍範。

 五分後、目的地に到達した。

「さあ、各々に渡したメモ書きの通りの物を調達してこい! 特に質問は無いな?」

「「はい!」」

「よし行け!」

 戦場クレイドルにその名を轟かせる小隊一家は、完璧な役割分担をこなし始めた。


「戦果確認終了! よくやった、お前ら!」

「「ありがとうございます!」」

 公衆の面前故に多少小声ではあるが、それでもはっきり聞こえる声で返事をする須王家の子供たち。

「ではこれより、一二三八ひとふたさんはち(十二時三十八分)まで自由行動とする! 存分に楽しんでこい!」

 龍範の一声で、須王家は散り散りになった。

「さて、書店行くか」

 真っ先に一歩を踏み出した龍野は、かねてから行きたがっていた目的地に足を運んだ。


「よし、決めた。これを買うか……」

「いやあああああっ!」

 突如として、睦月の悲鳴が聞こえた。

「こいつは後回しだな!」

 龍野は手にした本を棚に戻し、睦月のもとに向かうことにした。

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