一日目 3/4

「私のりんごゼリーですわ! レディーファーストという言葉を知りませんの!?」

「俺が前からリザーブしてたゼリーだ! 今日は我慢しろ!」

「いえ、譲りませんわ! 私はりんごが大好きですのよ!?」

「そうかよ、でも俺だって譲れねえ! 俺が前から食べたがってたゼリーだからな!」

「うー!」

「ふん!」

 喧嘩は両者のにらみ合いに発展する。

 すると、そこに野太い声が割って入った。


「お前等、喧嘩してもいいが、部屋でやれ! ほら、早く!」


「はい……申し訳ございません、お父様……」

「悪かったよ、親父。ほらシュシュ……睦月、行くぜ」

「ええ。部屋で決着を付けましょう!」

「そうだな。じゃんけん九連戦とかどうだ?」

「先に五勝したら食べられるのね? いいわ、賛成」

 二人は部屋まで歩いて行く。その様子を見た龍範は、ほっと胸を撫で下ろした。

「ふう……あの二人が本気で喧嘩したら、リビングが大変なことになるからな」

「龍範さん、ちょっといいかしら?」

「紗耶香か、何だ?」

「うふふ。ちょっと、ね」


 場所は移り、シュシュの部屋にて。

「さあ、ここなら邪魔が入らないわね」

「ああ。決着、付けるぜ」

「ええ。望むところよ!」

「行くぞ。さーいしょはグー……」

「じゃんけん、ポン!」

 龍野の出した手はグー。シュシュの出した手は……チョキだった。

「よし、まずは俺の一勝だな!」

「ふん! すぐに追いついてみせるわ!」

「次だ次! さーいしょはグー……」

「じゃんけん、ポン!」

 今回龍野の出した手はチョキ。シュシュの出した手はパー。

「よっしゃ、二連勝!」

「まぐれよまぐれ、そうに決まってるわ!」

 しかしその後の二回は、どちらも龍野の勝利だった。

「いよいよ後一勝だ!」

「くーっ! どうして勝てないの!?」

「知るか! さーいしょはグー……」

「じゃんけん……ポン!」

 泣きそうな表情で手を出すシュシュ。

 今回の結果は……龍野がチョキ。シュシュがグーだった。

「やった、勝ったわ!」

「くっ、だが一勝くらい譲ってやる!」

 龍野は今度こそ、とばかりに続きを始める。

 しかし続く三戦は、全てシュシュの勝ちだった。

「これで四勝四敗ね! さあ、次で決着よ兄卑!」

「そ……そうだな! 俺が勝つさ!」

「やってみなさい!」

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