一日目 2/4
「ただいまー。皆、百合華の妹が来たぞー」
すると、五人の声が一斉に響いた。
「いらっしゃい!」
「ああ……嬉しいわ、私の為に宿を貸して下さるなんて!」
「貴女が百合華ちゃんの妹ね? 初めまして、私は須王紗耶香。龍野の母よ」
「初めまして、お母様! 私はシュヴァルツシュヴェーアト・ローゼ・ヴァレンティアと申します」
「百合華ちゃん……ヴァイスシルト姫殿下から、話は聞いてるわ。安心して泊まって頂戴!」
「おう、君が百合華ちゃんの妹か!」
「!? もしもし、あの立派な体格の方は一体……」
シュシュが涙目で龍野にすがる。
「(可愛いところもあるんだな、コイツ……)」
「もしもし、聞いているのかしら!?」
「ああ、俺の父親の須王龍範だよ。親父、頼むからあまり怖がらせないでくれ。彼女は男が苦手なんだよ」
「ああ、それは済まなかったな二人共! さて、龍野から言われた通り、俺が父親にして家主の須王龍範だ。よろしくお願いするよ、シュヴァルツシュヴェーアト姫殿下!」
「こ、こちらこそ……よろしくお願いいたします、お父様!」
「やれやれ、すっかり怖がっちまった。親父、豪快な声は抑えてくれよ」
「悪い悪い、いつもの調子でつい、な」
「それより、シュシュを部屋に案内してやれよ」
「シュシュ? ああ、シュヴァルツシュヴェーアトからもじったのか。ただ、呼びにくいんだよな……」
「そ、それでしたら……須王何々と名乗らせて下さい、お父様」
「そうか、それなら……睦月だな。須王睦月、どうだ?」
「睦月? ねえ、どういう意味ですの?」
「『一月』って意味だ。そっちの言葉だと……der Januar(デア・ヤヌアール)だな」
「へえ……貴方、ドイツ語が出来るのね」
「ドイツ語!? お兄ちゃん、かっこいいな!」
「百合華と一緒にいたせいだ。少しは話せるさ」
「誰なの、この男の子は?」
「ああ、俺の弟の龍斗だ」
「君が百合華お姉ちゃんの妹? よろしく!」
「ええ、よろしくね」
「ところで何月生まれ?」
「五月ね」
「くっそー、後一か月早かったら!」
「うふふ、私より年下なのね」
そこに龍範が割り込んできた」
「さて、シュ……いや、睦月。早速だが、君の部屋を用意してある。ついて来てくれ」
「はい、お父様」
龍範に連れられて、シュシュが自室に案内される。
「ここが君の部屋だ。いささか殺風景だが、少し内装を整えてある」
「いえ、ありがたいですわ! 丁度私好みの色合いですもの!」
「それは良かった。皐月からアドバイスを聞いて正解だったな」
ガハハと笑う龍範。
そんな彼を尻目に、シュシュは数日間を過ごす部屋にうっとりしていた。
夕方。食事を終えてデザートというときに、事件は起きた。
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