空手は空手でも沖縄空手だよ

 久々に体の使い方関連について解説してみようと思います。抜粋パートで使われているのはオリジナル剣術に近いですが、参考になったのは現実の武術です。


 皆さん、沖縄空手ってご存知ですかね?


 沖縄空手については……色々歴史がございますが、今回は割愛。武器を取り上げられた人達が編み出した徒手武術、というところだけ覚えてください。ちなみに私が参考にしたのは沖縄空手に使われている心身操作の技術です。


 とりあえず、沖縄空手の心身操作を参考にした抜粋パートを。参考になるかは、結構微妙な気がします。しかもこの抜粋パート、実は別の項目でも出していたという……。重力がどうって地の文に入れていたのはこのシーンだけだったんです、すみません。



☆抜粋パート

 アリシエの刀が鞘に納められた。だが右手は刀の柄を握ったまま。左手は鞘引きが出来るようにと鞘を掴んでいる。銀色の目が武芸者達の様子をしっかりと捉えた。対峙している武芸者の動きが止まり、他の二人に動く様子がない。それを確認するとその身体が前方に倒れ出す。


 突進しやすいように、アリシエは足を肩幅に開いて前傾姿勢を取っていた。だが刀を鞘に納めると同時に右膝を曲げる。不安定になった身体が、重心の位置によって前方へと急速に倒れ出す。それは次の攻撃への布石。


 アリシエの頭が床に近付く。鼻が床に触れる寸前に、アリシエは曲げたままだった右足で床を全力で蹴りつけた。重力によって加速した身体は、右足による踏み込みでさらに加速し、武芸者との距離を一気に詰める。足を踏み込む瞬間にはアリシエの左手が鞘を引くべく動き始めていた。

(「5-3 アリシエの本領発揮」より抜粋)



【解説】

 さて、いきなりですが本題に入りましょう。今回のオリジナル剣術(多分)の参考になったのは沖縄空手です。もともと沖縄には「空手」という名称はなく、「ティ」と呼ばれていました。


①「ティ」の系譜

三種類あります。首里手、那覇手、とまりの3つです。ですが、首里手と泊手は、術理に大きな違いがないため、今回は首里手と那覇手について。歴史は長くなるので割愛。各系譜の特徴を書いていきます


首里しゅり

武家の武術とも言われています。

首里手は「関節躍動」、スピーディーな技と動きが特徴です。身体操作は「肩から股関節を垂直に貫く二本の即軸を駆使した」もの、なんだとか。


那覇なは

農民の武術とも言われています。

那覇手は「筋肉躍動」、筋骨、パワー重視の動きが特徴です。また、那覇手には「三戦サンチン立ち」と呼ばれる立ち方があります。これは肩幅程度に足を開き、内股で立つという立ち方です。



首里では「六分の力でもって習練し、ひたすら敏活を旨とした」のに対し、那覇では「十分の力を傾注し、専ら、筋骨の発達に意を用ひた」とされています。

沖縄空手として知られているのは首里手の方なんじゃないかな。



②重力落下、重力移動(首里手)

首里手には重力を利用した動きがあります。これが、抜粋パートの参考にした部分です。説明にならないかもですが、善処します。


膝を抜いて倒れ込むことで加速し、その加速を生かして攻撃します。また、倒れ込む際は「見えない重心(仮想重心)」に向かって自然落下することで、体重を乗せた攻撃を可能とします。

この自然落下が「重力落下」になります。


同様に膝を抜いて重力を利用した「重力移動」があります。これは、体が前のめりに倒れるのでは無く「足の着地動作」だけで自然落下を作り、重力による加速及び移動を可能としています。


要するに、膝を抜く(脱力)による、重力を利用した加速と移動、です。逆にだつ脱力からの力みで攻撃の威力を上げたりすることも出来るんだとか(こっちはじ重力関係ない)。



③基本的な技法、動き(首里手)

無駄に力まず脱力する

無駄な動きはせずに最短距離を移動する

無理な身体操作はせず、あくまで自然体を意識

瞬発的に力むことで迅速かつ重みのある攻撃を可能とします。瞬発的に力むことで、あたかも「いきなり攻撃された」ような感覚を与えます。予備動作(無駄な動き)がない分、相手が攻撃を予測しにくくなるのです。





 沖縄空手は手元の参考資料が少なく(しかも古い)、これくらいしか書けませんでした。脱力からの力み、重力を利用した移動(倒置法とも呼ばれるらしい)、なんかは結構応用しやすいんじゃないかと思います。参考になれば幸いです。

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