カポエラーじゃないよ、カポエイラだよ

 誰得かわからないけれど、オリジナル武芸の解説をしていこうかと思います。正確には元になった武芸について、ですが。今回は四つん這いになる武術について。


 抜粋パートではアルウィスが四つん這いになって戦い、銀牙ぎんがなる人物が木の棒で応戦する。そんな手合わせのシーンです。



☆抜粋パート

 数歩後退したかと思うと床にになる。その姿は獣を連想させた。床についた両手は獣の前足。今にも床を蹴ろうとする両足は獣の後ろ足。銀色の目が放つ光は、まるで何日かぶりに獲物を見つけた狼のよう。絶対に逃げられない、殺される。銀牙にそんな恐怖を与える光であった。


 銀牙はアルウィスの奇妙な構えを見て、足を動かすのをやめる。次の瞬間、アルウィスが勢いよく床を蹴って跳び上がり、銀牙の頭目掛けて襲いかかった。頭を蹴ろうとしたようだが、銀牙は素早くしゃがんで攻撃をかわす。アルウィスはそのまま難なく床に着地。すぐに方向転換をすると四つん這いのまま再び銀牙に襲いかかる。


 四つん這いになって動きにくそうに見えるが普通に歩いているよりも速い。人間の四肢を獣の四肢のように動かして獣と同じような身体操作をしているのだ。それは高度な身体操作無くして不可能なこと。アルウィスの武芸は見た目の年齢にふさわしくないほど高度だった。


 四つん這いになるという事は通常の姿勢より目線の高さが低くなり、視野が狭くなることを意味する。一見不利に思えるかもしれないが、この戦い方に慣れているアルウィスとってはこの視野の狭さはむしろ


 目線の高さが低くなることで相手の足の動きが見やすい。足の動きを少しでも早く察すれば、攻撃の回避の成功に繋がる。攻撃への警戒は耳に聞こえる音と影の動きを頼りに行う。さらに、四つん這いの体勢からの行動は並の武芸者には不自然で次の動きが予測しにくい。故に戦いやすくなる。


 銀牙は木の棒を構えたまま何もしない。いや、正確には何も出来ない。動きが予想外過ぎて狙いが定まらない。アルウィスの攻撃を紙一重でかわすのがやっと。その動きを目で捉えることすら出来なかった。それはアルウィスの使う奇妙な体術のせい。


 アルウィスがしていることは四つん這いになって移動して襲いかかる。それを繰り返すだけの単調な攻撃。だがその姿勢が、動きが、銀牙の予想を軽々と越えてくる。未知の動きをするアルウィスを警戒して動けなくなった、見失った。気配と足音を頼りに首を動かして彼の姿を探す。今の銀牙にはそれしか出来ない。

(「1-5 力試しは黄色人種と」より抜粋)



【解説】

抜粋パートの必要がない気もしますが、解説では元となった武術「カポエイラ」について話していきます


①カポエイラとは

 カポエイラ、別名「カポエラ」。ブラジル発祥の武芸になります。

 様々な事を禁止されていたブラジルの奴隷達が、音楽にあわせダンスにカモフラージュしながら練習してた格闘技、護身術が元になってできたと言われています。

 カポエイラの特徴は華麗でアクロバティックな技の数々。さらに、全ての動きがアドリブを効かせた即興でありながら、お互いに歯車のように動きを噛み合わせて闘う事。そして必ず独特の音楽とともに、リズムに乗りながら闘う事。この三つだと思います。



②カポエイラの流派

 大きく二つに分けられます。「ヘジオナウ(へジォナウ)」と「アンゴラ(アンゴーラ)」です。この二つにはそれぞれ特徴があります。


※アンゴラ

四つん這いの姿勢を多く用いる。このため、間合いは近く、スピードは遅め。ただし、ものによってはヘジオナウより早くなることもある。駆け引きが多く、ステップは踊るように軽やか


※ヘジオナウ

立ち技メイン。アンゴラより間合いが遠く、スピードも早い。その代わり、駆け引きは少なく、力強いステップが特徴



余談ですが、抜粋パートで参考にしたのはアンゴラの方です。また、流派にはアンゴラとヘジオナウを融合させたような「コンテンポラニア」というのあるそうです。



③特徴

カポエイラの特徴は

楽器や歌など、音楽に合わせた独特なステップ

蹴り技やアクロバットな動き

大きくこの二つになります。四つん這いで移動することがあるってところも、他の格闘技と違うのかな(自信はない)


カポエイラには攻防や駆け引きを楽しむゲーム的要素が強く、勝ち負けも特に決まっていません。楽器を奏で、歌唱し、戦い、そして「楽しむ」。ここが他の格闘技とは違うと思います。



④「円運動」が肝!

カポエイラでは様々な場面で円運動が取り入れられています。技と技の繋ぎ、攻撃や防御……ありとあらゆるところに「円運動」が取り入れられているのです。このことから「円運動」が大事とも言われています。


攻撃する側が円で攻撃するのを、受けてが円運動でかわし、その回転の勢いで反撃をする。さらに円の中で組み手は行われ、移動も円を描くように行う。

直線的な攻撃、直線的な回避、ガードもあります。でも、円運動の方がよく用いられます。また、円運動には体幹の柔軟性が大事です。


余談ですが、私は直線的な攻撃の方を多用させました(いらない)。

さらに余談ですが、カポエイラは下段攻撃が多いらしいです。あと、正々堂々戦うわけではなく、視界の外からの蹴りなども普通にあります。





以上です。はたしてこれ、役に立ったかしら。気になる方は是非、調べてみましょう。男女年齢問わずで楽しめる格闘技ですよー!


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