短剣の正しい用途って、知ってる?

 皆さん、短剣ってご存知ですか? 種類を挙げるならダガー、ナイフ、スティレット、ら辺が有名でしょうか。そんな短剣について、今回は話してみようと思います。


抜粋パートの前に、まず短剣の定義を


※短剣

長くても刃渡り三十センチ以内

携帯性に優れ、生活の共にも最適

利便性のあるサブウェポン

種類は様々



 さて、抜粋パートでは虹牙こうがというキャラが短剣を使って戦います。というわけで抜粋パートをどうぞ!


☆抜粋パート

 本に没頭する虹牙に向かって手裏剣が飛んでくる。アリシエが反応するより早く、場に相応しくない金属音が響いた。その刹那、虹牙目掛けて飛んできた手裏剣が床に落ちる。いつの間にか立ち上がった彼女の手には、鉛筆にしてはやけに太い金属が握られていた。


 彼女が握っているのは短剣。筆記用具として持ってきた鉛筆に仕込んであったらしい。宮殿の図書室に来れば襲われると、最初から想定していたのだろう。彼女はこの緊迫した状況で、爽やかな笑みを見せる。その瞳は本棚の奥を見据えている。


「そなたたち、心の声がタダ漏れだよ」


 その言葉は水面に投げられた石のようだった。たった一石投じることによって、静かだった水面には波紋が広がる。それと同じで、たった一声が図書室内に響き、刃を突きつけられたかのような恐ろしさが波紋のように広がっていく。背筋が凍るかと錯覚するほどの殺気が図書室を覆った。


 アリシエが抜刀を行おうとした。しかし本棚同士の間隔が狭く、刀を扱いにくい。下手に振れば本棚や本を傷つけてしまう。宮殿の図書室にある書物は貴重なものが多いらしく、危害を与えてれば法律違反になる。それが何を意味するのか、今のアリシエには理解出来た。それ故に迷いを隠せず、鞘を引く手が止まってしまう。


 アリシエの迷いに気付いたのか、虹牙の挑発に乗せられたのか。何者かが虹牙との間合いを一気に詰め、その首元にクナイを向ける。クナイの先端が喉仏に触れるか触れないかという所で、敵が動きを止めた。首元には虹牙の持つ短剣の刃が食い込んでいる。


「アル。あと二人いるから、そっちは任せたよ。迷うくらいなら刀はやめるといい。そなたにはまだ武器があるだろう?」

「でもそしたら虹牙が――」

「大丈夫。私は、こう見えて戦闘員だからね。自分の身は、守れる」


 虹牙の言葉に、アリシエは刀を鞘に収めた。かと思えばその右手が、前腕に取り付けていた短剣――アサシンブレードの柄を掴む。短剣を引き抜いた彼は虹牙に背を向け、他の二人の敵を探し始めるのだった。


 アリシエがその場から去ったことを知り、虹牙がフッと小さくため息を吐いた。濃い青色の目に殺気が宿る。喉仏に向けられたクナイを左手で掴み取る。刃が手のひらに食い込み、鮮血が床に零れていく。とても痛々しく見えるのに、彼女は平然と笑う。敵の首にさらに刃が食い込む。


「さて、このまま死ぬか拘束されるか。好きな方を選ぶといい。あいにく私は、ほどじゃないが手加減が苦手でね」


 敵の短剣を奪い取った左腕が、相手の肩を抱え込む。左足は死客の右足を踏みつけ、右足は相手の左下肢に絡みついてその動きを止める。その状態で虹牙が少し体重をかければ、呆気ないほど簡単に敵を組伏せることが出来た。

(「13-1 招かざる客」より抜粋)



【解説】

主な使用法は斬撃、刺突、投擲、の三つでしょうか。というわけでこの三つの使用法について、抜粋パートをまじえながら解説していきます。



①斬撃

 短剣の斬れ味は、種類によって少し変わります。ものによっては、つばや刃の形によって「相手の剣を受け止められるようにする」なんてことも出来ます。余談でしたね。


 正直、斬撃に向いてるかというと微妙なところです。短剣は刃渡りが短いので、至近距離でないと攻撃出来ません。で、至近距離まで近づいたら、斬撃より刺突の方が効果的なんですよ。なので斬撃として使われることって実はあまりない。


 例えば、短剣で知られるダガーは、刺突や投擲に向いています。で、このダガー、実は対人用に特化して作られています。

一方、現代で普及してるサバイバルナイフの類は斬れ味に特化しています。多目的切断が目的だからです。

このように、短剣の種類によって変わってきますし、対人用となると結構マイナーです、短剣での斬撃って。


 本題に入りましょう。短剣での斬撃は、骨を断つことまでは出来ませんが、多少なりともかすり傷を与えることはできるでしょう。短剣の攻撃を布石にメインウェポンで攻撃なんてことも出来ます。でも、短剣一つ、斬撃で致命傷となると……やっぱり刺突ですね。


 至近距離で無理やり首の血管を切ることも出来なくはないですが、技術が必要です。抜粋パートの使用法も斬撃のようで実は刺突に近いです。力の入れ方などにコツがあるんだとか。……書いてて気分悪くなってきたので次!




②刺突

 実際の中世などでは、短剣で鎧を含む装甲の隙間を短剣で突き刺していたそうです。鎧の隙間ってほとんどが関節部位です。そこを短剣で刺突されれば、痛みで上手く動かせなくなるのです。刺突する場所によっては致命傷にもなります。短剣の一番の使い方ですね。


 骨を避ければ、ですが血管はもちろん筋肉にまで刃が達するかと。至近距離で刺突されれば相手もなかなかかわせません。ある意味斬撃よりも隙の少ない攻撃ですね。これはクナイとかにも言えますが、地面に穴を掘る、などにも使えなくはないそうです。非常時に短剣をサバイバルナイフのように使わせるのもありかも知れません。しかし、一つ注意点が。


 物(人体含む)に一度刺されば、なかなか抜けません。これは短剣に限らず全ての武器共通ですね。深く刺されば刺さるほど、抜くのに苦戦します。柔らかい地面や砂地なら別でしょうが。形状にもよりますが、基本的には深く刺さると様々な要因があって抜けにくくなるんですよ。人体なら、肉が絡みついて一苦労するそうです。特に喉は。……次行きましょうか




③投擲

 俗に言う「投剣」ってものですね。サーカス団の人とかがやってるイメージの、あれです。ですが、実は投げる用の短剣は一般的な短剣と「重心の位置」が違う。これは投げやすくするためです。

 この「投げる」という方法、あまり使われません。手元にメインウェポンがある場合は、不意打ちとして投げたりすることはあります。ですが「威力が低い」「武器を一つ失うことになる」の二点から、実戦では滅多なことでは投げないのです。


 投げ方は、刃または柄を持って、回転させるようにします。でも……投げるくらいなら接近して刺突にした方が殺傷力もありますし、武器も無駄になりませんよね。そんなわけで、使われるとしても遊戯、見世物ですね。




こんなところでしょうか。短剣は基本的に「刺突」で使う。ここだけ押さえておけばとりあえず間違ってはいないはずです。

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