槍の知識、正しく持ってる?
槍といえば……「短槍」という言葉を耳にしたことのある方、多いんじゃないでしょうか。えぇ、あれも槍の一種です。実は槍って歴史上で結構重要な武器です。使いやすさ、リーチがあるが故の敵との距離感、などから重宝したんだとか。
抜粋パートの前に、槍の種類について説明を。槍は大きく三つに分けられます
長槍
集団同士の戦闘で効果を発揮しやすいが、接近されると対処が非常に難しい武器
短槍
個人戦や室内戦などの閉所で活躍しやすく、複雑な形状をしている物も短槍が多い。騎兵槍もここに入る、らしい
投槍
文字通り投射しやすいように造られた物。短槍の中にも投射できるように造られた物も存在するが、基本的に投げる槍は全部投槍として扱われる
抜粋パートは……主人公と槍使いの戦いです。抜粋パート、今回もいらないかもしれませぬ。余談ですが敵が使っている槍は長槍です。
☆抜粋パート
アリシエの言葉に槍使いが応じることは無い。言葉を返す代わりに、手元に引き寄せた槍を突く。アリシエが刀身を利用してその軌道を変えれば、また槍を手元に引き寄せて突いてくる。槍の素早い連続した突きに、アリシエは刀身を使って防戦することしか出来ない。
アリシエの行う防御は、刀身を使って穂先を弾くというひどく雑なものであった。可能なら刀身で攻撃の軌道をを変えながら前進したいところである。しかし、槍使いの突きが予想以上に素早いため、なかなか活路を見出すことが出来ない。それどころか、攻撃を防ぐことに限界が近付いている。
刀身で攻撃を受け続けるということは、斬り結びを繰り返すことと同義。防戦を続けることでアリシエの刀は刃こぼれを起こし、斬れ味が落ち始めている。さらに、槍の突きを右手だけで受け止めていたため、右腕が痺れ始めていた。利き腕に異変が生じれば、自ずと
ついにアリシエは右腕の痺れから刀の操作を誤った。受け損なった槍の軌道を逸らしきれない。中途半端に軌道を逸らされた槍の穂先が、アリシエの左二の腕を抉った。穂先に抉られた小さな肉塊が地面に落ち、傷口からは血が流れ出す。その攻撃に誰よりも驚いたのは、アリシエだった。
たった一撃だった。二の腕の肉が僅かに穂先によって抉られ、生温かい血液が左腕を伝って地面へと零れ落ちる。傷を負ったことをきっかけに、アリシエの目の色が変わる。その口からは小さな呻き声が洩れる。それが始まりだった。
それまで刀身で受け止めていた突きを、今度は右の脇で挟んで止める。怪我を負った左手はその柄の部分をしっかりと掴んでいる。槍の柄を両手で固定されてしまっては、相手も槍を動かせない。それが狙いでもあった。
先程までそれをしなかったのは、失敗した時のリスクが大きいためである。それまで避けていた防ぎ方を唐突に始めたのは、アリシエの心境の変化が原因。アリシエは槍の柄を挟んだまま一気に前進し、敵との間合いを詰めようとする。だが、アリシエの狙いに気付いた敵は槍を捨て、予備にと身につけていた短剣を右手に構えた。敵が槍から手を離した瞬間に、アリシエに大きな隙が出来てしまった。
持ち手を失った槍が地面に落ちる。その重みを支えることが出来ず、アリシエは槍を掴むことを諦めた。槍を掴むのをやめたアリシエに向かって、短剣を構えた敵が迫る。短剣を振り下ろそうとする槍使いの左手は、アリシエが掴むのをやめた槍の柄を取ろうとしている。その時、事が起きた。
(「10-3 見え隠れする狂気」より抜粋)
【解説】
槍の戦術について話しましょう。槍は刺突をメインに、斬撃や打撃で戦います。で、この「刺突」は実は致命傷になりやすいんです。また、中距離で戦うことに秀でており、敵との距離がある程度保てることから他の刀剣類より恐怖心が和らぐのだとか。
さて、余談はここまで。ポイントを上げていきますね。
①槍は単体では持たない
槍は長い柄を持つ中距離に特化した武器です。が、その特徴のせいで狭所や接近戦なは向いていません。狭い場所などで戦う際には、長所である長い柄が邪魔になるんです。このため、槍使いは大抵、短剣や刀剣、はたまた小盾など……。狭所や接近戦で困らないように、槍とは別に武器を持ち歩いていました。
抜粋パートでは敵が短剣を出していますね。槍が不向きな状況ではこんなふうに、短剣とかを使って戦うのが主流なんです。どうして二度手間になってまで槍を使うかと言いますと……次で説明しましょう。
②圧倒的火力を誇る
文字通り、です。実は槍から放たれる攻撃のほとんどは致命傷になります。特に「刺突」は、鎧を身につけた相手にも有用だったとか……。急所や関節を狙えば、殺せずとも大ダメージを与えることができます。それだけではありません。槍の魅力は「刺突」だけではないのです。
打撃……穂先や柄などで叩きます。脳しんとうを起こしたりすることも可能なんだとか。
払い……長い柄で相手の足を払い、体勢を崩す方法です。相手が隙を見せた瞬間に攻撃します。他にも、相手の攻撃を凪ぎ払うこともできます
槍の長所は攻撃方法だけではありません。
③比較的扱いやすい
実は槍、基本操作や用途が簡単とされています。もちろん、変わった槍や穂先の形が妙なもの(十字槍とかハルバードとか)になると扱いが難しいです。ですが、ごく普通の槍であれば、戦うようになるまでにそう時間はかかりません。この長所のために、徴用兵などを戦力とするのに槍が使われていたんだとか。
④基本動作
右手で柄尻に近い側を握り、左手を前に出して支える構えから、左手の中で滑らせながら右手の力で突き出す
これが最も基本的な使い方です
ですが、槍は攻撃方法や状況に応じて構え方などを変えていたようで、絶対にこれという動作はありません。すごい人だと適当に振り回すだけでも攻撃できるのだとか(諸説あります)
一番大事なのは「実力、身の丈に合った槍を扱う」ということでしょうか。体に合った槍を選べば、問題ないでしょう。余談ですが振り回すにしても構えるにしても、それなりの握力筋力は必要です
お役に立てたら幸いです
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