番外編…止血法

出血シーンは戦闘を書く上で外せないですよね。でも、下手に書くと死なせてしまうかもしれない。死なせるには惜しい。そんな時に役に立つかもしれない「止血法」です。少なくとも現実世界では確実に役に立ちますよ



今回は説明するにあたり出血の種類について先に説明しますね


 1動脈性出血

文字通り動脈からの出血。色は、脈を打つように「ピュッ、ピュッ」と血が噴き出します。短時間に多量の血液を失うので速やかな止血処置が必要となる、緊急性の高い出血ですね


2静脈性出血

 文字通り静脈からの出血。色は動脈血に比べ。こちらは持続的に「ジワー」と出血します。動脈性出血に比べ慌てる必要はありません。が、出血が多い時は速やかな止血処置が必要です


3毛細血管出血

 転んですりむいた時や、指先を切った時など滲み出るような出血です。日常で怪我した時の出血はほとんどこれですね



ポイントは、動脈性出血と静脈性出血の違い。まぁどっちも止血するに越したことはないんですけれど

※鮮やかな色の方が緊急性が高い

※噴き出す出血の方が緊急性が高い

とでも覚えておいてください




 では、いつもの抜粋パートと解説パートを。


☆抜粋パート

 右拳にはクナイが刺さり、その中指と人差し指の間には小刀が挟まっている。左前腕には深い斬り傷があり、傷口からは脈を打つように鮮紅色の血が噴き出している。傷の深さは分からないが、このままでは生死に関わるだろう。そう判断したダンは、忍を拘束するより先にアルウィスの左腕を止血することにした。


 アルウィスの服の裾を裂いて、包帯の代わりにすることにした。裂いた布で左の二の腕をキツめに縛り、食堂にある時計で止血の開始時間を確認。その状態で、左前腕の患部が心臓より高い位置に来るように持ち上げる。

(「8-3 守るための代償」より抜粋)


【解説】

まず、大量出血の際の止血法には大きく二種類があります。なのでそこから説明しましょう。


1直接圧迫止血法

文字通り、傷口をガーゼやハンカチなどで強く抑えることで止血する方法です。キツめに包帯を巻くことでも代用できます。基本的な止血法であり、「静脈性出血」「毛細血管出血」はほとんどこの方法で対処できます


※感染症予防のためにも、血に直接触れないようにしましょう



2間接圧迫止血法

傷口を直接圧迫しながら、傷口から心臓に近い動脈を、骨に向かって指で押さえることで、血液の流れを止める方法です。

こちらは直接圧迫止血をすぐに行えないときに応急に行うものです。直接圧迫止血を始めたら、間接圧迫止血は中止します


※感染症予防のためにも、血に直接触れないようにしましょう




 ほとんどの場合はこの二つで止血を行い、医師が来るまで待つことになります。切り傷の処置は……どの程度医療技術が発達しているかによって変わってくるので今回は割愛。せっかくなので最終手段、第三の止血法も紹介しましょう。



3緊縛止血法

これは「手足の大出血時」、「腕・足などの切断時」に行う方法で、直接圧迫止血法では止血が困難な時に行います。本当に最終手段です。この止血法は正しく行わないと血管をつぶしたり、神経を切断したり、末梢神経を壊死させたり……様々な危険があります。

たしか動脈性出血の最終手段だった気がします


やり方としては

出血している傷口より心臓に近い部分の動脈を止血帯(幅3センチ以上)などを使用して強く縛ります。細い紐類だと圧迫が不十分になり、組織、血管、神経を痛める原因となります。

縛ったら、止血開始時間を明確に記録します。そしたら30分~60分に一回は縛っている紐を緩めましょう。1時間以上緊縛した状態にしておくと神経麻痺や、細胞の壊死を招きます。緊縛部より先に赤みが差すくらい血流を再開させましょう


※感染症予防のためにも、血に直接触れないようにしましょう




こんなところですね。最後に抜粋パートの解説でも

抜粋パートは左前腕の大出血、になります。これ、一歩間違えたら死にます。止血したとしても早めに傷の治療をしなければ大量出血により死亡します。今回の抜粋パートでは同じ建物内に医師がいる、という前提で緊縛止血法を取り入れました


大出血してでも守りたかったんだ、という意味を込めてます。今回はダンが止血したからよかったですが、誰も止血しなかったら死んでいます。動脈性出血はメインキャラに安易に用いるものじゃないです


現実世界でも役立ちますが、できるだけ使わないで済みたいですね。毛細血管出血ならまだいいですが、動脈性出血なんかは緊迫した状況ですし、止血失敗で人を死なせたなんてなったらトラウマになると思うので……。

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