レイピアは実は重いって、知ってた?

 タイトル通りレイピアについて、です。レイピアって実は見た目ほど軽くないんですよね。ってことを語っていこうと思います。わかりやすく抜粋パート……といきたいですが、実はレイピアの戦闘シーン、本編には登場する予定がありません(あれれ?)。そんなわけで、今回の抜粋パートは戦闘描写ないです。まぁ、レイピアの特徴という点では間違ってはいないはず。



☆抜粋パート

 金牙きんがは、腰に身につけた護身用の剣を鞘から抜いて構えていた。先程矢に反応出来なかったからなのか、険しい顔でアルウィスの代わりに宮殿の方から来る人を見張る。


 その長剣は先端は薄く、軽く、反りのない真っすぐな刃を持っていた。それは確実に攻撃を当てることを重視した剣である。斬ることではなく突くことに特化した護身用の剣。武芸者にしては弱々しい身体をした金牙でも扱える、レイピアと呼ばれるものである。

(「3-3 奇襲は突然に」より抜粋)



【解説】

 抜粋文で誤解されるかもしれませんが、軽いのはです。レイピアが軽い訳ではありません。また、「弱々しい」と書かれてはいますが、金牙さんは一般人ではなく武芸者の端くれです。ただ体力が普通の武芸者より少ないというだけです。


 何故こんなことを説明するかと言いますと、今から話すレイピアの特徴が関係しています。


 レイピアの重量は1キロ~1.5キロ程。実は日本刀とあまり変わらない重さです。せっかくなので西洋の武器である剣と比較してみましょう。


ブロードソード 約1.2キロ

レイピア 1~1.5キロ

ロングソード 1.5~2.5キロ


※ブロードソード

レイピアより幅の広い刃を持つ片手剣。刃渡りは60センチ程とされている。通常はこれとは別に左手で盾を持つ。


※ロングソード

刃渡り90センチ以上。片手用が多いが、両手用も存在する。中世の騎士などが用いていた


※レイピア

刃渡り1メートルほど。刃の幅は2.5センチ以下とかなり細い


 こんなところでしょうか。レイピアは刃の長さこそロングソードと変わらないですが、重さはロングソードとブロードソードの中間くらい。主に護身用として使われていました。「かなり長くてやや重い」と考えていただければ間違いないかと思います。




 次にレイピアの戦い方です。「フェンシングと同じでしょ?」なんて考えているそこのあなた! 一緒にしてると痛い目を見ますよ?


 まずは基本的なレイピアの扱い方を。私が参考にしているのはスペインのレイピア術です。まず、背筋をまっすぐに伸ばして立ちます。その状態で足を止めずに戦うのです。動きながら隙をうかがい、相手のレイピアの攻撃線を外れた瞬間に攻撃を仕掛ける。これが主な戦い方になります。


 フェンシングと違うのはここからです。フェンシングはよく縦に移動してると思います。ですが、レイピアではに移動するのは当たり前。いかに相手の攻撃をいなしつつ隙を見て仕掛けるか、が大事になります。また、大きく剣身を振るうこともあまりしません。そんなことをすれば隙が出来るからです。基本的には切っ先は相手に向けたまま、になります。


 せっかくなので余分な話も。レイピアの特徴の一つに複雑な柄があります。これは「曲線状のつばをもつ柄」という意味のスウェプト・ヒルトと呼ばれます。この曲線状の鍔には「相手の剣を絡めとり折る」という目的がありました。で、このスウェプト・ヒルトは重いです。レイピアの重心が柄にある理由の一つはこのスウェプト・ヒルトだと言われるくらいです(諸説あります)。


 レイピアを使わせるなら、護身や決闘などで用いるのも結構ですが、あえて剣を絡めとるシーンなどを入れても面白いかもしれませんね。少なくとも相手の隙を作ることは確実に出来ますし。でも、軽いから女性キャラ、などとはしないように気をつけてください。先述したようにレイピアは重いですから。




 次によくある誤解「レイピアはしなる」というもの。実は、レイピアはそれほどしなるものではない、と言われています。しなると先端がぶれ、正確で鋭い突きができない、とも言われています。この誤解が生まれた原因の一つはおそらく、レイピアの扱いにくさでしょう。


 レイピアはその刀身の細さ故に破損しやすいです。斬撃、刺突の双方において取り扱いの難しい武器とされています。刀身が細すぎる為、普通に斬っても下手に突いても、曲がったり折れたりする事が多かったのです。その為、擦り斬りなど、刀身に負担が掛からない剣術が編み出されていました。


 しなるのはレイピアではなくフルーレと呼ばれるフェンシングで用いる武器の方です。フルーレとレイピアはよく似ており、間違われやすいです。見た目が類似しているから「レイピアがしなる」という誤解が生まれたとも言われていますね。


レイピア→しならない、刺突メインだけど斬も可能(刃がついているものに限る)


フルーレ→よくしなる、刃がついていない、斬れない



 この二点を間違えないように。これまた余談ですが、よくゲームやマンガに出てくるレイピアは実はフルーレ寄りだったりします。正しい使い方をしてるマンガなんて……少なくとも私は見たことがないですね。おそらく、読者の方々の多くも誤解してると思います。


 読者の方々のよく知るレイピアにするか、現実に近いレイピアにするか。どのレイピアを作中に登場させるかはあなた次第です。

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