居合術のこと、正しく知ってる?

 刀と言えば「居合」を思い浮かべる方が多いはず。というわけで、今回、刀の中でも「居合」に特化して話してみようと思います。


 というわけで、わかりやすくなるかわからないけれど、お約束の抜粋タイム。アリシエさんは刀を扱う主人公です。あくまで私はこう書いてるよ、というだけですので参考程度にどうぞ。




☆抜粋パート

 アリシエの刀が鞘に納められた。だが右手は刀の柄を握ったまま。左手は鞘引きが出来るようにと鞘を掴んでいる。銀色の目が武芸者達の様子をしっかりと捉えた。対峙している武芸者の動きが止まり、他の二人に動く様子がない。それを確認するとその身体が前方に倒れ出す。


 突進しやすいように、アリシエは足を肩幅に開いて前傾姿勢を取っていた。だが刀を鞘に納めると右膝を曲げる。不安定になった身体が、重心の位置によって前方へと急速に倒れ出す。それは次の攻撃への布石。


 アリシエの頭が床に近付く。鼻が床に触れる寸前に、アリシエは曲げたままだった右足で床を全力で蹴りつけた。重力によって加速した身体は、右足による踏み込みでさらに加速し、武芸者との距離を一気に詰める。足を踏み込む瞬間にはアリシエの左手が鞘を引くべく動き始めていた。


 突然の急加速に遅れて反応する武芸者。その眼前にはもう、今にも抜刀しそうなアリシエが迫っている。身を守るためにと剣を体の前に構えるがもう遅い。武芸者が構えを終える前にアリシエの居合が放たれた。放たれた斬撃は武芸者の左脇腹を一瞬で裂いてしまう。

(「5-3 アリシエの本領発揮」より抜粋)



【解説】

 重力を利用した加速なんていう余分なモーションがついてますが、この抜粋文で大事なのは「鞘引き」です。そもそも、今回の抜粋文では居合そのものの使い方が本来と違うのですが……そこは作中のオリジナル武術なので割愛させていただきます。大事なポイントは下記の二つです。


①居合は迎撃用の技である

 実は居合とは本来、臨戦態勢ではない状態で突然敵の攻撃を受けた際に扱う技の一つです。言わば、奇襲に対抗する手段の一つだったわけですね。実は居合術によく似たものとして抜刀術があるのですが……こちらも今回は割愛。気になる方は調べましょう。

 余談ですが、アリシエさんの技は居合を攻撃用にアレンジしたものです。長ったらしく書いてますが、納刀状態からの抜刀で素早い斬撃を行っているだけです。


②居合は片手ではなく両手を使う

 よく、左手で鞘を押さえて右手で抜刀する描写がされると思います。でも実は、ただ鞘を掴んでいるだけのように見える左手は、先程述べた「鞘引き」という技術を行っています。

 諸説ありますが、「鞘引き」こそが居合の肝だと、思っています。左手で行う「鞘引き」が上手くいかなければ鋭さや威力が消えます。右手主体で刀を抜くと、姿勢も悪くなりやすく、綺麗に斬れません。

 文中にある「左手を動かす」という仕草は鞘引きを行っているので間違っていないのです。実際は、刀を持つ手ではなく、鞘を持つ方の手を動かして抜刀していました。



 最後に、ここまで語ってきた「鞘引き」についてわかる範囲で説明しましょう。


※鞘引き

 まず鞘引きとは「抜刀する際に行う、鞘を引く動き」のことです。刀を素早く無理なく抜くためのもので、鞘引きをうまく行えないと強く鋭い抜きは出来ません。また、刀を抜く「角度」と「方向」を決めるのは鞘の動きになります。


 鞘を動かすことで、反りのある刀を鞘に引っかけることなく抜くことを可能にしています。この鞘引きが上手くいかないと「鞘鳴り」というものを起こしてしまいます。


 「鞘引き」の時、左手は刀と床が水平になるように動かします。これを上手く行えないと、鞘の中で刀の刃が変な角度で接してしまいます。この時に「シャッ!」と言う音がします。これが「鞘鳴り」というものです。鞘の中が刀の刃で傷ついてしまった状態になります。


 余談ですが、居合が上手くいかない原因の殆どは「鞘引き」にあるそうです。それほどこの「鞘引き」という動作は居合において重要、ということですね。




この知識を生かすかどうかは、皆様次第です!

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