一人対大人数戦の時ってどうする?

 皆さん、一人の人間が多くの敵と戦う時、どうされてますか? 間違っても敵に囲ませてはいけませんよ。魔法の類があれば別ですが、そうでない限り間違いなく死にます。何でか? それを今から解説しましょう。


 わかりやすくなるかわからないけれど、「カラードの乱~黒人武芸者の革命譚~」より抜粋です。アリシエは主人公。今回の抜粋パートでは、五人の武芸者と戦っております。




☆抜粋パート

銀色の目が五人の武芸者との距離を測り始める。


 始まりは唐突だった。アリシエは力強く床を蹴り、武芸者の一人との間合いを一気に詰める。わざと妙な軌道で刀を振るい、そちらに注意を惹き付ける。そして、刀の軌道に目が釣られている隙に、左手に持っていた短刀で相手の脇を切り裂いた。それは僅か三秒での出来事だ。


 先制攻撃に成功したアリシエはすぐに後退。残りの四人全員が視界に入る位置に移動した。大人数と戦う時には、なるべく全員を視界の中に収め、相手の動きを制限しながら戦うのが得策なのだ。一人が攻撃されたからだろうか。二人は介抱に回り、もう二人はアリシエに向かって突進してくる。

(「5-2 アルウィスの小さな冒険」より抜粋)



【解説】

 今回大事なのはアリシエさんの武芸ではありません。アリシエさんの立ち回りです。この立ち回りに、対大人数向けの戦いの攻略が隠されています。一つずつ解説してみますね。


①敵全員を視界に入れるように動く

 これ、実際にやると難しいですがそこはさておき。戦場で一番恐ろしいのは、敵の動きを把握出来ないこと、これに尽きます。敵が死角に入ってしまえばそう簡単に反応なんて出来ません。だからこそ、なるべく敵を死角に入れないように立ち回る技術が必要になります。


②素早く正確な攻撃

 大人数を相手にするとなると、攻撃に失敗するようなことがあってはなりません。わずかでも隙を見せれば襲われるからです。隙を減らすために重要なのが「素早く正確な攻撃」です。これには諸説あって、先制攻撃をした方がいいとか色々言われているのですが……共通してるのは「素早く正確な攻撃」、これに限ります。


③敵の動きを制御する

 敵全員を視界に入れるだけでなく、視界にという技術も必要です。自分の立ち回りによって相手の動きを誘導する。簡単なようで意外と難しい技術なんですよ、これは。立ち回りが難しいという方は、地形を変えて敵の動きを制限してみましょう。森の木々に邪魔されたり、物陰に隠れたり。地の利を生かした奇襲も立派な戦法ですし、広い意味で「相手の動きを制御」しています。





 で、抜粋パートについてです。アリシエ君はまず、全員の位置を把握し、視界に入れました。そのあと先制攻撃を仕掛けることで敵を動揺させ、隙を作ってから後退しています。また、先制攻撃では急所の一つであるわき(脇ともいう)を攻撃。浅くしか裂けなかったので大量出血までは至りませんが、このように素早く的確に狙うのが対大人数戦の秘訣です。


 余談ですがロシアン武術「システマ」は対大人数に特化した武術で、大人数に囲まれることを想定しています。この「システマ」のような武術なら、対大人数で囲まれてもなんとかなるかもしれません。


 とはいえ、どんな武術であっても、よほどの事情がない限り大人数に囲まれれば攻撃をさばききれずに攻撃を受けるでしょう。敵は多くても五人~八人程度に留めることをオススメします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る