第21話 戦闘終了


 俺の解呪により、ヴァナラ族の洗脳は解けた。

 モンジュの咎は根拠の無い捏造だった事が明確になった。


「戦闘中止だ! 撤兵の銅鑼を鳴らせ!」

 モンジュ王子の命令により戦闘は終わった。これで全てのヴァナラ族が嫌がっていた戦役が終わったのである。

 族長達は大喜びで己が一族の元に向かった。残ったのはモンジュの手勢であるラグンのヴァナラと俺達だけだ。


「それで、父上の容態はどうだ?」


「う、、、うん。とりあえず落ち着いてる。意識が戻れば話もできるけど」


「けど?」


「かなり、衰弱してるな。さっきの素早い動きが嘘みたいだ」

 ゲベルは首の骨が折れて虫の息、バルカルは無傷だが既に拘束されている。もう2人の合体魔法は無い。チエダイにヴァナラの指導者達を操作する手段は無くなったという事だ。


 後で分かった事だが、チエダイの騎士団はオンコット将軍が死にそうだからモンジュの処刑を強引に進めていたらしい。後釜に頭のよろしくないパリヤを据えればチエダイの傀儡には最適の後継者となる。その為にモンジュの存在は邪魔そのものだったようだ。

 彼らの誤算は、俺の存在とオンコット将軍を見くびっていたことだろう。

 ゲベルとバルカルは、今のオンコット将軍が動けるなんて想定は全くしていなったのだ。


「モンジュ、コレが俺の最後の手だ。一応、保険として作っておいたんだ。必ず、お前の力になると思う」

 俺は、昨日作った秘薬をモンジュに渡した。マヒシャに協力してもらったワリンギルの成分を抽出、強化したものだ。

 俺が昨日、思いっきり魔力を込めて作った経口薬。


「今、飲めというのか?」


「うん、どうかな? 分からないけど、オンコットさんが生きている間がベストじゃないかな?」

 

「待ちなさい。サトシ君。どうせなら派手に演出しましょう。ワリンギルの薬なんですよね?」

 突然課長が俺とモンジュの会話に割り込んできた。

 一応、さっき紹介はしたけどな。

「オオヌキさんが外に居ます。彼女に協力してもらいましょう」


「はい」

 なるほどな。オオヌキさんの幻視の術なら演出だって余裕でこなせるな。

 って、モンジュがメッチャ不機嫌そうだ。

「モンジュ、怒るなよ。うちの会社は現地人に危害を加えないってルールがちゃんとあるんだ。チエダイとは違うぞ」

 これは、研修初日に課長から教わった事だ。

 まあ、正直俺も課長と会社を疑ったけどな。それに対象はヴァナラ族じゃなく、俺達日本人、若しくは日本への危害を加えないって話だったけど。


「わかった。サトシを信じよう。オオヌキとやらを呼びに行くといい。私は父の側に残る」


「ああ、すぐ戻ってくるよ」

 モンジュは、チエダイと同じ人種の課長への警戒心が強いらしい。

 まあ、気持ちは分かる。課長の顔、怖いしな。


 だが、俺がオオヌキさんを呼びに外に向かうと、其処は何か異様な雰囲気となっていた。戦闘は終了したはずなのに、遠征軍のヴァナラ戦士達が群れているのだ。


「ブモオオオッー!!」

 マヒシャの怒号? が聞こえてくる。

 何だ?

 何が起こってる?!



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