第14話 戦闘開始


 バログ達の情報によると、この三名はオノリウスという町の出身者で幼馴染だそうだ。盾、魔法剣士、魔法使いの彼らは長い付き合いなので連携も抜群らしい。


「みんな、コイツラが昨日話した奴らだ」

 俺はマヒシャの肩の上から叫んで情報を共有しようとした。


「サトシ殿、奴らなら知っているが大した腕前ではないぞ」

「サトシ、モンジュの言う通りだ」

 モンジュもカプルも平静だ。彼らの事をヴァナラ族は知っているらしい。

 どうも、バログ達の評価とヴァナラ達の評価に差が有りそうだ。


「聞こえてるで! その小人がおらんかったら、あんたら即死やったやんか!」

 赤毛のチビが女騎士の後ろからがなる。


「お前、馬鹿。あんな雑な術、誰でもすぐ分かる」

 

 あれ? カプルも魔法に感づいてたのか? だったら、俺にも教えてくれよ。 とは口にはしなかった。

 赤毛のチビが怒り出したからだ。

「何やて! おサルの癖に!!」

 顔を真っ赤にしている所は、チビの方がサルみたいではある。


 俺がマゴマゴしているうちにモンジュが決然と言い放った。

「お前らの悪行は今日までだ。成敗してやるから覚悟するがいい」


 急展開だが、考えるまでもない。時間が無いのだ。

 モンジュの決断は正しい。

 彼と配下のヴァナラが剣を抜く。


「ウォ。ウォ。ウォ。ホォー! ホォー!」

 身体に戦いの化粧を施しているカプルが吠える。どうやら彼も戦闘態勢に入ったらしい。


 俺も、スリングショットで仲間を援護する為、丸薬に手を伸ばす。

 だが、突然マヒシャが突撃した。

 間合いもクソも無い。

 女騎士に突っ込んでいく。


「止まれ! 危ない!」

 目の前の女騎士が一番強いという情報だ。奴はカウンターの名手なのだ。無謀な攻撃は死を意味する。


 だが、マヒシャは俺の声を無視する。

 それどころか手にしている棍棒を投げ捨てた。


「はあ? 」

 思わず声に出してしまった俺は疑問で固まった。

 その疑問に答えるようにマヒシャは女騎士に前に立ち語りかける。


「美しい。貴方は美しい。私は貴方が好きです!」


「はあ?」

 おい!? 何言ってるんだ、マヒシャ!!

 

 だが、俺の心の叫びをマヒシャは無視する

 彼は両手を広げ、まったくの無防備で女騎士の目の前で動かない。

 真面目なマヒシャの情熱的な姿を俺は肩の上で見る事になった。


「美しいだけでなく、白銀の鎧を着た姿から凛とした気高さと強さも感じます」

 白銀って、ただのプレートメイルだ。それに昨日教えただろ、マヒシャ。その女騎士は素手でマンテイィコアとかいう魔獣を退治した事あるって情報を!


 だが、それは俺が悪かったのだ。 

 俺はマヒシャの悩みを聞いた時に、オークの性欲の強さを軽く見ていた。その強さからくる行動力を考慮してなかった。人間の基準で考えてしまっていたのだ。人間だってとんでもないのが居るのに。

 真面目なオーク凄ぇ。

 純情なオークの一途さは命さえ賭ける。

 ただ、俺を巻き込むなよ。

 

「気高く美しい人。私は本気です。命を落としても悔いはありません」

 静かだが、真剣なマヒシャの愛の言葉。


 女騎士は瞳孔を広げてマヒシャを見ていた。

 おそらく、彼の本気を感じ取ったのだろう。

 それか、余りに予想外な出来事に頭が回っていないのかも?

 彼女も剣に手を掛けたまま動かない。


 ただ、女騎士は3人組みでも随一の腕利きだ。

 彼女が我に返れば、無防備なマヒシャの首は一瞬で切断される。


 そして、俺はマヒシャの肩に乗っている。

 それは、女騎士が正気になれば、俺の首も即座に飛ぶ位置いる。 という事だ。

 

 マヒシャ-!!

 この純情オークめ!



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