青の廃墟( 5 )

 どこまでもどこまでも続く青を眺めていた。


が見ている景色、とってもよ」


 横目でアオイを見るが、表情一つ崩さない。完全に無視されているようだ。


 会ったばかりだから、と思い「小鳥遊さん」と呼んだら、「“普通”にアオイでいいわよ」と返された。私はどちらかというと初対面の、しかも女性に、下の名前で呼びかける方が“普通”ではないと思うのだが。価値観は人それぞれ、ということなのだろう。


「チトセ、もしかしてそれ面白いと思ってるの?」


 勿論、こちらも下の名前で呼ばれることになった。



 アオイが「生徒手帳みたいに、他に何か手がかりになりそうなものを持っていないか」と言ったので、お互いの持ち物を地面に並べてみることにした。


 私は、財布、ボールペン、小さなノート。


 アオイは、白いハンカチ、絆創膏、生徒手帳、鉛筆、財布、黒縁の眼鏡。


 まず、気になったことがある。それは、「携帯電話がない」ということだった。毎日肌身離さず持っていたはずの携帯電話を、二人とも所持していなかった。もっとも、アオイは携帯電話を元々持っていなかった可能性もあるが。


 そして、もう一つ。それはアオイのポケットから最後に出てきたもの。


 透き通り、少し青みがかった宝石。それを見ると、記憶がないはずのアオイがぽつりと呟いた。


「ブルートパーズ」

 



 

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