れんあい

新吉

第1話

「寒い」



 何回目かわからないお父さんの呟き。こたつも出したけど、そろそろストーブも準備しようかな。この季節になると一気にカレンダーを先取りして寒くなっていく。紅葉を見に行く予定があったのだけど、私の膝も悪いしお父さんもこたつから出なくなってしまって、結局やめた。お父さんはエアコンか好きじゃない。家にも合わないからと言って、こたつと石油ストーブしか許さない。だから茶の間以外は寒い。戸を開けると風が吹く。誰かが出入りするたびにお父さんはそう呟く。今はお姉ちゃんが自分の部屋に行った。



「お前はこごさいろ」


「はいはい」


「おっかねーニュースばりだなぁ」


「んだねぇ」



 お茶っこ飲みながら、テレビを見てゆっくりするだけの日、寒いからそう決めた。





 〇〇〇〇〇〇





 去年の冬にいつも寒そうな

 あなたに編んだマフラー

 私は渡せなくて

 お父さんにあげた

 お父さんも寒がりだから

 今年はどうしようかなあ


 部屋の本棚から勝手に取って読んだり

 お母さんは私の部屋に入る

 プライバシーってもんがないんだよね

 部屋っていってもふすまだし


 ふすまは音漏れもするし

 力いっぱい蹴れば外れる

 私の空間はひどくもろい


 あなたの前では

 たとえ目の前にいても

 距離は果てしない


 目に見えないけれど、高く私の前を塞いで

 厚くてどんなに叩いても、壊れない

 私にとって

 それはそれは高く見えて

 あなたははるか遠くに見える


 あなたを想っていると

 伝えることは

 世界が変わることなんだ

 私が変わることなんだ


 秋の宵

 まだまだ寒くなる

 まだまだ暗くなる

 それまでまだ時間があるから

 もう少し悩んでいてもいいかな

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れんあい 新吉 @bottiti

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