第38話 ネクストステージ

2018年2月頃、ミナトはビットプラスという海外の取引所を正式にアカウントを開設した。


この取引所ではまず5種類ほどのコインしか売買されないが徐々にコインの種類を増やして最終的には100種類になるそうだ。

何よりも売買手数料が安い。さらに新規ICOのニュースが即座に流れるという。


ビットプラスではAIトレードが将来、可能になるそうだ。

既にミナトは自宅のパソコンでAIトレードになっているのだが・・・。


2月の一週目の土日の休みを利用してミナトはヒナちゃんと温泉旅行に出かけた。

中学生なのに少々おっさん臭いところがあるミナトである。


ミナトとヒナちゃんからすれば自分たちだけで行く修学旅行のようで楽しかった。

周りには何もない田舎の旅館を予約して、寒空の中、バスに揺られて目的地を目指す。

まだ日本海側では雪がちらちらと降っている。そんな窓辺の景色を見ながら彼らはロマンチックな夢を見ていた。


将来、大人になっても二人でこういう風に温泉旅行に行きたいと思うミナトとヒナちゃんであった。


バスが旅館に到着して、女将さんが予約した宿の部屋に案内してくれる。

女将さん「あらーとってもかわいい女の子を連れてやるわねー。こりゃコース料理もサービスしなきゃね♪」

ヒナちゃん「アハハッありがとーございますぅー♪」


ミナトは照れて何も言えなかった。こういうときヒナちゃんの愛想の良さってみんなの雰囲気が良くなるからありがたいと感謝するミナトであった。


さっそく部屋に入ると二人は荷物を置いて、窓から見える景色を眺めた。

この寒空の中、雪がちらちらしているのもあって、どこか切ない気持ちになる二人だった。


テレビをつけて浴衣に着替えると二人は温泉に入る準備をした。

携帯と部屋のカギを持って、男湯と女湯へ分かれて入って行く。


ミナト「じゃあ後でね!たぶん僕のほうがあがるの早いと思うからライン送るね」

ヒナちゃん「わかった。私はゆっくり湯船に浸かってくる」


冬が終わろうとする2月なので旅館は空いていた。

夕方に入る温泉はとくに人がいない。なんだか旅館を独占した気分である。


温泉を堪能して、夜はカニの鍋料理を食べる二人だった。


女将さん「私もご一緒していいかしたら?」

ミナト「どうぞどうぞ♪一緒に食べましょう♪」

ヒナちゃん「二人だと食べきれないもんね。食べ方も教えてください」


女将さん「いいわよ♪ポン酢でもおいしいんだけど火で炙ってからタレで食べるとさらにおいしいの♪」


三人は家族のように楽しくカニ鍋を食べて談笑した。


ミナトとヒナちゃんは家路についてからも「またあの旅館に行こう」と約束するのであった。

女将さんともすごく仲良くなったので一緒に記念写真を撮ってもらった。


二人は自分たちの家族にも手土産を持って帰っていた。温泉まんじゅうや和菓子を振る舞った。


2月に入ってミナトにとっては既にネクストステージが始まっていた。

2018年の考察、予想、指標はすべて終わったので、2019年の考察、予想と2020年に向けた目標を掲げるのであった。


2020年はドバイのペーパーレス化計画の目標の年となっている。

さらに日本では東京五輪オリンピックが開催される。


そして・・・・・・仮想通貨にとってもっとも重要かつ投資するべき2020年なのだ。


実際の投資するタイミングでいえば2019年の秋頃である。


それはビットコインの半減期が近づいているということをミナトはジンさんから教えてもらっていた。


ビットコインの半減期は4年周期である。前の半減期は2016年頃であった。


それを知ったときミナトは「だから、僕が投資を始めてからビットコインの価格が高騰したんだ」と理解した。


それを理解したときには”それはすべては過ぎ去った過去である”という言葉を思い出した。


幸せなことに2020年の半減期まで2年近くの時間がある。もちろんビットコインの大幅な下落があれば仕込みを入れていく。


投資とは戦略である。


その状況、状態に合わせてトレードの手法を変えながら一番自分が利益を得やすいトレード方法で投資を進めるものである。


さらにアルトコインで価格帯が安いコインであれば利益は得やすく、損失は出にくい。


ビットコインのように価格が大幅に上がったものは利益も出るが損失も出やすくなっている。

もしそれに気づいていないのなら投資家としては致命的だ。


ミナトとジンさんはそのことにいち早く気づき、自分の周りにいる投資仲間たちにもそれを伝えていた。


安全に大幅な利益を狙える投資対象のコイン・・・。


リップル、ネム、ライトコイン、リスク、イーサクラシック、ファクトムなら例え大暴落によって価格が半分になっても損失は資産の半分までだ。


そこから値が回復するときに買い増しすれば損失はさらに抑えられる。そして、利益が取りやすい。


価格帯が安いコインだけを狙う投資家もきっと存在しているのだろう。

とくにテクニカル分析によってチャートを常に見ている投資家たちは”いかに損失を減らして利益を増やせるか?”を意識しているはずだ。


ミナトのようにファンダメンタル分析タイプは短期勝負には向いていない。どちらかというと中期・長期運用に適した投資手法である。


まだまだ”未熟”な部分もあり、超短期のトレード、テクニカルな投資は不得意なミナトであった。


その投資手法はAIトレードに任せることにしている。


なんとかジンさんに頼んでいち早く取り入れたAIトレードによってミナトは自分の欠点を補うことに成功していた。


そして、これからミナトが得意とする分野、ファンダメンタル分析によって海外にあるコインで有力なコインを買い漁ることとなる。


1万円の投資で数年後に1000万円~1億円を狙う!

ミナトは本気でそれを考えていた。


まだ日本の取引所では取り扱われるコインの種類が少なく、しかも、徐々に1枚ずつ増える程度であった。


この日本の取引所のインフラ整備が遅いのなら海外の取引所で有力なコインを買っておけば先行者利益が得られる。そう目論んでいるのであった。


このミナトの直感、投資に対する想像力は大人でもなかなか辿り着けないところまで来ていた。


この行動力、投資の手法、未来を見通す先見の明が彼の持ち味である。


将来、学校だけではなく世間を驚かせる投資家に成長するミナトはいつしかテレビでも伝説として囁かれる日が訪れるであろう・・・・。


2018年の1月は大暴落があった。しかし、それを「嬉しい」と思うミナトは根っからの投資好きである。


価格が上がっていれば容易く買えない。相場全体が暴落すればいつもの価格の半値で2倍の量が買えるのだ。


大暴落を好感する投資家、根性が座った奴らこそが真の投資家である。


世間では悲壮感が漂う雰囲気で大暴落の原因を追究していた。しかし、価格が大幅に下落したときにコインを大量に買っている投資家たちは”感謝”こそ口にするがそれに文句を言う人間は一人もいなかった。


ただミナトは思った。4年連続、1月に大暴落するって・・・一体?


ジンさんや他の投資仲間と話したが作為としか思えないとみんなが口を揃えていう。

しかし、機関投資家が大幅に資金を市場から抜いたとしてもこれほど下がるものだろうか?


名探偵ミナトの推理では、確かに機関投資家が仮想通貨の市場から資金を抜いた。しかし、ここまでの大きな下落につながったのはシステムトレード、信用取引などで使われる自動ロスカットが原因なのでは?という結論に至るのである。


仮想通貨の市場は買い板と売り板が元々少ない。仮想通貨の市場に流れている資金など大企業1社分~3社分程度なのだ。


そのため価格は上がりやすく、下がりやすい。


ここが企業が発行する株券と大きく異なる部分なのである。

株式会社であればその企業が売り出す製品が売れれば株価は上がるし不評であれば下がる。しかし、これからその企業が目指す目標があり、それが期待値となって反映されていることもしばしばあるのだ。

相場全体が一気に下がる・・・。これは国同士のしがらみによる。

ドル円の為替の動き、アジア圏の動き、ヨーロッパ諸国の動き、これらが日本の経済に影響を与え、株式市場に反映される。


株式市場には考えられないほどの資金が流れており、仮想通貨のように単調な値動きではない。

あらゆる金融商品も出尽くしている。すべて金融機関に網羅されているといっても過言ではない。


それに比べれば仮想通貨の大暴落など可愛いものだ。


1ヶ月もあれば元の価格に回復するのだから・・・。


2018年の2月、ミナトは海外への投資を活発化させる。

これもまた面白い試みである。

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