第37話 来るべきとき
2018年、ムーアの法則が当てはまるときがやってきた。
電子機器の進化「2年周期」が2018年である。
つまりあらゆる電子機器が一歩前に出るときがやってきたのだ。
ミナトだけではなくタケル君のお父さんも胸が高鳴っていた。
ミナト「さぁ今年は一体何があるのだろうか?」
とってもワクワクしているミナトである。
今週の土曜日は秋山先生の家に呼ばれているのでミナトはショッピングセンターで先生に似合いそうな服とケーキを買って遊びに行くことにした。
学校で着ている先生の服は地味めなものが多く、先生も「オシャレしたいけど受験生の前で派手な服は着れないからね」(苦笑)ということを一度、耳にしたのをミナトは覚えていた。
学校の先生がシンプルな服装が多いのは学生に気を遣っているから・・・ということなのだが生徒たちは一切それに気づいている様子はない。
ピンポーン!インターフォンを鳴らしてミナトは元気に秋山先生に挨拶をした。
ミナト「せんせーい!ケーキ買って来ましたよぉー」
秋山先生「はーい♪どーぞ!玄関開いてるからあがってきてー」
ミナトが買ってきたケーキを服を見て、子供のようにはしゃぐ先生がどこか可愛らしくみえた。
秋山先生「カフェ入れるから待っててね」
ミナト「ありがとうございます」
ミナトがケーキの箱を開けて、皿にそれぞれ二つずつケーキを分けた。
モンブランの甘い香りとチーズケーキのすっきりした匂いが部屋に広がっている。
秋山先生と一緒にケーキを食べて、湯気があがる温かいカフェを飲みながら幸せを感じるミナトであった。
秋山先生はノートパソコンを開いて、ミナトのメモ用紙を見ながらゴールドゲートのURLを入力した。
秋山先生「これってICOっていうやつ?今、いくらぐらいなの?」
ミナト「そうですね。トークンが購入できる状態です。1BGGが1.7ドルなので日本円だと190円ぐらいですよ」
秋山先生「ほ・・・ほう、まだまだ取引所に上場までは安いコインってことなのね」
ミナト「このゴールドゲートはBGGをレンディングできるというのがコンセプトになっています。コインを貸し付けて利子を得る。それが投資家の収益になります。もちろんコインを売れば、売買益もありますよ」
秋山先生は「なるほど・・・。でも、これはちょっとどうなのか、わからないから今回はキャンセルするわ」
ミナト「そういうリスクヘッジも大切ですね。投資は誰かに強制されるものではなく自分でやるものですから」
ミナトはなんとなく、ここまで複雑なサイトと投資方法だと秋山先生はついて来れなくなることが説明する前からわかっていた。だから、あえて自分がこの投資プランを引くことで秋山先生に安心感を与えた。
お姉さんと弟のような良好な関係を保てているほうがミナトは幸せである。
ただコインチェックで売られている現物のコインで今年上がりそうなものをいくつか秋山先生にアドバイスして帰ることにした。
秋山先生「なんだか・・・もう、ミナト君の投資にはついて行けなくなった気がしたわー。さすがクリプトカレンシーボーイと呼ばれる投資家には敵わないわ」(苦笑)
ミナト「いやぁそんなことないですよ。ただ今回のこの投資に関しては本当にどうなるか分からない要素があるので秋山先生には現物投資をがんばってもらいたいと思います」
秋山先生「うん、がんばる!すでに資産は5倍以上になったのもミナト君のおかげよ♪ありがとう」
玄関で秋山先生が手を振ってくれた。ミナトはまたデパートによってから家に帰ることにした。
どこかに出かけたときに誰かにプレゼントを買っていく。家に帰るときもプレゼントを買って帰る。
そんな習慣が付き始めていた。
投資して利益を得て、誰かのためにプレゼントを買って喜んでもらう。
中学でも噂になってしまった成金のクリプトカレンシーボーイとは程遠い健気で素朴な少年のミナトであった。
家に帰ると休みの日もやっぱりパソコンを開いて、仮想通貨に関することを調べていた。
とくに2018年はムーアの法則が当てはまる年だ。
毎日、情報収集するのが楽しくなるほど充実しているのだった。そして、ミナトは見つけることになった。
2018年、まだ1月である。
今年、1年を左右するほどの”大きな出来事”を理解した。
身震いするほどにその情報は重要であった。
ミナト「この情報は・・・。待てよ・・・・」
中学生になったミナトはなんでも大人に相談していた小学生の頃とは打って変わって、相談する相手、話す人を限定するようになっていた。
話した相手に知識と情報が少なければ理解されない。逆に投資経験が高ければ大金を投入して自分だけ利益を得ようとする。
これでは投資仲間の均衡を守ることは難しい。
一番、信頼できるのは・・・”お父さん”と言いたいところだけどタケル君のお父さん、ジンさんに相談するべきかな。(苦笑)
ジンさんにスカイプからチャットを送って、すぐに返事が返って来た。
タケル君のお父さん「ミナト君はやっぱりすごいね!まさか1月の時点で今年で1番重要な情報を掴んでしまうとはね」(笑)
ミナト「ジンさん、この情報どう思いますか?確かにスゴイですが・・・拡散しないほうがいい気がします」
タケル君のお父さん「情報や知識を仲間と共有するのは大切だけど・・・義務ではないからね。それはミナト君が決めるべきことだよ」
まだ不器用な一面が残るミナトを大人の目線で諭す優しいジンさんであった。
ただミナトとジンさんは”この情報”を元にして買うべきコインが何かがわかったのだ。
2018年、今年1年を左右するほどの強いコインである。
ミナトにとってヒナちゃんのお父さんやタケル君のお父さんは秘密を守ってくれる大切なパートナーだった。
ミナトの両親はミナトが言ったコインをミナトが言ったそのタイミングで買うだけなので知識や情報というのがそもそも備わっていなかった。
それでも資産は数倍になっている。投資家の子供を持った親の恩恵である。
ミナト「今年はなんだかスゴイことが起きそうだ」
仮想通貨のレンディングサービスを事業展開するアジア圏に特化したゴールドゲートだけではなく・・・・。
ムーアの法則によって巻き起こる「新しい風」をミナトは感じていた。
もしこの予想が当たっているならばミナトの資産は5倍以上になることが確定する。投資というのは情報と知識、そして、経験による勘である。
しかし、このムーアの法則が外れていたとしてもミナトにはそれほどのダメージはない。
なぜなら他の現物のコインを買っていたとしてもそのコインの価格が下がらない限り損失ではないからだ。
ただ自分の予想が外れて他のコインが年間の上昇率が300%を超えるようなことがあったら膝から崩れ落ちるほどショックを受けるのはいうまでもない。
ミナトは投資に関して百戦錬磨で今まで勝ち続けているのだ。情報、知識、勘。さらに才能があるミナトに投資で敵うものなど誰もいない。
そう、彼こそがクリプトカレンシーボーイと呼ばれる伝説の少年である。
中学に入ってから少しずつではあるがバレ始めていた。しかし、周りはまったく気にする様子はなかった。
ユメリちゃんやメイちゃんは例外的にミナトに好意を持っているがヒナちゃんと付き合ってることもあり、それがある程度、女子を遠ざける抑止力にもなっていた。
中学生は勉強、受験、部活で頭がいっぱいである。だから、仮想通貨や投資と聞いても無反応に近いのだ。
タケル君はお父さんの影響もあり、多少、投資に興味があった。そして、タケル君のお父さんは優秀なプログラマーなので仮想通貨の投資で大金を手にした。
学校で投資の話が少しできるといえばタケル君ぐらいである。
タケル君はお父さんがお金持ちになったこともあり心に余裕があった。高校受験や進学のために塾には入っているが本当は「投資で儲けるから別に進学とかいいんじゃないの?」という気持ちも少しあった。
彼が勉強する理由は”お父さんのようなプログラマーになりたいから”という夢である。
人というのは目的を持ち、そこへ向かうものだ。
誰かに強制されたから勉強したり受験するという考えは根本的に間違いである。
強制すれば強制するほど、みんな勉強が嫌いになり、やらなくなる。
本末転倒である。
大人になってから気づくこと。”勉強しておけばよかった”というのはパズルの1ピースしか見えていなかったときと違い、パズルの完成図を見て、そう思うことが多い。
パズルの完成図、大人になってからの職業による立場の違い、憧れなどが視界に広がるのだ。
子供のころには見えなかった景色が見えて「ああ、勉強しておけばよかった」となる。しかし、子供のころは目的もなく勉強を強いられていたはずだ。
その強いられた環境の中で勉強していた人たちというのは”最初から高い目的意識”があった人たちなのだ。
つまり学校の勉強どうこうではなく将来は自分はこんな職業に就きたいという明確なビジョンである。
ミナトには投資に対して明確なビジョンがある。だから、周りよりも情報の吸収力が早く、そして、勘が冴えわたっているのだった。
誰かに強いられるもの、強制されるものに魅力はない。
人は真理を見て、自ら学ぼうと考える。そういうものである。
2018年1月の時点でクリプトカレンシーボーイは勝ち組である。
あるコインにかなりのお金を投入するミナトとジンさんであった。
これで今年一年の投資は収支がプラスになる。
バタバタ動かなくても大局を知るものは一つの投資で1年の収益をプラスにできる。そんなものである。
既に投資して大量のコインを保有したミナトは、ずーっとパソコンの前で毎日、毎日、情報収集に明け暮れていたので気晴らしに旅に出たいと思うのであった。
どうやら2018年1月の時点で彼の投資は既に成功してしまったようである。
みんながすべてを知るころには”過ぎ去った過去となっている”のだ。
クリプトカレンシーボーイの才気は健在である。
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