第30話 未来都市
未来は誰にもわからない・・・。
果たしてそうだろうか?
確かに不確定で在り得ないようなことが起こるのが地球であり、生物は地球という環境の激動の中を生きている。
たまたま安定した気候になり、たまたま生物の頂点に人間が立った・・・。
あるいは・・・?
仮想通貨は新しい時代で必要なものだった。だから、存在を認められている。
これは偶然だろうか?それとも必然だった?
今までの電子機器はそれぞれが単独なハードで動くものだった。しかし、今や多くの電子機器は融合して多種多様な機能を一つでまかなえるようになっている。
カーナビ、音楽のデッキ、検索機能にゲーム、買い物はスマートフォン一つでできるようになったのだ。
この多くのものが一つにまとまっていくことによってスマートフォン一つの価格は高くなってしまった・・・。しかし、これさえあればなんでもできるという錯覚さえしてしまうほどだ。
ここで少し先の未来の話をしよう。これからあらゆるものが融合して点で存在していたものが線で繋がっていくことになるのだ。
2020年の未来都市の中心にはドバイがある。
ドバイではすべての決済が電子マネーあるいは仮想通貨で支払いが可能となっている。
2020年、ペーパーレス化のスローガンを
あれから3年が経ち、今やドバイではドローンのタクシーまでが登場している。これは客一人が乗れるタクシーなのだ。
行先は決まっている。短距離の飛行のみであり、客が乗車してボタンを押してスマートフォンで支払えば自動でドローンが飛んで目的地に到着してくれる便利な乗り物である。
2020年のドバイでは、ほとんどの乗り物がバッテリーで動くものに変わっていた。
ペーパーレス化したことによってタブレットのパソコンがバカ売れして、署名一つでも電子署名であった。
それは病院、不動産、結婚など、契約が必要なものはすべて電子化されているのであった。
最初は反対する者も多く、「不確かだ」「不安だ」という声も多かったが、次第に電子署名とタブレットの操作が浸透していった背景にはビットコインで使った技術が活躍したのだ。
そう、ブロックチェーン技術である。それによって人々の信用と信頼を得る形となった。
ブロックチェーンの技術によって不正を防ぎ、間違いやハッキングを防止している。
契約されたものはインターネットを通じて開示される。それを”信用”として人々は安心して契約ができるようになっていた。
タブレットで契約したものをいつでもどこでも見られるほうが紙の契約書よりも安心だという声も上がるようになっているほどだ。
見事、ペーパーレス化は成功を収めていた。
ここで気になるのは仮想通貨の時価である。
2020年の仮想通貨の時価はどれもが2017年の数倍に上がっているのであった。
ビットコインの価格はついに1000万円を超え、イーサリアムやダッシュは300万円まで上がっている。
リスクは50万円になり、ライトコインは200万円ほどだ。
リップルやネムは300円~400円まで上がってきている。
どうして2017年から一気に価格が引き上げられたのだろうか?
これは”ムーアの法則”によって世界全体の電子機器の進化が影響したことにある。
さらに地球全体の人口の増加が原因ともされている。
2020年の地球の人口は約85億人になり、いよいよ世界の資源の枯渇問題が本格化していたのである。
そのため少しでも森林や自然を壊さずに残そうとする動きになっていた。
2017年にドバイが掲げた「ペーパーレス化」が示した未来の方向が他の国に影響を及ぼしている。
法定通貨はスマートフォンやクレジットカードを使った電子マネー決済がほぼ8割を占めるようになり、世界でも仮想通貨の決済を導入する店舗が増えたことによって海外旅行や買い物、飲食やホテルの宿泊に至るまで、すべて仮想通貨で決済が可能となった。
グローバルな世界が広がり、国同士の距離は縮まった。
ロンドンでは2017年にイーサリアムを預かる銀行が登場したが他の国々でも仮想通貨を取り扱う銀行が増えていた。
世界から多くの銀行が消滅したのだが生き残った大手銀行は仮想通貨を取り扱うことによって
銀行の代わりに今、流行っているのは仮想通貨と交換できる質屋である。質屋にブランド物や貴金属を売って仮想通貨を手にすることができる、あるいは電子マネーをスマートフォンにチャージしてもらうことができるようになっていた。
商品の運搬や建築現場の支払いまでもが仮想通貨になり、世の中のお金の流動速度は過去最高となっていた。
ビットコインとライトコインを使ったライトニングネットワークの影響と元々、中央集権機構として活躍していたリップルラボ社の影響が世界のお金の流動速度を高めたとも云われている。
お金の流動速度が高まることによって企業は利益を上げやすくなり、国は税金の回収が早くなった。それによって多くの借金がある国の負債は少しずつではあるが減る方向へ舵を切ることとなった。
国債の金利がつくスピードを仮想通貨の決済と税金の回収速度が上回った・・・ただそれだけの話である。
AI(人工知能)搭載のパソコンの影響もあり、世界全体が一つ上の段階へ押し上げられた形となっている。
すべてを統括するAIパソコンと仮想通貨、ドローンタクシーに電気の乗り物の数々・・・・。
世界の国々は毎年、法定通貨を刷新していた量を減らすことになり、ドバイを皮切りとしたペーパーレス化が浸透することとなった。
すべては決まっていた未来だったのかもしれない。
仮想通貨の登場は偶然ではなく、必然であった。
世界はよりスピードを求めていた。利益の追求だけではなく、お金の流動速度を高めることによって、円滑な社会構造へと姿を変えようとしているのだった。
ミナトが投資を始めた2016年からわずか4年後の未来にそれほど世界が動いているとは誰も想像することはできなかった。
まして海外の最新技術が進んだ国のことなどわかるはずもなかった。
偶然、仮想通貨ビットコインに興味を持った少年は無邪気にわからないままにお金持ちになってゆく。
すべてを知るころには”すべては過ぎた過去”となっているのだ。
わからないままに、自分の心のままに、それでも仮想通貨に興味を持ち投資を続け、大金を手にするのである。
ミナトの運命は小学6年生のときから決まっていたのかもしれない。2017年のタイミングでビットコインよりも他の仮想通貨への投資を勧めたことも功を奏した・・・それは偶然なのかもしれないが2020年になる頃には大きな成果が実る結果となった。
未来はわからない。果たして・・・?
2018年の正月、ミナトはヒナちゃんと一緒に初詣に行った。
彼の願いは「これからも仮想通貨の価格が上がりますように♪」である。(笑)
相変わらずクリプトカレンシーボーイと呼ばれる少年は仮想通貨が大好きであった。
ヒナちゃんの願いは「ミナト君とこのままずっとに一緒にいられますように♪」である。
このところなぜかモテるミナトが心配なヒナちゃんの切なる願いであった。なんとも
去年はタケル君も一緒に初詣に行っていたが今年はタケル君の家族は海外旅行なのだとか・・・。
タケル君のお父さんもミナトが始めた仮想通貨の投資の影響で早くからビットコインや他のコインを多く買っていたので既にお金持ちである。
これはミナトにも伝えてはいなかったがプログラマーのジンさんの給料は元々高かった。それを毎月、半分を投資にまわしていたのだ。
既にミリオネアの域であった。2020年にはミナトもミリオネアの仲間になっているがいち早くジンさんは普通のサラリーマンからセミリタイアの状態である。
好きでやっているプログラムの仕事なので完全なリタイアではないが定時で帰宅することも多くなり、自分の息子のタケル君がまだ子供のうちにいろんなところへ連れて行ってやりたいという親心でもあった。
ミナトの両親やヒナちゃんのお父さんも同様にそこそこの小金持ちである。
ミナトという少年が導いた”良い未来”である。
あの時、あのタイミングでミナトが仮想通貨を買いたいと言っていなかったら・・・。
労働こそがすべてと考えていたら・・・・。
今の未来はなかった。
そう、人々は常に”選択”しているのだ。誰も自分がその未来を選んだとは気づいていない。だが、しかし、人々は”投資しない”という選択を自分でしているのだ。
興味がない、仮想通貨はわからない、買わない・・・それも一つの未来だといえよう。
2020年に世界が大きく変わることは誰にもわからない。そして、気づかないものなのだ。
2018年のミナトとヒナちゃんはそれでも幸せである。
ほんの少しの未来さえも誰もわからない。しかし、至るところに神の啓示がある。
ただそれがパズルのようにバラバラすぎて誰も気づかないだけなのだ・・・。
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