第28話 仮想世界

ミナトは思った。


パソコンの進化と共にインターネットのインフラ整備が進み、どんどんネットを取り巻く環境がよくなっている。


2003年頃ならまだネット通販は駆け出しだった。その頃から比べると今はずいぶんインターネットを利用した買い物が増えている。


都会に住む人たちは車を所有しなくなり、代わりにインターネットで宅配を頼む人が増えたそうだ。


それは衣類だけではなく、食材までもがそうらしい。送料も無料で価格も手ごろだという。

わざわざスーパーに行くのではなく、自宅に野菜を届けてもらう・・・そんな時代になったのだ。


ネット上の仮想世界は広がりをみせているのかもしれない。

英会話や家庭教師もスカイプやラインでレクチャーしてくれるのだ。

パソコンとネット環境さえあれば学べる時代である。


スカイプやラインを立ち上げてヘッドフォンとマイクでやりとりする。

ブラウザで問題が出て、直接、答える。そして、講師にレクチャーしてもらえるのだ。


あらゆる分野の”教育”がこれからはインターネットを使って授業を受けるのではないだろうか?


それなら学校の教師が減ってもネット回線を通じて生徒は授業を受けることができる。

まるで住んでいる地域が違う子供たちが同時に授業を受けられる・・・・。

パソコンとインターネットがあれば、そんな夢のようなシステムが実現可能なのだ。


仮想世界が広がることによって、それもまた仮想通貨が決済に役立つという見方もできる。


これからの世の中はよりお金の流動スピードが速くなる。


世の中の動きに合わせて必要なもの、必然的に使われるもの・・・・それこそが仮想通貨の決済だ。


ミナトは仮想世界の広がりと仮想通貨の因果関係を深く考えていた。そして、今の時代がどれだけ情報の伝達スピードを速めようとしているかが気になっていた。


時代が求めているのは「情報」「知識」「伝達する速度」なのだ。


もしかしたら仮想通貨は加速度的に高騰していくのでは?


そう考えただけでも体がゾクゾクする。ワクワクではなく体の芯から何か得体のしれないエネルギーが沸いてくるような感覚に襲われる。


VR(バーチャルリアリティ)の技術はYoutubeでも見られるようになった。360度のパノラマ映像だ。


まるで自分が本当にその場所にいるかのように景色が見渡せる。

いずれ店の中に入ったり店員と会話しながら買い物したり・・・・・仮想世界でできるようになるかもしれない。


不動産を買ったり車に乗ったり・・・ということも可能になる。


パソコンとネットでアクセスできる仮想世界、もう一つの地球が誕生すれば一体、人類はどこへ向かって進んでゆくのだろうか?


ますますSFのような世界になりつつある。


テクノロジーの進歩はムーアの法則に従って確実に新しい時代へと人類を導いているのだった。


飛行機も船も車も人工衛星を使った自動運転が主流になるかもしれない。

エアコンやテレビ、冷蔵庫、電子レンジ、車にバイクもデジタル制御の時代になっている。


アナログと違ってソフトのアップデートのみで機器の性能を上げることができたり新たな機能を追加することができる。


CDやDVDからMP3やMPEG4になり音楽も動画もダウンロードして楽しむ時代になった。


あらゆる情報が「形を持たずに手に入る」という魔法のような時代・・・・。


じゃあ「お金」も・・・・?


いつの頃からか、絵画の世界もデジタルになっていた。タッチパネルの液晶タブレットにタブレット専用のペンを当てるだけで絵が描けるのだ。

筆圧もちゃんとタブレットが認識して絵の濃さを変えてくれる。それだけではない。

筆、ペン、鉛筆、エアブラシなど、どんな種類のアートをするかも選べるのだ。


本や図面もダウンロードして見るファイルとして形を変えた。


一体、どれだけのものが「形を持たない商品」になってゆくのだろうか・・・・。


10年前には考えもしなかったほど、パソコンとインターネットは進化を遂げている。

そして、これからも・・・・。


ミナトは2017年の冬休みを満喫していた。


美術部顧問の秋山先生の家には冬休みに入ってから3回行っている。秋山先生は年末までこっちにいるそうだ。


年始はさすがに実家に戻って両親や兄弟に会うらしい。あと初詣に地元の友達と行くという話をしていた。


秋山先生にマイニングの投資のやり方をレクチャーしたり、2018年に高騰するコインの予想を伝えているミナトだった。


なんだかミナトはちょっと年上のお姉ちゃんができたようで嬉しかった。

一人っ子なので兄弟や姉妹に憧れていた。


ミナト「秋山先生、石松先生とはどうなったんですか?」

ミナトは秋山先生の家にお邪魔したついでに石松先生との進捗状況を聞いてみた。


秋山先生「ん?映画は観に行ったんだけどそれ以来、進展はないわねぇ」


なんだか石松先生のこと忘れていたような答え方だなぁ・・・(汗)

大人になるとお互い忙しかったり同じ職場で恋愛とか・・・・難しいのかもしれないなぁ。


秋山先生「ミナト君はヒナちゃんとうまくいってるの?」

ミナト「ううっ・・・・。いちおう仲はいいですけどけっこう邪魔されてます。ハハッ」(苦笑)


秋山先生「誰に邪魔されるの?ハハッ」

先生は恋愛を邪魔する人なんかいるのかな?といった感じだった。


ミナト「メイちゃんっていう同じクラスの子です。彼女はお金持ちとか投資家が好きなんですよ。この前、メイちゃんに僕が投資家だっていうことがバレてしまって・・・・。

いきなり抱きついて来たりヒナちゃんと別れてとか言い出すので・・・正直、困ってます」


秋山先生「うわぁ・・・プレイボーイね!ミナト君は中学のときからそんなモテモテなんだね。大人になったらもっといろいろトラブルになるかもよ~♪」

秋山先生が冗談っぽく不安を煽ってきた。なんだか楽しそうに見える。(汗)


ミナト「なんかアドバイスとかくれるのかと思ったんですけど・・・」(苦笑)


秋山先生「私も恋愛経験が少ないから人にアドバイスできないわ~。自分でなんとかするしかないわね」


ミナト「了解です、ヒナちゃんに迷惑や心配をかけちゃってるのでなんとか解決したいと思っています」


秋山先生「彼女想いねぇ、きっとミナト君なら大丈夫な気がするわ」


ミナト「秋山先生にこうやっていろいろ話せるのは僕にとってありがたい環境なんです。両親に学校のことを相談したら心配されるのでそういうのはちょっと苦手なんです。答えはなくても話しながら心が軽くなるっていうことがとても嬉しいです」


秋山先生「ああ、話ならいつでも聞くから私に言ってね。私もずいぶん投資のことでミナト君にお世話になってるから♪」


僕はやっぱりヒナちゃんと一緒にいるのがいいと思ったし、美術部に入ってよかったと今、改めて思った。


他の部活の顧問の先生だったらこんな風に打ち解けていないだろう。


なぜか義務教育、学校では「恋愛」や「投資」の話に触れるのがタブーのような扱いだ。


先生たちも時代が変わったことに気づいていない。

僕らは小学生の頃から恋愛を意識して育っている。告白したり付き合ってるというのが当たり前でカッコイイと思って育った世代だ。


投資に関してはさすがに同年代で投資をしている人にはなかなか出会えない。


年金や退職金、はたまた銀行金利までもアテにできない僕らの世代は「投資」して利益を出さなければ、自分たちが老後に困ったことになるのは目に見えている。


親の介護費、子供の養育費、家のローンなど、すべてにおいて板挟みなのだ。


おじいちゃんたちの世代ではまだ銀行金利が5%ほどついていたという話を聞いたことがある。

僕のお父さんたちの世代は高度経済成長期のバブル崩壊後の時代なのだ。


本当に苦労したと聞いた。大手企業の倒産やリストラ、中国へ工場ごと引っ越したり国内の経済状況はボロボロだったという。


日本が落ち着きを取り戻せたのは派遣会社が登場してからではないだろうか?


非正規雇用で工場で働いてくれる派遣社員が登場してから企業は退職金やボーナスを払わなくてよくなった。


弱い立場、末端に負担を押し付けて政府は何もやってくれない。だからこそ、投資は僕たちの世代では必須になるはずだ。


小学生の時までとは違い、ミナトは大人と話す機会が増えてたくさんの情報を得ていた。

自分たちの親の世代やおじいちゃんたちの世代の情報とそのときの現状をリアルに把握していた。


そして、自分たちが大人になってから辿るであろう現実、直面することが避けられない現実は非常に厳しいものであることも理解していた。


もしかしたら少子高齢化が進みすぎて「人材不足」になった企業は、こぞって正社員を欲しがるかもしれない。


あくまで楽観的な考え方だが、ミナトたちが大人になる頃を考えると団塊の世代の定年退職後になることは間違いなかった。

ミナトたちにとって就職する時期が最悪になるか、最高になるか、そのどちらかだった。

それが僕たちが18才で高校を卒業した後なのか大学を卒業したぐらいの年なのかは分からないが・・・・。


その理由はいくつかある。

正社員として社員を育てなければ、その企業は品質を維持できなくなる。


あと会社に忠誠を誓う社員を育てなければ空中分解もあり得る。

ベテラン社員が一斉にやめて一部の作業が停止という事態になれば、それはやがてその企業にとって致命的な痛手となる。


少子高齢化で人材不足になり学生たちが売り手市場になることで正社員の雇用が増えて経済が活性化する。


非正規雇用のままでは信用力がないために銀行からお金が借りられない、ローンが組めないなど問題もあり、家のローンが組めないこともあり得る。


僕らの世代か、もう少し下の世代ぐらいから企業と学生の立場は逆転して、企業が学生たちを取り合うという事態になる。


ちょうどおじいちゃんたちの世代がそうだったように・・・。


巡りく時代は巡り来る。


おじいちゃんが言ってたなぁ・・・。ミナトはおじいちゃんとの会話を懐かしんだ。


ミナトは投資でもいつも損益が出たときはおまじないのように言っていた。

「巡り行くものは巡り来る」と・・・。


信じて待つ。それが好機につながっていたのだ。

おじいちゃんやおばあちゃんの愛情が彼の心の奥深くを支えてくれているのだった。


2017年、年末もやはりミナトはたくさんの利益を上げるのだった。

AI(人工知能)搭載のパソコンによるシステムトレードも順調である。











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