第21話 指標
夏休みが終わって2学期がスタートした。
ミナトたちが中学生になってから、あっという間に時間が過ぎてゆく。
中学生になると小学校まで良い奴だったのに、突然グレ始める奴もいたり、無邪気だった子が大人っぽくなっていたり・・・。
みんなそれぞれ大人になるまでに経験値を積み重ねていた。
夏休みの間に”何を経験したか?”が気になるところだ。
異性が気になり始めるというのも今ぐらいの時期だろうね。
ミナトにはヒナちゃんがいるから他の異性にはとくに・・・ユメリちゃん以外は気にならないようだ。
ミナトは9月になっても相変わらず仮想通貨の情報サイトを見ている。そして、気になったトピックスが1件あった。
「米国の大手銀行の調査部門がビットコインを指標!?」とある。
なんでも来年にはビットコインの価格が今よりも上がっているはずだ、という話である。
それも米国の銀行が独自の調査をして指標を出しているらしい。
この銀行はいろんな価値のあるものに対して指標を出している機関らしい。
それによると来年、2018年6月時点のビットコインの価格は110万円を超えているだろうというものであった。
ミナトは手をアゴに当てて考えていた。
果たしてこの指標はいかがなものだろうか?と・・・。
そして、他の情報も加味した結果、この指標よりも上がる可能性があると結論を出した。
ミナトにとってビットコインはマイニングでも増やせるのでそれほど重要ではなくなっていた。それに今の価格ですら、高騰しすぎではないか?と不安になる部分があるぐらいだ。
それならアルトコインへの投資を進めるべきではないか?と考えるようになっていた。
夏休みが終わって2学期になって間もない頃、タケル君のお父さんからスカイプに連絡があった。
タケル君のお父さん「ミナト君、前に相談してくれてたAI搭載のパソコン入手できるよ。ただ30万円ぐらいするけど、どうする?ハードディスクなしでSDDになってるから、めちゃくちゃ高速で使いやすいと思うけどね」
ミナト「ぜひ入手してもらえますか?30万円とジンさん(タケル君のお父さん)に手数料をお支払いします」
タケル君のお父さん「おおっと!中学生になって俺のことをジンさんと呼ぶようになったか・・・ハハハッ!」
タケル君のお父さん「わかった。とりあえず俺の建て替えで買っておくから、あとでお金は払ってくれたらいいよ。あと自動売買ソフトは5万円ほどで入手できる。EA(売買パターン)ソフトは1万円だ。そのへんも買っちゃってもいいかな?」
ミナト「総額50万円以下なら大丈夫です。それがあったほうが投資は有利なので・・・」
タケル君のお父さん「ハハハッ!もう俺なんかより、よっぽど大人だな。ミナト君がやろうとしていることを俺も見習うよ」
ミナトはタケル君のお父さんに頼んでいたものをどうやら入手できる状態になったようだ。
AI搭載のパソコン、自動売買ソフト、EA(売買パターン)ソフトをミナトはこれから使っていくことになる。
それから1ヶ月が経ち、ミナトの手元には必要なものがすべて揃った。
AI搭載のパソコンに投資を教えたり、どういう結果が欲しいかを説明した。
このパソコンはCPUとGPUで構成されており、役割分担をすることによって処理速度が従来のパソコンの比ではない。
さらにSDDなのでフラッシュメモリー型のメモリーチップということもあり、記憶媒体も超高速である。
17インチの画面はタケル君のお父さんから譲ってもらった15インチのノートパソコンの画面よりもかなり大きく感じる。
ミナトは新しいAI搭載のノートパソコンの動作速度に驚きを隠せなかった。
ミナト「はやっ!同じノートパソコンに見えてもこんなに動作速度が違うんだね」
ミナトはタケル君のお父さんに譲ってもらったノートパソコンが初めて使うノートパソコンだったのでパソコンに搭載されている付属部品や主要部品の違いで動作、処理速度のパフォーマンスが圧倒的に向上するということをいまいち理解できていなかった。
ミナトは新しいノートパソコンのキーボードの質感や画面の大きさ、処理速度の速さをすっかり気に入ってしまった。
これからミナトはこのAI搭載のノートパソコンに投資を任せることになる。そして、たぶんこれはミナトがやるよりも断然、効率的に投資をやってくれる素晴らしいパートナーになっていくことに間違いなかった。
自動売買ソフトとEAソフトも入手できて上機嫌であった。
ミナトはこの自動売買をビットフライヤーを使って実行するようだ。
現物取引、アルトコインの購入にはコインチェックが有効だと考え、AI搭載のパソコンに自動売買をさせることとEAによる売買パターンの変更などはビットフライヤーが適していると判断した。
タケル君のお父さんから譲り受けたノートパソコンに貯めた情報を新しいノートパソコンに移し変え、古いノートパソコンはフォーマットすることにした。
今、ミナトがやっていることは将来・・・5年以上あとに日本で主流になる投資スタイルであった。
今はまだ為替FX、株式などが自動売買ソフトを使えるぐらいで仮想通貨のそういったインフラ整備はまだまだ整っていなかった。
タケル君のお父さんと投資仲間になったことで未知の部分に誰よりも早く足を踏み入れることになったのだ。
彼こそが未来の投資家クリプトカレンシーボーイである。
本人も周りもまだその凄さがわかっていなかったがこれからミナトの人生は大きく変わることになる。
投資には年齢も学歴も関係ないのである。投資に対する真摯な気持ちと未来を予測してそれをいち早く取り入れた人間のみが成功者となり得るのだ。
2学期が始まって早々、ミナトは50万円近くを出費した。これは自分の未来に対する投資であり必要経費であった。
彼には”わかっていた”。
投資とは商品を買うだけではなく、環境を整えたり、自分のスキルを上げることも投資であることを・・・。
その投資は早ければ早いほど、時間が経った後のリターンも大きくなることを彼は心の深い部分で理解していた。
10月になり夏の暑さが少し和らいできた。
美術部の部活の時間が終わって、ヒナちゃんと帰ろうとしたが・・・・。その時、秋山先生にミナトは引き止められた。
秋山先生「ちょっとミナト君、話があるんだけどいい?後で家に車で送るから残ってくれる?ヒナちゃんも一緒にいていいよ」
ミナト「ええ、大丈夫です。ヒナちゃん一緒に送ってもらおう」
ヒナちゃん「うん、先生が送ってくれるっていうなら甘えようかなぁ」
秋山先生の仮想通貨の投資もどうやらいい傾向にあるようだ。
ただどうしてビットコインが高騰しているのか・・・さっぱりわからないという。(笑)
ミナトは一通りの説明をした。ハードフォークや運営サイドによるコインの分裂後の高騰など、説明は難しいができるだけ秋山先生に理解できるように話をかみ砕いて丁寧に話した。
秋山先生「ありがとう!ミナト君。あとマイニングも利益が出てるわ。ほんと嬉しい」
相変わらず秋山先生はキャピキャピしてて可愛いなぁとミナトは思った。
秋山先生はミナトとヒナちゃんを車に乗せて家の近くまで送ってくれた。
秋山先生「じゃあね!また明日」と言って、先生は車で帰って行った。
ヒナちゃん「ミナト君、先生にまで頼られるってスゴイね♪でも、投資のこと先生に話しちゃったの?」
ミナト「いやぁ話すつもりはなかったんだけどね・・・。投資のセミナーでばったり会っちゃったんだよ」
ヒナちゃん「ええー!?そうだったの?」
ミナト「でも、投資のセミナーは詐欺だったよ。先生はセミナーの主催者が最後にコインを売ろうとしてて、それを買うつもりだったんだ。僕が止めたんだ」
ヒナちゃん「たまに仮想通貨の投資でセミナーが詐欺ってニュースで見たことあるぅー!」
ミナト「その後、一緒にカフェで仮想通貨に関する話をしたんだ」
ヒナちゃん「じゃあミナト君がそこで先生と出会わなかったら先生はいまごろ・・・こわーい」
ミナト「そうだね、たぶん価値のないコインを高額な価格で買わされていただろうね」
ヒナちゃんはミナトに腕を絡ませてミナトの手を握った。
ヒナちゃん「やっぱミナト君はスゴイよー!尊敬しちゃうぅー」
ミナト「ありがとう、ヒナちゃんにそういってもらえると僕も嬉しい」
二人は軽くキスしてからお互い手を振って家に帰った。
ビットコインに大きな動きがある2017年12月まであと2ヶ月だった。
ミナトは人工衛星によるビットコインの送金が可能になることに期待を膨らませた。
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