第18話 ハードフォーク
あの体育館でユメリちゃんに言い寄られたときはかなりドキッとした。
家に帰ってからユメリちゃんからラインで「今日はごめんね、でも、また時間があるときにデートしない?」と誘われてしまった。
ヒナちゃんと付き合ってるってわかってるのに・・・積極的だなぁ。
僕はラインで「機会があればね。買い物ぐらいなら付き合うよ」と返事しておいた。
向こうから誘って来ない限り僕から誘うことはない。
そこからラインの連絡はなかった。
7月の後半から8月は夏休みだ。美術部は完全に夏休みに入っていた。
中学校に入ってからいろいろ忙しかったからやっと一息つける。
学校の宿題、週2回の英会話、美術部の活動、家に帰ってからは投資の勉強。
さらにブログの更新や投資仲間とのやりとり・・・。
ヒナちゃんからも連絡があってラインでやり取りしたり土日にデートすると自分で使える時間ってほんとに限られてくる。
8月に入ってビットコインはハードフォークした。
これがなんとも複雑なハードフォークだった。セヴウェットの実装を兼ねていることとコインの分裂があった。
一時的にビットコインの価格が大幅に下がったり、今度は急騰したり・・・。
コインが分裂してビットコインキャッシュという名の新たなコインが生まれた。
ミナトが保有している資産のビットコインの量と同じだけビットコインキャッシュを取引所から分配してもらえた。
このビットコインキャッシュの価格が3倍になったときに売り抜けてまたさらに利益を伸ばした。
ミナトの資産は150万円ほどに増えていた。
ハードフォークとはアップデートの意味であり、そのタイミングで分裂することがしばしば見受けられる。
リスクやライトコインもハードフォークしたが分裂はなかった。
そのコインの運営サイドの方針によってアップデートだけだったり分裂だったり、いろいろと起こるようだ。
夏休みに入ってからヒナちゃんと会う機会が多くなった。お互い勉強を教え合ったり買い物デートは常に一緒だ。
ほとんど一緒にいるのが当たり前のような感覚になっている。
8月の半ばを過ぎた頃、ユメリちゃんからラインにメッセージが入った。
ユメリちゃん「おはよう!投資家のミナト君。もしよかったら明日デートしない?」
ミナト「明日はとくに予定がないから、いいよ」
ミナトからすればヒナちゃんに少し後ろめたい気持ちがあるが、ユメリちゃんが誘って来たのはどうせ「欲しいものがあるから買って」っていうただのおねだりだろうと甘く考えていた。
投資で資産が増えているからとくに気にしていなかった。
デート当日、ミナトはユメリちゃんと待ち合わせして、街のショッピングモールに出かける予定となった。
ミナトはユメリちゃんの私服を見るのが楽しみだった。
制服のときとはまったく別人のようにお姉さんっぽくなるからだ。
制服を着てても色気も可愛さもあるが私服は中学生に見えないほど大人びていた。
先に待ち合わせ場所にミナトが着いた。
ショッピングモールの壁にもたれて街ゆく人を眺めていると真横から「待った?」と声をかけられた。
ミナトが振り向くとそこにはとってもキレイな女性が立っていた。
ミナト「へっ?どちらさまですか?」
ユメリちゃん「私よ・・・私♪」
ミナトは度肝を抜かれた。
ミナト「えっ?ほんとにユメリちゃん。まったく別人みたいに見えるけど・・・」
本人を見ても本人だと認識できない。どうなってんだ、僕の頭は・・・。
キャミソールを着て涼しげなサンダルを履いた姿は20才ぐらいのお姉さんに見える。それに化粧してまつ毛もなんかちょっと違うし・・・。
休日の彼女は飛びきりイイ笑顔で話しかけてくれた。
ミナトは少し震えた。同級生でこんなにキレイな人いないよなぁ・・・。
ユメリちゃんは別格だった。
ミナトもかなり気持ちが高鳴ってしまった。
ミナト「よし、買い物に行こう。今日一日は付き合うよ」
ユメリちゃん「ほんと?嬉しい。ミナト君って心が広いから好きよ」
ミナトはかなり照れた。惚れるよなー・・・これは誰でも惚れるだろうな・・・。
ショッピングモールに入って二人でユメリちゃんが好きなブランドのお店に足を踏み入れた。
ユメリちゃんがキャミソールの上から欲しい服を「これ、どう?」と言って、全身にピッタリくっつくように合わせている。
うん・・・色っぽい♪
ミナト「ああ、いいんじゃない?とっても似合ってるよ」
ユメリちゃん「そう♪ありがとぉ。じゃあちょっと試着してみるね♪」
ユメリちゃんは試着室に入った。
その間、僕はユメリちゃんのカバンを持って試着室の前で待機していた。
試着室の中で着替えてる音が聞こえる。
ミナトは試着室の中は今「どんな状況なんだろう?」と考えていた。もしかしたら下着だけになってるのかもな・・・。(汗)
ユメリちゃん「ちょっとミナト君、手伝ってくれない?」と試着室の中から声が聞こえた。
ミナト「えっ?いいの?大丈夫?開けるよ」
ミナトは恐る恐る試着室を開けた。
試着室の中で背中を向けてユメリちゃんが待っていた。
ユメリちゃん「ちょっとミナト君、背中のチャック上げてくれない?」
そこには肌が真っ白でブラのホックが見える状態のユメリちゃんの姿があった。
試着した服の背中のファスナーを自分で上げるのがやりにくかったようだ。
ミナトはかなり動揺したが”頼まれたからいいか”と思って、ユメリちゃんの試着している服のファスナーを上げた。
ユメリちゃん「いいよ、ありがとう」と言って試着室を締めた。
なんか僕にお姉さんができた気分だ。弟みたいに扱われているよなぁ。
何点かの服の試着、スカートの試着が終わって、サンダルやスニーカーを選んで全部で10点ほど買い物をした。
全部、ユメリちゃんの買い物だった。
合計5万円ほどの買い物だった。ユメリちゃんは上機嫌だった。
その後、ソファのあるカフェでくつろいだ。
ユメリちゃんはいつにも増して明るい振る舞いだった。
僕もそんな彼女を見るのは悪くない。
ユメリちゃん「ねぇどうなのよ?ヒナちゃんとはこのまま卒業まで関係を続けるの?」
ミナト「そりゃヒナちゃんは僕にとって大事な彼女だからね」
ユメリちゃん「そうなんだ・・・。じゃあ私は二番目ってこと?」
ミナト「いや順位はつけられないけど・・・・。もしヒナちゃんと付き合ってなかったら僕もユメリちゃんと付き合ってたと思うよ」
ミナト「残念だけど僕にはもったいないぐらいなんだよ、君は」
ユメリちゃん「あら・・・残念、でも、そういう恋のほうが燃えるのよね」
自信があってモテる人がいいそうな発言だなぁとミナトは思った。
僕にはそんな自信はまったくない・・・。
ユメリちゃん「でも、服を買ってもらったり、いろいろ良くしてくれてるからミナト君が私とヤリたいことがあったら言ってね、少しぐらいなら言うこと聞いてあげるから、ね♪」
ミナト「ああ、それはどうも・・・」
完全に主導権はユメリちゃんが握っていると僕は思った。
一緒にいるのは別にイヤじゃないし何も問題はない。でも、彼女は自分が欲しい買い物で僕を利用しようとしているだけなんだろうなぁ・・・。
もし今月、資産が150万円を突破したとか言ったら今よりデートの回数が増えるだろう・・・。
いつもこんな買い物されたらそれこそ僕の資産はゼロになってしまうし・・・。(汗)
ここは一つ。彼女がイヤがることをしてやろうかな。
わざと彼女に嫌われることをして、彼女のほうから遠ざかってもらったほうがいいのかもしれない。
本当はそんなことしたくないけど、ここは芝居を打つとしようか。
ミナト「あのさっき言ってた、僕のいうこと聞いてくれるって話ほんとう?」
ユメリちゃん「ええ、いいわよ。なんでもいってよ、投資家のミナト君」
ミナト「じゃあさ、このあと一緒にネットカフェいかない?」
ユメリちゃん「いいよ、近くにあるからそこ行こうか」
しばらくして夕方ごろ、僕たちはネットカフェに移動した。
ミナトとユメリちゃんはジュースを持って、ネットカフェの個室のソファに座った。
ミナトはジュースを飲んで気分を落ち着けた。
ミナト「それじゃあ、さっそくなんだけど・・・・キ・・・キスしようか」
ヒナちゃん以外の女性とそんなことしたことないからめっちゃ緊張する。
ユメリちゃん「あら?大胆じゃない、いいわ、今日は私はミナト君のモノだから♪」
へっ?いいの?マジ?いいの?(超汗)
ミナトは恐る恐るユメリちゃんの顔に近づいた。彼女は目を閉じてすでに受け入れ態勢だった。
自分から言い出してやらないわけにはいかないよな・・・。
ミナトはユメリちゃんにキスをした。
うわー!ほんとにやっちゃったよ・・・どうしよう?
キスをしたまま、ユメリちゃんに両手を引っ張られて腰のほうに手を回すことになった。
ミナトは思わず、ユメリちゃんとキスするのをやめて離れた。
ユメリちゃん「あら、もういいの?どうしたの?ミナト君、好きにしていいんだよ?」
ミナト「いやぁ・・・なんていうか、大人だよね、ユメリちゃんってさぁ」
ユメリちゃんは笑い出した。
ユメリちゃん「だって、私は恋愛したいんだもん」
ミナト「ああ、そうなの・・・。すごい大胆でビックリしたよ」
嫌われるつもりだったのにダメだ・・・まったくイヤがる素振りもない。(汗)
ユメリちゃん「次は何かやらないの?私はミナト君だったら許せるんだけど」
ミナトはしばらく考えた。
ミナト「じゃあ僕と手をつないでインターネットで面白い動画見ようよ」
ユメリちゃん「ハハッ♪ミナト君らしい」
この後は何も手を出さず、二人でネットカフェで面白い動画を楽しんだ。
今回もけっきょく断りきれなかったし別に悪い子じゃないんだよなぁ。
彼女が買い物して満足してるならそれでいいか・・・。
時には結論を出さずに平行線のまま前に進むことも必要なことをミナトは学んだ。
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