第15話 中央集権機構

ゴールデンウィークの仮想通貨の盛況ぶりはスゴかった。おかげでミナトの資産は80万円になった。10万円は旅行費と買い物で使っちゃったけど・・・。

それでも中学生になって資産70万円はなかなかの投資家である。


ゴールデンウィークに一番安かったコイン・リップル(XRP)が高騰した。それも5倍以上の高騰だった。

あれよ、あれよと言う間にミナトの保有しているコインの時価総額を押し上げた。


ゴールデンウィーク明けにユメリちゃんとカフェに行ったあの日の出来事が頭に焼き付いて離れない。スゴく刺激的な子だということはわかった。

ミナトは生まれて初めて女性の手のひらで踊らされるという経験をした。

良い意味で勉強になったと本人は満足している。


今日は部活が終わったらヒナちゃんの家に行く。一緒に帰ってそのままヒナちゃんの家で夕食を食べる予定だ。

ヒナちゃんのお父さんから仮想通貨に関する情報があるので聞かせてもらうことになった。


なんでも今回、高騰したコインは他とはちょっと違うそうだ。このリップル(XRP)の仕組みは僕にはよくわからなかった。

高騰したのは確かだ。しかし、リップル(XRP)というコインはリップルラボ社という会社が運営しているコインなのだとか・・・?


ミナトとヒナちゃんは部活が終わると一緒に帰った。ヒナちゃんの家にお邪魔させてもらった。

ヒナちゃんが玄関を開けて元気に「ママ、ただいまー」と言った。


ミナト「こんばんはー、お邪魔しますー」

ヒナちゃんのママ「おかえりー!あらーミナト君、制服、似合うじゃなーい」


ミナト「ああ・・・どうも」

ヒナちゃんのママ「なんだか凛々しく見えるわね!男らしくなった気がする」


ミナト「めっちゃ褒めてくれて嬉しいです」(笑)

ヒナちゃんの笑顔はママ譲りだと僕は思った。


リビングのテーブルにヒナちゃんと並んで座って夕食ができるのを待った。テレビのニュース番組で今回のゴールデンウィークでどこが人気があったか特集をやっていた。

ほどなくしてヒナちゃんのお父さんが仕事から帰ってきた。


ヒナちゃんのパパ「ただいまー」

ヒナちゃんとママは一緒に「おかえりー」と大きな声で言葉を返した。


僕は「おかえりなさい。お邪魔させていただいています」とあいさつした。

ヒナちゃんのパパ「おお!ミナト君。今回はスゴイ情報があるんだよ」

ヒナちゃんのお父さんはさっそく仮想通貨の話を熱く話はじめた。


気づけば僕はヒナちゃんのお父さんの話に釘付けだった。夕食を食べながら聞いていたが、食べた夕食が「なんだったか?」を思い出せないほどヒナちゃんのお父さんの話に聞き入ってしまった。


コインチェックで販売されているリップル(XRP)というコインはリップルラボ社が運営しているコインだそうだ。

そのリップル(XRP)の総量は凄まじい数なのだとか・・・。

今回、その凄まじい数のコインが高騰したのはリップルラボ社が世界にある各取引所に流す量を限定したことが原因だそうだ。


リップルラボ社は資金調達のためにリップル(XRP)を取引所に上場させている。だが、他のコインと違うところは中央集権機構のようになっているところにある。

実に興味深い話だった。


送金スピードで抜きん出ているのはこのリップル(XRP)である。その理由はリップルラボ社がすべてを管理しているからだそうだ。

他の仮想通貨はプログラムが”自動”で勝手に動いているような状態なのだがリップル(XRP)はリップルラボ社の管理下のもとで動いている。そして、面白いのがブリッジ通貨という特性だった。

リップル(XRP)を使って円とドルを両替することができる。円を売って、リップルを買って、ドルに換金するという方式なのだがこれは瞬間的に行われる。


一瞬だけリップル(XRP)が介入するので介入通貨とも呼ばれることがある。

この介入をするとリップル(XRP)自体は消滅するらしい。


つまり見た目は円からドルに自動で両替したような感覚になるそうだ。

なんとも実用的なコインだった。


スポンサーにはグーグルやアップル社がついているという。将来が有望なコインの一つである。

それにこのリップルラボ社自体が国際送金システムの要に取り入れられるという情報まであった。

確かに国際送金、両替でこのリップル(XRP)を使えば、パソコン上で自動で両替が可能になるだろう。手数料もほとんどかからない。素晴らしいコインだ。


前に言っていたタケル君のお父さんの言葉を思い出した。

通貨としての価値に機能が加わったものが仮想通貨だと・・・。


なにはともあれ、このリップル(XRP)の価格が上がったのは嬉しい。それにリップルラボ社自体のこれからの活躍に期待したい気持ちになった。


今はまだ国際送金といえば銀行から銀行にお金を振り込むというやり方なのだが国際送金の手数料はかなり高い。

銀行から銀行にお金を振り込むだけではなく、途中でお金を両替して振り込んでもらうという手間が入っているからね。


近い将来、このリップルラボ社の技術を使って国際送金が可能になり、手数料は限りなく安くなるだろう。ますますSF映画のような未来に近づきつつある。


僕は未来の世界を想像して心が躍った。


ヒナちゃんのお父さんとこれからの世界を話しているとなんだか”すでにそんな世界になっている”んじゃないかと錯覚するほど頭の中に明確なビジョンが浮かんでくる。

言葉と言葉のやり取りなのに頭の中には映像が流れていた。


ミナトはさすが教師の言葉は違うなぁと感心した。今まで大人と話して、これほど頭の中に映像が浮かんだことはなかった。


さっそくブログでもそのことを書いておいた。忘れないように記録は残しておきたい。


次の日、ユメリちゃんが「素敵な話ね」と唐突に話しかけて来て僕は焦った。

まだブログ見てくれてたんだ・・・とドキドキした。

あれから少しずつではあるが会話をするようになった。


もしかしてまた僕をからかおうと様子を見ているのかもしれないが・・・。(汗)

まぁ彼女にからかわれるのも悪くない。(笑)


ユメリちゃんの色っぽさ、大人びた口調は同学年の間でも話題になる。

とくに男子生徒の間では大人気だ。

彼女の前ではどんな男も「恥ずかしく」なる。それは彼女が大人びているから自分から話しかける言葉が幼いと意識させられてしまうのだ。

つり合いが取れない・・・。そう、誰もが感じる。


僕はどうしてそんな色っぽさを手に入れたのだろうか?と疑問を持った。それはきっと家族の影響もあるだろうと予想した。


たまたま休み時間に話せる機会があったので僕はユメリちゃんに家族のことを訊いてみた。


ミナト「あのさぁ、ユメリちゃんって兄弟とかいるの?」

ユメリちゃん「いるよ。とってもキレイな姉が一人」


ミナト「おお!お姉さんもキレイなんだ・・・」

ユメリちゃん「お姉さんもってことは私も含んでくれてるの?投資家のミ・ナ・ト君♪」とちょっと顔を寄せる感じで上目遣いで聞き返された。


おお・・・、近くに顔を寄せられただけで緊張して動けない・・・。しかも、こんなカワイイ上目遣い見たことないぞ!


ミナト「そりゃユメリちゃんは可愛いと思うよ。みんなもそう言ってるよ。お姉さんって社会人なの?」

ユメリちゃん「あら、ありがとー♪姉はキャバ譲やってるわ」


おお!なるほど、ユメリちゃんのお姉さんはキャバ譲だったのか・・・どうりで・・・。


ミナト「そうなんだね。でも、キャバ譲って男の人をもてなす仕事だけどお父さんとかお母さんは反対しないの?」

ユメリちゃん「反対?」(笑)


ユメリちゃん「うちの母親、スナックのママだから反対はしないわね。パパはただのサラリーマンだけど、私ん家って自由なの。そういう束縛は一切ないわ」


ミナト「へぇなんかすごい家庭だな・・・」

ユメリちゃん「いろいろ訊いて来るじゃないミナト君。どうしたの?私の家族に興味があった?」


ミナト「まぁどうしてユメリちゃんって大人っぽいのかなぁって思って・・・。家族の影響とかあるのかなーなんて・・・ちょっと気になったんだ」

もう正直に言うしかない。この子にウソとかお世辞は通じそうにない。


ユメリちゃん「そうね、ママと姉の影響が強いかもね。服装とか髪型もそうだけど・・・。イベントのときに男に甘える方法とかも・・・ね♪」


おお!絶大に影響受けて育ってますね・・・。(汗)


僕が小学生のときから投資をやっていたように彼女は小学生のときから男性を扱う方法をお姉さんやお母さんに教えてもらってたんだね。

なんだかすごく納得した。


きっと大人になったらテレビに出るようなナンバーワン・キャバ譲になっているに違いない。もしキャバ譲じゃなくてもお金持ちの男性とすぐ結婚しそうなイメージがある。


僕らとは同等ではないオーラが既にある。


中学の3年間と高校を過ぎるとほんとに人って変わっちゃうんだろうなぁ・・・。

僕も今の僕のままじゃなく、「立派になったね!」って言ってもらえるような大人になれたらいいけど・・・。


好きな仮想通貨の投資を通じて大人になれたら一番嬉しい。


ユメリちゃんの服装や髪型、色っぽさがお母さんとお姉さんの影響だったことがわかったのでなんか少しだけ彼女のことを理解できた気がした。でも、近寄りがたさは相変わらずだ。


僕はやっぱりいつでも一緒に笑っていられるヒナちゃんが好きだ。僕の性格に一番合う人と一緒にいるのが幸せなんだと実感した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る