第14話 ブログを見られた
春の入学式が終わり、中学校で新しくできた友達とも少しずつ会話するようになっていた。ミナトたちの地域では3つの小学校から1つの中学校に集まってきている。そのため200人近くの新しい友達が一気に増えたので名前を覚えるだけでも大変だった。
クラスは5クラスあり、1クラス50人いる。僕は奇跡的にヒナちゃんと同じクラスだった。あとお金持ちが好きなメイちゃんもいる。
他にはヒナちゃんが女友達の中でも、とくに交流があるヒマリちゃんがいた。そして、名前が似ている別の小学校からあがってきたユメリちゃんだ。
このユメリちゃんが入学式のときに髪の毛が腰ぐらいまであって茶色い髪をしていて、顔が透き通るようにキレイな子だった。
この子は入学式のときに多くの男子生徒の心を持って行った。(笑)
クラスで一番かわいい・・・。
いや、学年で一番かわいい・・・。
いやいや、全校生徒の中で一番かわいいんじゃないか・・・・。(汗)
そんなことを言ったらヒナちゃんに怒られるので絶対言わないが・・・。
廊下ですれ違うだけで同学年の男子生徒が「何人振り向いてるんだよ!」とツッコミたくなるほど振り向いていた。
中学校自体が生徒の数が多いから全校生徒の中にはこのユメリちゃんと対等、あるいはそれ以上にキレイな子もいるのかもしれない・・・・。しかし、なんとも言いあらわせない大人びた女の子なのだ。
スタイルが良いせいか制服を着ている姿がかっこいい。まだ話しかけたことはないが他の女の子と話している会話を聞いているとなんだか受け答えが大人っぽい。
背伸びしているんじゃなくて自然に言ってる言葉がどこか大人っぽかった。
声のトーンや仕草もなんだか魅了されてしまった。
同じように小学校時代を過ごして中学校にあがったはずなのに、なんか僕たちって置いてけぼりを食らったような感じだなぁ・・・と自分たちの小学校のみんなも含めて子供だったことを実感した。
他の小学校からあがって来た子には、こんなに大人びた子がいるんだね。
さぞかしモテただろう・・・・。
そんなユメリちゃんと会話したのは中学に入ってから1ヶ月が過ぎた頃だった。
僕は中学でどう過ごすかを両親に相談して、英会話を習うことと文化部に入ることが決まっていた。運動部だとやはり時間が多く取られるのでやむを得ない選択である。
投資をメインとするなら文化部に入ることと英会話を習うことが僕にとってメリットが大きいと判断した。
文化部はなんでもよかった。英語部でも演劇部でも美術部でも・・・・。音楽やアニメはちょっと違うなぁと自分で感じた。
まずは英語部の見学に行ってみよう・・・。そのとき英語部の活動する教室にユメリちゃんが見学に来ていた。僕のほうから少し話しかけてみた。
ミナト「やぁ同じクラスのミナトです。よろしく!」
並べられたイスに隣同士で座ったから僕のほうから声をかけた。
ユメリちゃんは前を見たまま、ちょっとだけ目をこっちに向けて髪を撫でながら「ああ、同じクラスにいる人だね。ミナト君っていうんだ。なんかマジメね」と言った。
なんかお姉さんに
それにしてもいい匂いがする。香水でもつけてるのかな・・・。
話したのはそれだけだった。
足を組んで髪を撫でている姿はどこか近づきがたいオーラがあった。
英語部は女の先輩が多かった。和気あいあいとした雰囲気で楽しそうだった。
僕は女の先輩たちに囲まれていろいろ質問された。
「どこから来てるの?」とか「英語を勉強して何かするの?」とか「趣味はある?」とかね・・・。
(僕は)子供か!(笑)
まるで幼い子供に質問するようなお姉さん方の僕への扱いにちょっと戸惑った。
それに対してユメリちゃんは女の先輩たちにも物怖じせずになんだか対等に話している。中学3年生の先輩に対しても普通に話してるし初対面なのにまったく気にしていない様子だった。
ミナト「なんかスゴイ子だなぁ・・・色っぽい」(イヤ、なんでもない)
次は美術部だ。絵はそんなにうまくないけど興味はある。
絵を描くときのいろんな技法があったり、塗り方にもたくさんの方法がある。
実に興味深い。美術部の見学ではヒナちゃんがいた。
ミナト「おー!ヒナちゃん美術部に入るの?」
ヒナちゃん「おー!ミナト君ではないか!アハハッ」(爆笑)
相変わらずヒナちゃんは明るい。すごく和む。
二人で楽しく美術部を見学して「一緒に入ろっか♪」ということになった。
結局、二人で一緒に同じ部活に入るのがベストだったようだ。
それから新入生たちはそれぞれ入る部活が決まり、部活動が始まった。
ユメリちゃんは英語部に入ったようだ。何か目標でもあるのだろうか?
部活といってもそれほど本格的ではなく美術部は「用事がある人は帰ってもいいよ」と先生が言ってくれる優しい部活だった。
ただみんなほぼ部活に顔を出しているのは単に美術が好きだから、という理由らしい。毎日、1時間~2時間、絵を描いたりアート作品を作って帰る。
部活が始まってすぐにゴールデンウィークが近づいていた。ミナトは連休前ということもあって取引所のコインをいくらか売って現金にしていた。
オンラインバンクに振り込んだ現金を引き出しに行かないとな・・・。
ミナトは部活を休んで中学校に近いコンビニに立ち寄った。そこでユメリちゃんが何かを買っていた。
ミナト「やぁユメリちゃん、今日は部活休んだの?」
ユメリちゃん「あれ?ミナト君。帰るの早いね」
ミナト「ああ、ちょっと用事があってね・・・ATMに」
ユメリちゃん「へぇ学校帰りにお金降ろすんだ」
ミナト「ああ、ちょっと連休前だし出かけたいところがあるし欲しい物も、この際、買っておこうと思ってね」
ユメリちゃん「ゴールデンウィークどこか行くの?」
ミナト「そうだね、ゴールデンウィークは彼女と出かけてくるよ。あと服とか買いたいかな」
ユメリちゃん「えっ!?彼女いたの?」
ミナトは思わず彼女がいることを言ってしまった。ユメリちゃんと会話しているだけで冷静さを失っているようだ。言葉の注意力を失うほど、やっぱりこの子には見入ってしまう・・・。
ミナト「ああー・・・、ああ、いたよ。ヒナちゃんと付き合ってる。でも、学校では内緒にしてくれない?」(汗)
ユメリちゃん「いいよ。内緒にしてあげる。でも、私にもなんか買ってよ。春物の服がちょうど欲しいんだよね」
ミナト「ああ、それぐらいならいいよ」
ユメリちゃん「冗談のつもりだったんだけど・・・」(笑)
ミナト「おー・・・・おお、そうだったの?」
ダメだ。次から次にボロが出る。なんかこの子と話してると全部言っちゃいそうだ。
ユメリちゃん「まぁもしお金に余裕があるなら買ってくれてもいいんだよ♪ミ・ナ・ト君♪」
中学校に上がりたての女の子がこんなに色っぽいとか反則なんですけど・・・(超汗)
ミナト「ああ、買うよ。その代わり、みんなには内緒だよ。あと服のサイズも教えてね」
ユメリちゃんは”約束は守る”と言ってくれた。服のサイズも聞いた。
ゴールデンウィークになって仮想通貨は盛況だった。またミナトの資産は増えていた。60万円を超えた資産は80万円に到達した。
そのうち10万円は旅行費と自分の服、ヒナちゃんの服、さらにユメリちゃんの服の代金になった。(ゴールデンウィーク前に10万円はATMで降ろしている)
ゴールデンウィークが明けてからユメリちゃんに呼び出され、もう一度、部活を休んで二人で会うことになった。
さすがに中学校周辺で、買ってきた服を渡すわけにはいかないので二駅離れたところに駅とショッピングモールが一つになったデパートで会うことになった。
デパートの1階に大手のコーヒーチェーン店が展開するお店があるのでそこで待ち合わせをすることにした。コーヒーの種類も多く、ケーキもある。ソファの席はくつろぐのにピッタリだ。
どうやら先に僕のほうが着いたようだ。キャラメルマキアートとチーズケーキを注文して席に座って周りを見渡した。まだユメリちゃんの姿はない。
ユメリちゃんのために買ってきたオシャレなビニール袋に入った服を足元に置いた。
ユメリちゃんがよく買うブランドがあるらしくてネットで探すと女の子に人気がある流行の服だった。
ミナトは待ち合わせより30分も早く着いていた。時間はある・・・。
スマホで仮想通貨の情報サイトを見始めると我を忘れて見入ってしまった。
しばらくすると「待った?」とミナトに話しかけてくる声があった。そのちょっとハスキーな声はユメリちゃんだと姿を見なくてもわかった。
ミナトは顔をあげた。そこには校内で大人っぽいと思っていた女の子がさらに大人びた姿になっていた。色気は大人の女性の色気そのままだった。
シャギーチェックのライトグレーのワンピースに黒のロングブーツを履いていた。白いカバンも手に持っていて「どこのお姉さんですか?」と尋ねたくなるほどキレイだった。
ユメリちゃん「ちょっと待ってね♪私もなんか注文してくる」
ミナト「あっ・・・はい」思わず声が上ずった。
「落ち着け!ミナト。落ち着くんだ!これは秘密にしてもらうための約束で来ているんだ!」と自分に言い聞かせながらユメリちゃんが席に戻って来るのを待った。
さっきまでスマホであんなに夢中で見ていた仮想通貨の情報サイトも一瞬で内容を忘れてしまった。
今、ミナトの脳は”空”になっている。脳みそのキャパシティーオーバーだ。(許容量不足)
予期せぬ出来事というか、予想を遥かに超えたというか・・・。
ユメリちゃんが席に戻ってきた。なぜか嬉しい。
ミナト「あの・・・何頼んだの?」
ユメリちゃん「カプチーノとミル・クレープだよ」
ミナト「おいしそうだね。ハハッ」(愛想笑いにも程がある)
ユメリちゃん「ほんとに買ってきてくれたんだね?ありがとう」
ユメリちゃん「見せて見せて♥」甘えた口調に急に変わった。
ミナト「おお・・・うん、どうぞ」というと頼まれたブランドの服が入ったオシャレな袋を渡した。
ユメリちゃん「キャ♪ほんとに嬉しい。ありがとうね!ミナト君♪」
中学校で同じクラスだけど、こんなに色っぽい話し方じゃなかったぞ・・・。
彼女は一体どうなってるんだ・・・。(汗)
ミナト「じゃあ約束だからね!僕がヒナちゃんと付き合ってるのは秘密だよ」
ユメリちゃん「うん、わかってる。秘密にしとくよ」
ミナトはその一言が聞けてホッとした。別に絶対に隠さないといけないわけじゃないけど僕たちは普通にしていたいんだ。周りに気を遣われたりチャカされるのはイヤなんだ。
もしヒナちゃんと僕が付き合ってるってわかったら恋愛したことがない”キッズ(子供)”が「ここぞ!」とばかりにチャカすに違いない。そういうのは面倒だからごめんだ。
ユメリちゃんの一言で安心した僕は残りのチーズケーキを食べようとした。するとユメリちゃんが僕のフォークを持った右手を両手で包み込むように掴んだ。予想外すぎる行動に思わず僕の腰は浮いた。(苦笑)
なぜか「嬉しい」という気持ちと「恥ずかしい」という感情が沸いてきた。
お互いの目が合ったまま、僕のフォークを持った右手はチーズケーキが刺さったままユメリちゃんの口のほうに運ばれていった。
僕はまったく何も言えなかったし体がいうことをきかなかった。成すすべもなく抵抗することもできず・・・。
ユメリちゃんはチーズケーキを食べたらスッと僕の右手を離した。
ユメリちゃん「チーズケーキおいしいね♪あとね、私、ミナト君のブログ見たよ」とニコッと笑った。
ミナト「おお!ありがとう」そういうのが精いっぱいだった。
まさか手を握られるとは思っていなかったのでミナトはさらに頭の中が真っ白になった。
ユメリちゃん「投資家だったんだね!」
ミナト「そう、仮想通貨の投資をしてるんだ。それも内緒にしてくれると嬉しいんだけど・・・・」
ユメリちゃん「内緒なの?」
ミナト「うん・・・・」
ユメリちゃん「私が今、ミナト君とデートしてるのも内緒?」
ミナト「へっ!?」Σ(´∀`;)
ユメリちゃん「アハハッ冗談だよ。ほんとミナト君って面白いなぁ。もしミナト君がもっと儲かったらなんか私にも買って♪じゃあデートぐらいならしてあげるから♥」
う~ん、やっぱり色っぽい・・・じゃなかった。上から目線+おねだりなのだが・・・。でも、イヤじゃない。(汗)
不思議だがその言葉が自然に頭の中に入ってきた。
投資仲間を集めたりアフィリエイトをするために始めたブログだったがまさかユメリちゃんに見られるとは思いもしなかった・・・。(汗)
僕にとってとんでもなく予想外な子なんだなぁ・・・。ほんと性格が読めない。
ミナトは中学にあがって、いきなり自分がまったく予想もしない展開に見舞われた。
まぁそれでも悪い気はしない。不思議だけど・・・。
こうしてユメリちゃんにはミナトが投資家であることもヒナちゃんと付き合ってることも簡単にバレてしまった。
ミナトは今までこんなタイプの女の子とは出会ったことがなかった。
ミナトは少しだけユメリちゃんに好意と興味を持った。
まさか僕の右手がユメリちゃんの両手で握られるとは・・・。
その瞬間が脳裏に鮮明に焼き付いていた。
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