第10話 仮想通貨を作った少年

最近、お父さんがやたら僕に仮想通貨のことを聞いてくる。お父さんは自分のディスクトップのパソコンを使ってコインを買っている。


僕の3倍ぐらいは儲けているのに新しいコインが気になるようだ。

ICOについて話したが「う~ん、なるほど・・・・・」と言ったきり黙ってお茶をすすっていた。ちゃんと理解しているのだろうか・・・・?(汗)

新しいコインの中になんかカッコイイコインがある。ダッシュっていうコインだ。ミナトは今度ダッシュを買おうと考えていた。

タケル君のお父さんはジーキャッシュというコインが気になっているようだ。

コインが増えたことによってそれぞれ投資対象は分散されていくことになった。


新しく取引所に追加されたコインは価格がバラバラでどうしてその選び方になったのだろう?と不思議に思った。だが、きっと何か意味があるに違いない。


ビットコインはサトシ・ナカモトという方が論文を出して、それを元にしてプログラマーが集まって作った。しかし、他のコインはどうだろうか?


タケル君のお父さんがいうには「個人や会社が新しいコインを作っているんだよ」と教えてくれた。

その中でもイーサリアムを作ったのは当時18歳だった少年だとか・・・。

ロシア人の少年、ビタリック氏が作ったコインがイーサリアムだという。

ビットコインの次に時価総額を占めるイーサリアムをたった18才の少年が作った・・・。(汗)

世の中、天才っていうのは本当に存在するんだな・・・と改めて感心した。


ミナト「そんなスゴイ人物がいるんですね!」

タケル君のお父さん「いやぁミナト君も俺から見れば天才だけどね。俺が小学生の頃は鼻水垂らしてドッチボールに夢中だったよ」(笑)


ミナト「アハハッ!タケル君のお父さんもそんなときがあったんですね。今はプログラマーとして活躍してるからすごいですよ」

タケル君のお父さん「小学生でビットコインに興味を持って投資を始めたんだ。イーサリアムを作った少年より年下だしミナト君が将来そういうコインを作る可能性だってあるからね」


ミナト「いやぁ僕は買うだけですよ。きっとそんなプログラマーにはなれません。コインを買ったり情報を集めるだけでも精いっぱいですから・・・」

タケル君のお父さん「またまたご謙遜を。ミナト君の理解力や投資のセンスにはみんな一目置いてるよ」


ミナト「はぁ・・・ありがとうございます」


18才で仮想通貨を作る・・・・。一体どんな人物なのだろうか・・・。

イーサリアムについて興味が沸いたミナトはさっそくイーサリアムを調べてみた。

ブロックチェーン技術+スマートコントラクトによってビットコインのセキュリティの脆弱性を克服した仮想通貨とある。

ミナト「おお!ブロックチェーンの技術を使えるのもスゴイがさらにセキュリティを強化したのがイーサリアムだったのか、それはスゴイ!」と興奮したがセキュリティという単語で少し冷静になった。


セキュリティといえば取引所もセキュリティがいるよな・・・・。

ミナトはセキュリティという言葉で過去にあった取引所のハッキングの事件を思いだした。

確か数年前に日本にあった取引所でビットコインが盗まれる事件があった。大々的にニュースになり「ビットコインは危ない」「ハッキングの被害に遭う」と騒がれていた。

ミナト「そういえば今使っている取引所って大丈夫なのかな?」

タケル君のお父さんにスカイプで取引所のセキュリティは大丈夫なのか、今更ながらに聞いてみた。

タケル君のお父さんからの答えは「今の取引所はかなり進化しているから大丈夫」ということだった。


取引所にはオンラインで顧客と繋がっているパソコンとオフラインでコインを保管しているサーバーと分かれているのだとか・・・。

必要な分だけをオンラインのほうに取り出して、顧客のコインの大部分はオフラインのほうで管理されているという話だ。


取引所が保有しているコインもオフラインにありハッキングはあり得ない。顧客のパソコンや取引所がハッキングされても一部だけ盗まれる可能性はあるが被害は最小限で留まるだろうとタケル君のお父さんは言っていた。


ハッキングや盗難が心配ならノートパソコンのUSBにハードウォレット(仮想通貨の財布)を挿して、取引所から自分のハードウォレットに送金すればいいと教えてもらった。ハードウォレットにコインが入ったらノートパソコンからUSBを抜けばハードウォレットはオフラインになり盗まれる心配がない、ということだった。


なるほど、それならハッキングはあり得ない。

自分のパソコンよりは取引所に入れているほうが安全な気がする。でも、ハッキングが心配ならハードウォレットだな・・・・。

携帯のアプリに仮想通貨のハードウォレットがあるが携帯はいまいち危ないかな・・・。


タケル君のお父さんはお店や駅にあるWi-Fiスポットにノートパソコンや携帯をつなぐときは「十分、気をつけなさい」と忠告してくれた。

そういった場所にノートパソコンや携帯をつなぐときは「盗まれるものがない状態」でなければならないそうだ。画像や動画もハッキングの対象だとか・・・。

確かにパソコンに身分証明書、銀行口座などの画像を入れておくのはマズイかもしれないな・・・・。


芸能人のゴシップ画像とか最近テレビのニュースでちらほら見るけど、ああいう画像もどこかから漏れた画像に見える。

例えばラインとかスカイプでやりとりしたチャットの会話とか相手に送った画像とかもね・・・。


インターネットが使えることやパソコン、携帯が進化するのは嬉しいが悪用するほうも手が込んできた。気をつけないとね。

ミナトは仮想通貨の「保管」や「ハードウォレット」で検索していたら面白い画像がネット上にあるのを見つけた。

高級そうな飛行機に乗った男性が席に座ったまま手の甲を出して、その男性の手の甲にキャビンアテンダント(女性)がバーコードリーダーのような機械を当てていた。


ミナト「なんだ?これ」ちょっとコントにも見えるが・・・・。

仮想通貨で調べていて、この画像が出てくるってことは仮想通貨に関連した画像なのだろうか?

サイトに飛んでみると経済ニュースが載った情報サイトであった。

ニュースのトピックスは「体内のマイクロチップにビットコインをチャージして飛行機の決済をする」と書いてあった。

ミナト「えっ?どういうこと?体にマイクロチップ入ってるの?」

あまりにも普通の日常とかけ離れているので、すぐに理解できなかった。


北欧では体内にマイクロチップを埋めている人がいるらしい。そこにビットコインをチャージできるのだとか・・・。(汗)


ミナト「自分の体がハードウォレットになる・・・。でも、なんかそれは怖い気がする」

ミナトにとって体にマイクロチップを埋め込むというのはSF映画で散々見たような「悪いことが起こる」イメージなのだ。


体内にマイクロチップを埋め込む手術をする過程や体に機械を当てて照合する様がいかにもアンドロイドやロボットをイメージさせる。


ミナト「なんかわからないけど怖い」とここは小学生らしく行き過ぎたテクノロジーに恐怖を抱いていた。

そんな少年の心とは、うらはらに世界のお金持ちたちは「お金」を持ち歩くことを面倒に感じていた。できれば手ぶらで欲しいものが買えるのが一番いい。そう思っている。


ドバイの「2020年、ペーパーレス化計画」は自然破壊を止めるためでもありテクノロジーを使って紙幣や書類を極限までなくす試みになっている。

お金持ちは”たくさんお金を所有している”がそれを持ち歩いて買い物することが面倒なのだ。書類や紙幣をタブレット一つに収納できたら・・・。スマホだけですべてが行えたら・・・。世界旅行を手ぶらでできたら・・・。


テクノロジーの可能性は無限に広がり、お金持ちにとって都合のいい世界に変わりつつある。

正月が過ぎたある日、まだ小学生のミナトは「お金持ちの世界」を垣間見た気がした。もう一度、さっきの画像を見て武者震いしたが自分にはできそうにないと再確認した。

もし自分が大人になってもマイクロチップだけは体に埋めない。ハードウオレットでいい。そう思った。


世界では爆発的に人口が増えつつある。2011年に70億人を突破したが100億人を突破するのはあと20年~30年ぐらいだ・・・。

地球規模での人口の増加は「砂漠化」「資源の枯渇」を意味している。

紙幣や書類を減らしていくという試みが成功すれば、世界はそれを受け入れるであろう。

有形の資産として使う紙幣や貨幣は消耗品である。経年劣化するので新しいものをどんどん製造しなければならない。

地球規模での人口の増加は「使わなくてもいい資源はできるだけ減らす」という方向に舵をきる。


つまり電子マネーや仮想通貨を扱うことは世界にとって必然なのである。

まだ世界では仮想通貨のインフラ整備が始まったばかりだ。これからテクノロジーが今までの世界を凌駕する。

ミナトはそんな時代に生まれてきた投資家なのだ。少なからず彼もそんな時代の影響を受けてゆく。

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