第8話 資金調達
今年は色々あったが来年はさらに仮想通貨の投資をがんばろう。
2016年の大晦日になり、冬休みを過ごしているミナトはミカンを食べながら机に向かってネットサーフィンをしていた。
12月に入ってマイニングの会社に投資したコインがいくらか取引所のほうに送金されていた。
ミナト「ある程度、まとまった単位になったら取引所のほうに自動的に入るようになっているんだね」
ミナト「最初の設定はけっこう面倒だったけど一度それを設定すればあとは2年間、勝手にマイニングしたコインを取引所に送金してくれるんだね、これは楽だ」
数千円分ではあるがライトコインが増えていた。受け取りの履歴に数千円分のライトコインが入った履歴が残っていた。
登録しているのは取引所二つとこのジェネシスマイニングという会社だけなのでわかりやすい。
仮想通貨自体は送金や受け取りをするときに暗号化されたアドレスになっているからいまいちどこの誰から振り込まれたと知るのは容易ではなさそうだった。
マイニングでコインが増えたのを確認すると両親や友達のお父さんたちにもマイニングする会社への投資を勧めた。
ミナトが紹介したことによってアフィリエイト報酬が少しあるようだった。あとはそのサイトでマシンのハッシュパワーを買うときに割引が受けられるようになっていた。
ミナトが紹介したコードを入力するだけで割引が受けられる。実にこれはいいシステムだ、とミナトは思った。
大人でもパソコンに詳しくない人や投資をやったことがない人からすれば「なんのことかさっぱりわからない・・・」と焦ってしまうようなことをミナトは一歩ずつ前に進んでわからない問題を解決しながらできるようになっていた。
問題を理解して一つずつ解読してゆく。そして、自分がわかりやすいように順序立ててから実際にやってみる。これをずっと繰り返してきた。
同じことの反復は「安心感」や「慣れ」につながる。
ノートには半年分、ぎっしりと仮想通貨に関する知識や情報が書き込まれている。
ブログのほうも順調に更新しているので読者数は少ないながらも少しずつ増えていた。
ただそれでもわからない言葉や意味があった。
冬休みに入ってから気になった単語「ICO」だ。その説明もまったくわからなかった。
ある企業がICOすると話題になっている。そして、そのICOをすることによってビットコイン、イーサリアム、ドルなどがトークンできる。
ミナト「はて?なんだ、これは・・・」苦笑いを浮かべた。
あまりにもわからなさすぎて笑ってしまった。
仮想通貨は「投資」なんだ。コインを買う、コインを売る。それ以外には送金する、受け取るがある。
でも、このICO(クラウドセール)って会社が何かするのかな?
トークンできるってことは投資できるっぽいな・・・。しかし、それでどうなるの?
さっそく頼もしい投資仲間のタケル君のお父さんにスカイプのチャットで質問した。
タケル君のお父さんならきっとこのICOを理解できるはずだ。そして、いろいろ教えてもらいたい。
ミナトが知りたかったのは言葉の意味だけではない。理解できるだけでは満足できなかった。
せっかく仮想通貨の情報サイトで話題になっているニュースがあるんだ。ぜひやってみたいと思った。
実際に投資してみなければ何も始まらない。頭でわかっても実体験がなければ理解したことにならない。
一通りの過程を経て、「ああ、そういうことか」と納得したかったのだ。
例えそれが失敗であっても後悔はしないだろう。
最初にビットコインを買うと決めたときから自分がこれからやるのは「投資なんだ」と心のどこかで腹を決めていた。
ビットコインという言葉の響きに惹かれただけだったが実際に自分の貯めたお金で仮想通貨を買うことになったとき、少し怖い気がしていた。
自分が今まで体験したことがないことを実行するというのは誰でも怖い。未知の世界に足を踏み込むというのはとても勇気がいることだ。
頭で理解して、もし仮想通貨の投資をやらなかったらきっとそれは「わかったつもり」で終わっていたんだ。
それにマイニングで定期的に増えたコインを受け取ることができる。2年間は有効なんだ。この2年間の間に興味があることで試せることは試したい。
もし失敗しても損失はマイニングで増えたコインで補える。そう考えた。
ミナトは興味があることにのめり込み、そして、誰にも教えてもらっていないにも関わらずリスクヘッジを自然に考えだしていた。
もし自分が予想したことと違った結果になったとき、投資に失敗したとき、その会社が倒産したとき、仮想通貨の価格が下がったとき、悪いニュースがあったときなど、損失の補填ができるようにリスクヘッジは必要である。
これは投資に慣れた熟練の投資家が当たり前のようにやることであった。
ミナトは興味があるからこそ自然にそれを意識するようになっていた。
彼は小学生にして投資家の才能を開花しつつあった。
タケル君のお父さんからしばらくしてチャットの返事があった。
タケル君のお父さん「ミナト君、すごいね!よくその情報を見つけたね。そのICOっていうのはクラウドセールというらしいよ。いわゆる資金調達だよ」
ミナト「資金調達!?」
予想外の単語が出てきたのでミナトは驚いた。どうしてビットコインやイーサリアム、ドルを投資することが資金調達になるのだろうか・・・?
タケル君のお父さん「本当なら鍋でもつつきながら説明したいところだけど俺も年末年始は忙しいからチャットで許してね」
タケル君のお父さんはスカイプのチャットで長文でミナトにもわかるように説明をしてくれた。
タケル君のお父さん「企業が独自の仮想通貨を発行する。その新しいコインをビットコインやイーサリアム、ドルを投資してくれる人たちに「販売する」と考えるとわかりやすいかなぁ」
タケル君のお父さん「ビットコイン、イーサリアム、ドルを投資して投資家たちは新しいコインを手に入れるんだ。だが、その新しいコインには「価値」はほとんどないよ。取引所で扱ってくれる日が決まって、新しいコインの取り扱いが開始したときにそのコインの価格が高騰すれば投資家たちは儲けることができる。しかし、新しいコインが取引所で扱われても価格が上がらなかったら大損っていうことになるね」
ミナト「なるほど・・・・・。ギャンブル性の高い投資ですね」
タケル君のお父さん「そうだね。ギャンブルだね!ほとんど投機に近いかな」
ミナト「ありがとうございました!わかりやすかったです」
タケル君のお父さん「いえいえ、どういたしまして。まさかミナト君にICOまで質問されるとは思わなかったよ。ハハハッ」(爆笑)
ミナト「(〃艸〃)ムフッ」
最後はミナトも絵文字で「笑い」を返してチャットは終了した。
企業が資金調達のためにICOするのか、なるほど。
トークンっていうのがビットコインやイーサリアム、ドルと引き換えに新しいコインをもらうことだったんだね。
その企業のコインが取引所で扱われて人気が出れば利益になる、それ以外には使い道はないコインってことかな・・・。
でも、もう一つ疑問がある。その企業がやる事業が成功したらどうなるんだろう?
その企業がやることとコインは別なのかな・・・。でも、そういうの面白そうだなぁ。
投資できる金額が安くできるところに投資してみたいなぁ。
さっそくICOを発表した会社を探し出した。
海外の会社でソーラーパネルや風力発電を使ってマイニングする事業を発足させるところがあった。海外で広大な敷地があるようだった。
ネットの画像で見る限り、あたり一面、山だらけだ。それにコンテナに冷却装置を取り付けていてコンテナの内部はパソコンのようなものがズラリと並んでいた。
ミナトはこのマイニングする会社を気に入った。
自然エネルギーを使っていることと会社のロゴがかっこよかったところが気に入ったようだ。社員と思われる人たちが着た制服もなんだかSF映画に出てくる登場人物のように見えてかっこよかった。
ミナト「よし!ICOする会社に投資して新しいコインをもらおう」
新しいコインにも少し興味があった。もし取引所で扱われても価格が低いままであれば売らずに持っておこうと考えた。
彼にとって仮想通貨は大切なコレクションでもあった。
投資でもあり、売って利益を得るものでもあり、コレクションでもある。
ミナトはますます仮想通貨の魅力にのめり込んでいった。
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