第6話 需要
すっかり外は寒くなった。日が沈むのも早い。
12月になり食卓ではお鍋を食べることが多くなった。
ミナトは友達のヒナちゃんやタケル君の家に呼ばれてお鍋を食べることが増えていた。
ミナトが投資した10万円は仮想通貨の高騰で30万円を超える資産となった。
ミナトの影響で投資を始めたヒナちゃんのお父さんやタケル君のお父さんはその数倍の利益を得ていた。
大人たちが笑顔で迎えてくれる投資家の小学生になっていた。
ミナトには実感がなく、そして、友達と一緒にいられることが幸せだった。
もちろん両親もミナトの影響で投資を始めて数倍の利益を得た。
ミナトは学校の勉強は苦手だったが”投資”に関する情報は欠かさず勉強していた。
大人たちには”見えない”未来の形がなんとなくミナトには見えるようになっていた。
大人が思っている以上に感性は豊かであり、そして、今は存在していないものを意識することさえあった。
仮想通貨の情報サイトを見ているときにミナトはドバイの2020年のペーパーレス化というのが気になった。
ドバイでは最新のテクノロジーが多く導入されている。街ゆく人々はほとんど携帯で決済することが多く、お金を持ち歩かないこともわかった。
携帯決済、電子マネーが主流なのだ。ここに仮想通貨が加わっても何も不思議なことではない。
空飛ぶドローンタクシーをサービス展開するというニュースも相まって、「この決済方法はなんだろうか?」と考えるようになっていた。
仮想通貨は”これから需要が増える”そう考えている。
投資の勉強をするためにYoutubeで投資に関する動画を観たり、仮想通貨に関する動画を勉強するようになった。
投資を始めた頃は、ただビットコインが買いたいだけ、欲しいだけだったのだが勉強するにつれてチャートの見方も覚え始めた。
「3分」「5分」「15分」「30分」「6時間」「1日」などチャートの分析方法は投資スタイルに合わせて見方を変えられるようになっていた。
1年で見れば仮想通貨は右肩上がりでありミナトの投資したタイミングはちょうどこれから上がっていく寸前のところだったのだ。
資本主義は民間企業が主体となっている。そして、需要があるものが供給され、需要がないものは自然淘汰される。
このことを理解したミナトは仮想通貨の可能性、需要について考えることが増えた。
お父さんには「お前は投資の才能があるのかもしれない。株や為替も勉強したらどうだ?」と勧められた。
ボクシングでいうラッキーパンチが当たっただけだと本人は思っているが大人たちの評価は思いのほか高かった。
最近、お母さんの服がコロコロ変わるのも気になる。ちょっと派手になったんじゃないか?
ミナトは自分が投資したお金が増えたのはそのまま保有することにした。親からのお小遣いを少しずつ使うようにしている。
お小遣いで欲しいものを買って、残ったお小遣いはオンラインバンクに預けている。
自分の資産が3倍になったのでお小遣いで仮想通貨を買うというのは必要がないような気がしていた。それにコインの価格が全体的に上がっているので今から買い足すのはもったいない気がする・・・・という気持ちもあった。
お母さんには確定申告について少し説明してもらった。投資に対して利益が出たとき、一定金額を超えたときは確定申告が必要らしい。
詳しくわからないがお母さんがそのときは一緒にやってくれるそうだ。
ミナトは海外の取引所にも目を向けていた。アメリカの大手の取引所ポロニエックスだ。ここでは実に多くの仮想通貨が取り扱われている。
その数は100種類ほどあった。そのコインのほとんどが1円未満になっている。
ミナト「どうしてこんなに安いコインが多いんだろう?」ふと疑問に思った。
もしかしたら将来、この中にもビットコインのように高くなるコインがあるんじゃないか・・・・。そう予想したが手を出すことはできない。
コインは一覧表示で見ることができるがサイト自体は英語なのだ。
書いている意味がわからない。
仮想通貨の情報サイトではたまにこの取引所で取り扱いがなくなったコインの話も掲載されている。コインが消滅することに不安を覚えた。
投資に関する情報を集め、自分にできることを考えていた。
あまり難しいことはできないし仮想通貨で何か始めたい。株や為替はまったくわからないし興味がなかった。
ミナトが最初に気に入ったのは”ビットコイン”という言葉の響きだったのだから・・・。
しばらくネットサーフィンしていて「マイニング」という言葉を思い出した。
ミナト「そうだ!マイニングする会社があるってヒナちゃんが言ってたっけ・・・・」
マイニングで調べてみるとジェネシスマイニングという会社が長く続いていると書いてあった。
海外のサイトなのに「日本語」にできた。
ミナト「このサイトではいろんな国の言葉に翻訳できるんだね!便利だ」
いきなりサイトを開いてみたがいまいち意味がわからなかった。
とりあえずマイニングの仕組みから知る必要がありそうだ。
ミナトはマイニングの仕組みについて勉強を始めた。
ミナト「マイニングをする会社があるってことはそこに投資するんだね。でも、投資したお金って一体なにに使うのかな?」そこが疑問だった。
マイニングの仕組みを解説したサイトでは、マイニング事業をしている会社が使っているマシンのハッシュパワーを購入してマイニングが可能となると書いてあった。
その期間は2年契約だ。つまり投資した金額に応じてマシンのパワーが割り当てられてその期間は2年間は有効だという内容であった。
ミナト「2年もあるのか・・・すごいな。この2年の間はずっとマイニングしてくれるんだ・・・・」
なんだかすごい投資先を見つけたようなドキドキ感があった。またミナトの心は高鳴ってきた。
資金には余裕がある。資金の一部を試しにマイニングしている会社に投資してみよう。投資するのはビットコイン、ライトコイン、ダッシュ、ドージコインとあった。
ビットコインとライトコインは持っている。そのどちらかを送金してパワーをもらえばよさそうだった。
登録は簡単だった。細かな手続きは存在せず。メールアドレスとパスワードを入力して登録するだけだった。
コインチェックやビットフライヤーで使っているグーグルの認証システムがこのジェネシスマイニングも使っていた。
二段階認証がありログインするときに6桁の数字を入力しなければログインできないようになっている。
登録を済ませて受取先のコインのアドレスも入力した。
コインチェックのほうで送り先にジェネシスマイニングを追加登録して、ライトコインで5万円分を投資してみた。
反映されるのに多少時間がかかったがジェネシスマイニングのほうにライトコインの投資が完了した。
ビットコイン、イーサリアム、ライトコイン、ジーキャッシュ、リップル、ダッシュなどがマイニング可能のようだ。
ライトコインを投資したからライトコインをマイニングしよう!と安易な気持ちでライトコインにミナトはハッシュパワーをすべて割り当てた。
ミナト「よし!マイニングスタートだ。これから2年間でどれだけ増えるのか楽しみにしてよっと♪」
けっこう楽天的な性格なのかもしれない。遊びの延長のようにも見える。しかし、資産に余裕があるので失敗を恐れていない。
ミナトにとって5万円は大金だ。大人でいう100万円使うのと変わらないほどの大金なのだ。しかし、資産が3倍になった今は”投資すればお金が増える”ということを理解している。理解するだけではなく実体験として経験しているのだ。
自転車に乗れるまでに何度も転んで学んだようにミナトは今、何度もわからないことに直面しながらも投資を学んでいる最中なのだ。
恐れることよりも自転車に乗りたい一心でがんばったあの時のように・・・。投資をできるようになりたい、うまくなりたいと思う気持ちが失敗するという恐怖を打ち消している。
もしこれがうまくいったらお父さんやお母さん、ヒナちゃんのお父さんやタケル君のお父さん、タケル君にも情報を共有しよう。ミナトはそう考えた。
もはや彼にとって友達の親たちは投資仲間なのだ。お鍋をごちそうしてくれる大切な投資仲間になっていた。
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