第5話 高騰

ミナトは仮想通貨のことを知ることになってからブログをやり始めた。自分がどういった経路で今の現状に至ったかを記している。

まだ読者は数人しかいない。一日のアクセスは3~10ぐらいだ。

文章も間違っていたり説明がめちゃくちゃなのでムリもない。

小学生なりに一生懸命、仮想通貨のことを日記の代わりにブログに書いている。


ミナトがブログをやり始めた理由は二つある。

一つは仮想通貨のことを多くの人に知ってもらいたいという理由であり、覚えた知識と新しい情報をブログに載せて忘れないようにするためだった。

そして、もう一つの理由は取引所にはアフィリエイト機能があることを知ったからだ。

このアフィリエイトは取引所から割り当てられたアカウントごとにURLが別々になっている。一人ひとりURLが違うのだ。

ミナトのURLを紹介すればミナトに紹介料が入る仕組みになっていることを知ったのだ。

【取引所】

コインチェック https://coincheck.com/?c=1lIEwOliEyI

ビットフライヤー https://bitflyer.jp?bf=gvultuk4


この二つの取引所のURLを多くの人に見てもらって登録・投資があればミナトに報酬が入る仕組みになっている。

ブログは無料で始められるし小学生でも少しやり方を覚えれば簡単に始められた。


もしブログから登録や投資があればミナトはお小遣いから投資しなくてもアフィリエイト報酬から仮想通貨を買うことができる。

そんなにうまくいくとは思っていないがそれとは別にもう一つ目標を立てることにした。


それは投資仲間を見つけることだ。

小学生の彼は自分だけの力では到底、大人や投資家には及ばないことを知っていた。

彼ができるだけリスクを回避してうまく投資を続けていくためには協力してくれるサポーターが必要だと考えたのだ。

仮想通貨の情報サイトを見ていると時価でいくらという言葉がよく出てくる。その言葉の意味がわからなかったのでお父さんに聞いたら「それはみんなが買ったり売ったりしていてしょっちゅう値段が動くんだよ。時価でいくらっていうのは”今”いくらっていう意味に近いかな」と教えてくれた。


なるほど!今日は1BTCが5万1千円だけど明日は1BTCが5万3千円になっているかもしれないということか。

確かに取引所で保有しているコインの価格はコロコロ変わるし最初に投資した10万円がなぜか12万円になっている。

それが時価っていう言葉の意味だったんだね。


ミナトが仮想通貨の投資を始めてから二カ月が過ぎた。情報サイトでは新しい情報がどんどん更新されていくので毎日見ていないと追いつかない。

それにしてもこんなに頻繁に情報が更新されるものなのかな?

ミナトは不思議に思っていた。

確かに仮想通貨は将来、たくさんの国で使われるだろうとヒナちゃんのお父さんやタケル君のお父さんが言っていた。でも、ビットコインを売り買いすることや買い物できること以外に何かあるのかな?


そのたくさんの情報はいろんな国で取引所が開設されていることやビットコイン決済を導入したというニュースが多かった。

あとは「重い」とか「遅い」とかもたまに出てくる。

仮想通貨でパソコンの画面にしか存在しないビットコインが「重い」「遅い」ってなんだろう?


ミナトは相変わらず頭の中はハテナマークだらけだった。

またタケル君に頼んでタケル君のお父さんにこの意味を聞いてもらおう。

ブログのほうでも投資仲間が見つかるといいなぁ。

来年は中学生になる。中学生になったら部活をやったり勉強もハードになってくる。

ブログを更新する時間は確保したいなぁ。

またヒナちゃんと同じクラスになれたらいいんだけど・・・・。

ミナトは中学生になることに不安があった。


少しずつではあるが仮想通貨の高騰が始まっていた。

世界が同時に仮想通貨ビットコインに注目しつつあったのだ。

それは良い意味でも注目されているし悪い意味でも注目が集まっていたのだった。


生暖かい秋の風から肌を刺すような冷たい風に変わり、そろそろ冬の支度をしないといけないとみんなが寒さを実感しはじめた頃。


仮想通貨の価格が軒並み高騰し始めた。

ミナトは学校から帰って来るといつものようにノートパソコンの電源ボタンを押した。

パソコンが立ち上がるとさっそく取引所にログインした。

小学生の間に貯めた10万円がこの前12万円になっていて喜んでいたが今、取引所にログインしてみると・・・・なんと!15万円になっていた。


ミナト「おお!増えてる!でも、なんで!?」

ミナト「あっ!全体的に時価が上がってる」

そう、取引所で扱われているコインすべてが同時に上がっているのだった。


ミナト「これいくらか売ってもいいのかな?現金に戻してなんか欲しいもの買おうかな・・・どうしよう」

ログイン画面を開いている間も少しずつではあるがすべてのコインの価格が上がっていた。

ミナト「うわぁどんどん増えてる。なんかわからないけどコインの価格が上がっていく」

パソコンのスカイプにチャットが一件入った。タケル君からだった。


タケル君「ミナト君。仮想通貨の価格上がってるらしいね」

ミナト「そう!今めっちゃ上がってるよ」スカイプのチャットで返事を返した。


タケル君「ミナト君のおかげでうちのお父さんが儲かったって喜んでるよ。ありがとう」

ミナト「そうだね!今、すごい勢いでお金が増えてる。僕も驚いてるんだ」


ミナト「僕のほうこそタケル君のお父さんに感謝してるよ。ノートパソコンがないと仮想通貨が買えなかったからね」

タケル君「僕もちょっと仮想通貨に興味が出てきたから自分のパソコンで買ってみるよ。またいい情報あったら教えてね」


ミナト「わかった。いい情報あったらすぐにスカイプでチャット送るよ」


予期せぬ仮想通貨の高騰にミナトは驚きを隠せなかった。

今までの人生で感じたことがなかった感覚になり興奮冷めやらぬ状態だった。


この意味のわからない仮想通貨の高騰はミナトにとって夢のような出来事だった。

親にもらったお小遣いが勝手に増えていく。一週間前までは12万円だった資産が今は15万円になった。

これはひょっとして凄いんじゃないか!とミナトは興奮していた。


今回の高騰もやはり仮想通貨の情報サイトにいち早く掲載された。

ミナトにはさっぱりわからなかったが夕食のときに両親がわかりやすく教えてくれた。

世界では負債を抱えた国が増えていた。負債を抱えた国と社会情勢が悪い国。さらにそろそろ戦争を始めそうな国があった。

内戦が続いていたり自国がいろんな周辺諸国からお金を借りて債務不履行になりそうな国など、問題がある国では富裕層の人々が自分たちの資産を守るために投資先を探していたのだった。

世界の富裕層、彼らは貴金属も不動産も会社もビルもたくさん所有している。しかし、自国のお金に価値がなくなれば途端にすべての有形の資産を売却しなければならなくなる。

せっかく貯めたお金、所有している有形の資産を失うわけにはいかない。


彼らからすれば国・政府がやること、戦争、他国からの借金は疎ましかった。

戦争になれば銀行に預けてある資産の凍結だったり、国の借金により紙幣価値が下がることになれば自分たちにも被害が被る。そのため常に安全な投資先を探しているのだ。

そんな世界の富裕層たちが目につけたのが仮想通貨・ビットコインである。

ビットコインは世界で同時に取引が活性化していた。そして、取引所がある国では自国の通貨から仮想通貨を買うことができる。

すなわち取引所がある国ならどこでも換金できるということになる。

円でビットコインを買って、他の国の取引所で仮想通貨からドルにすることだって可能なのだ。

それがユーロであろうがウォンであろうが取引所を開設しておけばその国の通貨に両替できる。

取引所から取引所に仮想通貨を送金して、自分が移住した国で両替すればいい。

そう、富裕層の彼らは「これほど便利な資産はない」と思ったのだ。

自国の紙幣価値が下がっても仮想通貨に影響があるわけではない。それに仮想通貨の送金は一日足らずでできるのだ。


貴金属や紙幣をたくさん持ち歩くには限界があるし、いくつもアタッシュケースを用意しなければならない。しかし、仮想通貨ならばパソコン端末のハードウォレットにビットコインを入れて持ち歩けるのだ。それもポケットに収まるサイズでビットコインをいくら入れていようとも・・・・。


まるで近未来のような”資産”だが実際に仮想通貨は存在している。そして、それらのことが実際にできるのだ。


この高騰がきっかけとなりミナトの周りの大人たちは仮想通貨の取引所にアカウントを開設して仮想通貨を買うようになった。

ミナトの両親やタケル君のお父さん、ヒナちゃんのお父さんはいち早く始めていた。学校や主婦の会話から噂が噂を呼び、小学生の投資家がいると囁かれるようになっていた。






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