第2話 スペック

まずパソコンを選ぶときのコツはなんだろう?

夕食が終わって20時過ぎにミナトが机に向かって考えていた。

スマホで「パソコン」「スペック」で検索をしてみた。

※スマホ←スマートフォン、タッチパネルの携帯電話


すると初心者向けのパソコンを解説したサイトがいくつも検索ワードに引っかかった。

ミナト「うわぁ、たくさん初心者向けのサイトがある。やっぱり僕と同じ悩みを持っている人は多いんだね」目を丸くしながら一番上のサイトを開いた。

「OS」「CPU」「メモリー」「ハードディスク」「SSD」「グラフィック」の項目があった。

ミナトは一つずつ項目を読んでいった。さらにわからない単語をその言葉で検索しながらノートにメモをした。

ミナト「そうか・・・・なるほど、オペレーションシステムは最新にしたいな」とアゴに拳にした手を当ててつぶやいた。

ミナト「肝心なのはCPUだ。メモリーや他の部品も大切だけどCPUを飛びきり良いやつにすれば、なんとかなるんじゃないか・・・・」

「仮想通貨」だけではなく「パソコン」で検索しても出てきた解説は横文字だらけで少し困惑ぎみであった。

ミナト「それにしても横文字だらけだな。とても日本人向けの解説には見えないな」

ため息とも微笑みともとれる笑みを浮かべた。

ミナトはベッドに仰向けになり、頭の後ろに両手を組んで天井を眺めた。

ミナト「明日、タケル君から良い情報あるといいなぁ」

いろいろ考えていると眠くなって寝てしまった。

ウトウトと眠る・・・・。


次の日、学校の昼休みに昼食が終わったタケル君がミナトのクラスに来た。

タケル君「ミナト君、お父さんにパソコンのこと聞いてきたよ」

ミナト「ほんと?お父さんはどんなパソコンがいいって言ってた?」


タケル君「お父さんが使ってる中古のノートパソコンが一つ余ってるからそれをあげてもいいよ、だって」

ミナト「えっ!?ほんと?くれるの」ミナトは喜んだ。


タケル君「ああ、お父さんがいいって言ってるからね。僕は自分が使ってるパソコンが気に入ってるし違うメーカーのパソコンには興味ないんだ」

ミナト「じゃあタケル君にいくらかパソコン代を払うよ」


タケル君「え!?そんなのいいよ。そのお金でビットコイン買いなよ」

ミナト「マジ!?ありがとう。嬉しい。ビットコイン買ってみる」


タケル君「じゃあ今週の土曜日にミナト君の家にノートパソコン持っていくね」

ミナト「ありがとう。ほんと感謝してるよ」


ミナトは心の高鳴りを抑えられず帰り道でヒナちゃんにそのことを一気に話した。

ヒナちゃん「ああ、そうなんだね。よかったね!ミナト君」

ヒナちゃんはいつも笑顔だ。


ミナト「ほんと嬉しい。マジでありがとう!ヒナちゃんが欲しいものあったら僕がネットで買ってあげるよ!」

ヒナちゃん「ええ、ほんと?私、ヘアピンとセーターほしい」


ミナト「おう!それぐらい買ってあげるよ」

ミナトは嬉しさのあまり気前のいいことを言っている。


ヒナちゃん「うわー!じゃあ楽しみに待ってるね」

ヒナちゃんは両手を胸のあたりで合わせてニッコリ笑っている。

ミナト「ヘアピンとセーターいいやつ探してみるよ」


ヒナちゃん「うん、ヘアピンは白・黒がいいの。セーターは明るい色がいい」

ミナト「わかった。今週の土曜日にタケル君がノートパソコンを持ってきてくれるからノートパソコンが使えるようになったらすぐにヒナちゃんの欲しいものをゲットするよ」

ヒナちゃん「ありがとう!じゃあね。ミナト君。楽しみに待ってるよ」

ヒナちゃんはミナトの自宅を通り過ぎて手を振りながら帰っていった。

ミナトはヒナちゃんを見送るように手を振って玄関のドアを開けた。


家路についたミナトは部屋にカバンを置いてリビングでくつろいだ。

ソファに仰向けになって足を組んでスマホを見ていた。


ミナト「ノートパソコンは手に入った。家には光回線、Wi-Fiの環境はある。あとは仮想通貨の取引所だ」

スマホで「仮想通貨」「取引所」を検索するとたくさんの仮想通貨の取引所が検索に引っかかった。

ミナト「どれがいいんだ?たくさんありすぎてわからないぞ」

取引所がたくさんあるがどれもこれも同じに見える。

しばらくスマホをスクロールしていると「コインの種類がたくさんある」という文字が目に入った。


ミナト「これだ!」URLをクリックしてサイトのページを開いた。

ミナトはビットコインしか知らなかったのでたくさん仮想通貨があることがわかって驚いた。

ミナト「うわー、こんなにたくさん種類があるんだね」思わず声が出た。

ミナト「それにしてもこんなにたくさん種類があるのにCMではビットコインの単語しか聞いたことがないぞ」

ミナト「じゃあこのコインチェックっていうところでアカウントを開設しよう。あとCMバンバン流してるビットフライヤーも開設したいなぁ」


ミナトは二つの取引所のアカウントを開設をすることにした。

夕食のときにお父さんとお母さんに相談するために説明しやすくするためにプレゼンテーションを考え始めた。

時間が経つのを忘れて一通りの段取りができたミナトは期待して両親の帰りを待った。プレゼンテーション用にノートに書いていた文章もほとんど覚えている。


夕食時、お父さんにタケル君のお父さんから中古のノートパソコンがもらえることを伝えた。そして、ミナトのプレゼンテーションが始まった。


夕食を食べながらお父さんとお母さんはミナトのプレゼンテーションを聴き終えた。

ミナト「お父さん、中古のノートパソコンで使い方に慣れてから新しいやつ買ってくれる?」

お父さん「パソコンの使い方をマスターしたらそのときは買ってあげるよ」


お父さん「せっかくのタケル君のお父さんからのご厚意だ。ありがたく使わせてもらおう。タケル君には何かお前からお返しをしてあげなさい。友達は大切にしないとな」

ミナト「ああ、僕もタケル君に何かできることがあればいいなぁと思ってるよ」

お父さん「ミナトがノートパソコンを使えるようになったらお父さんが新しいやつを買ってあげよう。その時まで楽しみに待っていなさい」


お父さん「それと新しいノートパソコンを買うときはお父さんが厳選に厳選を重ねてから買うからミナトはそれまでにスキルをあげておくんだよ」


お母さん「それは楽しみね!ね、ミナト」

ミナト「うん、とっても楽しみだよ。お父さんが選んでくれるんだったら安心して任せられる」


お父さん「ミナトがさっきの説明で言っていた取引所は保護者の同意があれば未成年でも開設できるんだね?書類関係の提出はお母さんに手伝ってもらいなさい。わからないことがあれば俺に聞けばいい」

ミナト「わかった。わからないことがあればまた聞くよ。お母さん手伝ってね」


お母さん「はいはい、わかったわ。学校の勉強より自分に興味があることをがんばればいいわ。お父さんもお母さんもあなたを応援してるからね」

ミナト「ありがとう、お母さん」


愛情のある家庭で育っていることを実感しているミナトは”将来、両親のために自分が何か大きなことをやりたい”と思っていた。


それは学校の勉強では得られない”何か”である。


まだ小学生の彼には投資や時価という意味もわからず、まして通貨に付加価値がついたもの、プログラマーが作り出した仮想上でしか存在しない暗号通貨がビットコインであることなど理解が難しかった。


土曜日、お昼過ぎにタケル君がミナトの家に遊びに来た。

玄関のインターフォンが鳴るとミナトは走ってドアを開けに行った。


ミナト「タケル君!待ってたよー」

タケル君「こんにちは、ミナト君はいつも元気だね」

タケル君は紙袋をミナトの目の前につき出して「持ってきたよ」と言った。


ミナト「おお!それがお父さんのノートパソコンだね!ありがとう」

タケル君の紙袋を受け取った。


ミナト「タケル君、あがってよ。カフェとケーキ用意してるからさぁ」

タケル君「ほんと?ありがとう。じゃあ一緒にノートパソコンの設定しながらケーキ食べよう」

ミナト「うん、そうしてくれると助かるよ」


ミナトはタケル君に教えてもらいながらノートパソコンの設定をした。

Wi-Fiでインターネットの接続が完了して、ブラウザを開いた。


タケル君「とりあえずブラウザを開いた最初のページはグーグルでいいんじゃない?」

ミナト「そうだね、よく検索するからグーグルにしとくよ」

タケル君「あと取引所とニュースを見るサイトをお気に入りバーに追加しとくね」

ミナト「うん、ありがとう。そうやってお気に入りバーに必要なサイトを並べられるんだね」

タケル君「そうだよ、こうやって並べておくと次からアクセスが簡単だからね」

ミナト「ほうほう、なるほどー」


二人はケーキを食べながら楽しそうにインターネットにつながったパソコンの画面を見ていた。


15インチのノートパソコンでCPU、メモリー、ハードディスクはそれなりだった。

仮想通貨の取引ではそれほど最新のノートパソコンでなくても十分に仮想通貨を買うことが可能だった。

それがわかった上でタケル君のお父さんは中古のノートパソコンをミナトにプレゼントしたのだった。


タケル君が帰った夜、ミナトはお母さんと一緒に取引所のアカウントの開設をするために必要な書類の話をしていた。

お母さんも仮想通貨や取引所のことは詳しくわかっていなかった。

ミナトとお母さんは悪戦苦闘しながら書類を揃えた。


二週間後、めでたく小学生の投資家が誕生した。

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