クリプトカレンシーボーイ

hiroumi

第1話 目覚め

ある日の朝、僕はいつも通り目を覚まして顔を洗った。

食卓には母が作ってくれたフレンチトーストと目玉焼き・ベーコンがある。

電気ケトルに水を入れてスイッチを入れた。

袋に入ったカフェの粉をコーヒーカップに入れてイスに座ってテレビをつけた。


テレビ「ビットコインの取り扱いなら・・・」と仮想通貨のCMが流れていた。

ミナトはなんとなく「ビットコイン」という言葉の響きを気に入っていた。


ただそれが一体なんなのか、まったくわからなかったが・・・。


電気ケトルに入れた水が沸いたのでコーヒーカップにお湯を注いだ。

朝食を済ませて学校に行く準備ができた。あとは幼馴染のヒナちゃんが迎えに来るのを待つだけだ。


親から渡されているスマートフォンを手に持つとミナトは「そうだ、ビットコインを検索してみよう・・・」とひらめいた。


ミナト「英語わからないなぁ・・・。カタカナでもいいかな?」


ミナトは”ビットコイン”と検索窓に入力して「検索」ボタンを押した。

するとそこには「ビットコインはサトシ・ナカモトという人物によって投稿された論文に基づき2009年に運用が開始された」と書いてあった。


その後の文章はまるで英語なのか日本語なのかわからないほど横文字の羅列が続いている。

ミナト「う~ん、なんだかわからないなぁ。ただコインっていうぐらいなんだから使えるのかな?」


文章をスクロールしていくとそこに「通貨」の項目があって目が止まった。

ミナト「ああ、やっぱりお金なんだね」とつぶやいて、なんだか嬉しそうに微笑んだ。

ピンポーン、インターフォンが鳴った。幼馴染のヒナちゃんが迎えに来た。

ミナトはテレビを消して、カバンを肩にかけて急いで玄関に出た。

ミナト「おはよーヒナちゃん!」元気に声をかけた。

ヒナちゃん「おはよー、ミナト君!」と言ってニコっと笑った。

二人は玄関を出て学校に向かった。


ミナトはヒナちゃんに質問をした。

ミナト「ヒナちゃん、ビットコインって知ってる?」

ヒナちゃん「ああ、それ最近よくCMでやってるね。知ってるよ」


ミナト「ビットコインってどうやって手に入れるの?」

ヒナちゃん「お父さんに聞いたらパソコンとインターネットがあったら買えるって言ってたよ」


ヒナちゃん「私もよくわからないけど仮想通貨っていって実際には存在しないとかなんとか・・・」と言いながら困り顔になった。

ミナト「ふーん、なるほど。仮想通貨っていうんだね」とうなづいた。


ミナト「ビットコインってお金らしいね。だったら買い物とか何かに使えるんじゃないかなぁと思ったんだけど?」

ヒナちゃん「何かって何よ?」ヒナちゃんは笑った。


ミナト「いや・・・わからないけどさぁ。僕の直感でビットコインを買ったら良いことありそうだなぁと思ったんだよ」ミナトも笑った。

ヒナちゃん「じゃあタケル君に聞いてみたら?詳しいでしょ。そういうの」


ミナト「そうなの?タケル君ってビットコイン買ってるの?」

ヒナちゃん「大人じゃないんだから買ってるわけないでしょ」

ヒナちゃんはクスクス笑っている。


ヒナちゃん「タケル君ってお父さんがプログラマーだからよくパソコン使ってるし、お父さんに色々教えてもらってるからパソコンとかインターネット詳しいはずよ」

ミナト「そうなんだ!それはぜひ聞きたい。教えてくれてありがとう、ヒナちゃん」


二人は学校について朝礼が始まった。


授業が始まってもミナトは上の空だった。頭からビットコインのことが離れない。

昼休みになったときにミナトはタケル君に声をかけた。


ミナト「タケル君、ビットコインってわかる?」

タケル君「わかるよ。知ってるけどなんか難しいけどね」


ミナト「おお!知ってるんだ。教えてよ」ミナトの目が輝いた。

タケル君「いいよ、教えてあげる。ただビットコインを理解してどうするの?」


ミナト「買ってみたいんだよ。ビットコイン」

タケル君「えっ!?買うの?」タケル君は驚いた顔をした。


ミナト「きっと将来、なんかの役に立つと思うんだけど・・・・」

タケル君「確かに将来はこういった仮想通貨が主流になるってお父さんがいってたけどね・・・・」


ミナト「ほうほう、それでそれで・・・」

タケル君「もし買うならパソコンとインターネットが必要だよ」


タケル君「あとビットコインを取り扱ってる取引所にアカウントを開設する必要がある」

ミナト「ア・・・・・・カウントって何?」

タケル君「アとカウントのあいだにずいぶん間があったね」タケル君は笑った。


タケル君「アカウントっていうのは銀行口座のようなものだよ。一人ひとりが別々のアカウントを持っているんだ」

ミナト「なるほど!まずアカウントを作ろう」


タケル君「僕たちはまだ小学生だから保護者の同意が必要かもしれないね。もしくはお父さんにアカウントを作ってもらってそれを使わせてもらえばいいんじゃない?」

タケル君「買うって言ってもそんなにめちゃくちゃ買えるわけでもないしお小遣いでちょっと買うだけでしょ?」

ミナト「そうだね、お父さんに頼んで作ってもらうよ。ありがとう、タケル君。」


ミナト「またわからないことあったらタケル君に相談するよ。パソコンも貯金で買いたいからパソコンのこともまた詳しく教えてね!」

タケル君「ああ、わかった。パソコンのことなら僕のお父さんが詳しいからいつでも協力するよ」


ミナトは帰り道、ヒナちゃんに嬉しそうにタケル君に聞いた情報を話していた。


ヒナちゃん「そうなんだね、なんか私でも買えるような気がしてきた」

ミナト「ヒナちゃんもアカウント作ったら買えるよ!将来、役に立つと思うんだ」


ヒナちゃん「買える気がしてきたけど・・・・でも、使い道がわからないからねー」

ヒナちゃん「だってさ、私たちが買うものってお札とか小銭で買えちゃうじゃん」


ミナト「いや・・・そういう買い物とは違う何かがあるような気がするんだけど・・・・」

ミナト「うまく説明できないけどビットコインじゃなきゃダメなことってあるんじゃない?」

ヒナちゃん「ええっ!?ビットコインじゃないとダメなこと?」ヒナちゃんは驚いた。


ミナト「そう、きっとそういう何かがあるんだ」ミナトは真顔だった。

ヒナちゃん「たまにミナト君って発想が飛んでるよね。そういうところが面白んだけど」ヒナちゃんは笑った。


ミナト「ええ、そうかな?自分ではわからないんだけど」ミナトも笑った。


ミナトは帰宅して、夕食の時間のときに両親にビットコインのことを話した。


ミナト「お父さん、お母さん、ビットコインって知ってる?」

お父さん「ああ、知ってるよ。ミナトはビットコインに興味があるのかい?」

食卓で新聞を広げて見ているお父さんが新聞越しに返事をした。


ミナト「うん、そうなんだ。ビットコインが欲しいんだけど・・・・」

お父さん「ハハッ、ミナトはビットコインが欲しいのか」お父さんは笑った。


お父さん「どうやって買うんだい?」

ミナト「アカウントを作って買おうと思うんだけど・・・・」


お父さん「取引所に口座を開設することも知ってたんだね。これはスゴイな」

お父さん「お母さん、ミナトが小学6年生にしてビットコインを買うらしいぞ」

お母さん「あら、凄いじゃない。お父さんや私がやらないことをミナトがやるなんて・・・」と母は自分の子供の成長が微笑ましかった。


ミナト「貯金があるからまずパソコンを買おうと思うんだ。いいでしょ?お父さん」

お父さん「そうか、本格的だな」

お父さんもミナトのその熱い視線が誇らしく思えた。


お母さん「ミナトはもうすぐ誕生日でしょ。それにあなたは来年から中学生になるんだから、ここはひとつお父さんに良いパソコンを買ってもらいなさい」

台所で料理をしているお母さんが野菜を切って鍋に入れながら、お父さんが新しいパソコンを購入することを促した。


お父さん「おいおい、そんなに本格的に最初からやらないだろ。まずはお試しだよな?」

お父さんはめったにないお母さんの煽りを受けて、焦ってミナトの意見を伺った。

ミナト「もしビットコインを買うなら良いパソコンが欲しいけど・・・パソコンのことはよくわからないからタケル君に相談してみるよ。それからまたお父さんに言うから、パソコンを買うときにお店に連れて行ってね」


お父さん「わかった。ミナトが今ビットコインに夢中なんだな。俺も仮想通貨のことをもう少し詳しく調べておくよ。どんなパソコンがいいかも情報を集めてみよう」

ミナト「ありがとう、お父さん」


この日、小学校6年生の少年は「仮想通貨」「ビットコイン」というものを意識した。

この小さな意識こそが「目覚め」となった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る