第24話過去

 そう、それは、今から百年前のこと。



 私は父のあとを継ぎ、セルス国の王となるのだ。

 王にもなってまで、叶えたい夢。

 皆に批判されながらも、ずっと叶えたいと心から思っていたこと。

「……私は、この国を平和にしたい。」

 治安はそんなに悪くないし、戦争もあまりない。

「戦争のない、平和な国にしたい。」

 そんなこと、できない。

 それがわかっていても、叶えたいのだ。

 そのために、邪気を操れる私は、国のほぼすべての邪気を封印した。

「スウォラ、お前はどう思う?」

 珍しいその白い邪気は、私が生み出したものだ。

 白い邪気はただ私を見つめる。

「……リル。」

 私には、夫がいる。生まれたばかりの子もいる。

「もう夜だし寒いけど……。屋上に行かないか?」

 私は頷いて、夫である彼の後ろを歩いた。

「……なあ、リル。」

 彼は、優しい瞳で私を見つめた。

「急に、どうしたの?」

 風が吹き、彼の青い髪が揺れる。

「……ごめん。」

「え?」

 その瞬間、鋭い痛みが走った。

 私は、その場で倒れる。

 横で、スウォラの声が聞こえる。

「……スウォ……ラ。」

 意識が遠のいていく中、私はなんとか声を絞り出す。

「……守っ、て……。」

 最期に見えたのは、満天の星と青白い月。

 せっかく封印していた邪気も、私が消えたら封印が解ける。


 この国が。


 戦争のない平和な国になりますように。

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