第23話伝えたいこと
『……サフィアさん、咲香さん。聞こえますか?』
スウォラの声を聞き、二人は頬を緩める。
「ああ。」
「きれいな、声だね。」
スウォラは安心したような顔をしたが、すぐに真剣な表情に変わった。
『……ありがとう、ございます。さて、なぜボクがアリナさんを通じてではなく、直接話すかというと、ボクは皆さんに伝えたいことがあるからです。』
「伝えたい、こと?」
『はい。ボクは、リル女王のそばに、ずっといました。百年経っても、リル女王がいたこの城にいました。』
スウォラの声は段々冷たく、重いものへと変わっていった。
『ある日のことです。スサーさんがリル女王に似た人を見つけたと聞いて、南の方へ向かいました。そしたら。』
スウォラは、アリナ、サフィア、咲香を見た。
『トマラの森で、あなたたちに会いました。』
咲香が見つけた、珍しい白い邪気。
冒険を共にしてきた、仲間。
『ボクは、アリナさんがリル女王の生まれ変わりなのを、会った時から知っていました。なのに、それを伝えずにここまできて、トモエさんたちをそのままにして、また旅をしようとしています。』
トモエやスサーを置いて南へ行き、戻ってきたと思ったら、またどこかへ行ってしまう。
『そんなボクを、見捨てて、ください……。』
スウォラの声は震えていた。
真実を伝えずに、昔からの仲間を置いて、旅に出る。
そんな自分は許せないと、そう思ったのだろう。
「ねえ、スウォラ。」
スウォラは声の主の方を見る。
「このさきのスウォラの未来は、スウォラが決めることでしょう?自分がやりたいと思う末来を選びなさい。」
『トモエ、さん……。』
トモエはスウォラの頭を優しくなでた。
『……ボクは、アリナさんたちと、旅をしたいです。』
スウォラの願いを聞き、アリナ、サフィア、咲香は頷いた。
『……ありがとう、ございます。』
スウォラは小さな声で、そうつぶやいた。
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