第22話夢を叶えるために

「なぜ、私がリル女王の記憶を夢で見ていたと、そう断言できるのですか?」

「……確かに、そうだな。」

 スサーは困った顔をした。

「実は、私もアリナ様と同じように、夢で前世の記憶を見ておりました。なので、もしかしたら……と思いまして。」

 トモエは頷き、アリナに近づいた。

「あなたには、邪気使いの能力がある。だから、邪気使いになってほしい。」

 邪気使いで不死身だと恐れられ、それでもセルス国の女王となったリル・ナラカ・セルス。

 その生まれ変わりだと言われ、しかも前世の記憶を見たアリナは今、何を思っているのだろう。

「……私は、リル女王の人生を知っています。」

 アリナは静かに、そう言った。

「私は、リル女王の叶えたかった夢を、知っています。」

 彼女は、トモエを見つめた。

「私は、その夢のためにリル女王がどれだけ努力したのかを、知っています。だから。」

 彼女の瞳は、透き通るようにきれいで。

「その夢を、叶えるために。」

 彼女は、サフィアと咲香を見た。

「私は、姉上や咲香ちゃん、スウォラに、ついて行きます。」

 ここにいる人たち、全員が驚いていた。

 一番驚いていたのは、サフィアだった。

「……あなたがそう決めたのなら、しょうがない。けど、あなたたちは邪気を全て消すのでしょう?それはできないと、分かっているわよね?」

 アリナは強く頷いた。

 邪気は人々の溜まったストレス。邪気を全て消すには、人間全てを殺すことになる。

「それが目的では、ないですから。」

「あなたはどうするの、スウォラ。」

 スウォラは黙って、一つの机の上に乗った。

『あの、皆さんに声が聞こえるようにしてくれませんか?』

 トモエは頷いて、スウォラが乗っている机の上にマイクのようなものを置いた。

 状況が分からないアリナ、サフィア、咲香のために、トモエが説明をする。

「これからスウォラが、あなたたちに話したいことがあるそうだから、邪気の声が聞こえるようになるマイクを設置しているところよ。」

 スウォラは真剣な面持ちで、マイクに向かって喋る。

『……サフィアさん、咲香さん。聞こえますか?』

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