第21話生まれ変わり

「……ここです。」

 スサーの前には、大きな扉があった。

 スサーはゆっくりと扉を開ける。

「……久し振りね。」

 広く明るい部屋。天井はガラス張りで、晴れ渡った空がよく見える。

 その中に、一人佇むトモエは、薄いピンク色のワンピースを着ていた。

「……それで、何の用だ?」

 部屋には小さな椅子と机が一つずつぽつんと置いてある。

「自己紹介を、していなかったわ。私は、先代リル・ナラカ・セルスに継ぎ、四代目邪気使い、トモエ・ナラカ・セルス。」

 トモエはスカートの裾をつまみ、頭を下げた。

「……てことは、もしかしてあなたが、リル女王の生まれ変わりなんですか?」

 トモエは下げていた頭を上げ、アリナを見た。

「……いいえ。私はリル女王の生まれ変わりではないわ。……だって。」

 トモエは真剣な面持ちになる。

「だって、リル女王の生まれ変わりは。」

 そして、トモエはある人に目を向けた。


「……あなたよ。……アリナ・モア・ホルル。」


 沈黙が訪れ、やがて重い空気が流れる。

「……なぜ、アリナが。」

 今まで黙っていたスサーが口を開いた。

「私がある日、アリナ様を見かけた時、とてもリル女王に似ていると思いました。しかし、それだけではありません。」

 サフィアと咲香はアリナを見た。対してアリナ本人は、ただじっとスサーを見つめている。

「もう一つ。アリナ様がルグ村の森に入って少し経った後。アリナ様は森の邪気全てを倒したのです。その後きっと、アリナ様はリル女王様の記憶を全て夢で見たのではないのでしょうか。」

 アリナは少し驚いた顔でスサーを見た。

「……あれが、リル女王の記憶、なのですか?」

 スサーは大きく頷いた。

「だとしたら……。リル女王は、素晴らしい人だと思います。」

「……ほう。」

「私が、リル女王の生まれ変わりだということに、正直まだ信じていません。……それと。」

「それと?」

 トモエが不思議そうにアリナを見る。

「なぜ、私がリル女王の記憶を夢で見ていたと、そう断言できるのですか?」

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