第18話仕えている者

「サフィア様と咲香様、それとアリナ様とスウォラ様ですね。トモエから話は聞いております。どうぞこちらへ。」

「……え?」

 男はそのまま、城の中へスタスタと歩いていく。

「……おい、トモエとオレらは仲間では無いぞ。気安く城の中に案内していいのか?」

 男はこちらをじっと見つめた後、何かを思い出したような顔をし、その後頭を下げた。

「申し遅れました。私の名はスサー・セト・リルカ。私の父はリル・ナラカ・セルスに仕えていた者。私はリル女王の子孫に仕えている者でございます。」

「リル・ナラカ・セルスって……。」

 重い空気が流れる。

「御安心下さいませ。私共は敵対などしておりません。むしろ、尊敬しております。」

 スサーは深々と頭を下げた。

「さあ、どうぞ、こちらへ。」

 スサーは先程のようにスタスタと歩いていった。

「……本当に、信じて大丈夫なのか?」

 サフィアと咲香とスウォラは、スサーの後について城内を歩く。

 外見は小さなレンガでできた城だが、城内は天井が高く、とてもきれいである。

「でも、スウォラがスサーさんについて歩いてるし。」

 スウォラは急いでスサーの後についていく。

 スサーはある部屋の前で足を止めた。

「もう日が暮れると思いますので、こちらの部屋にお泊りください。夕食は後でお持ちします。」

「……え?」

「それでは、ごゆっくり。」

 スサーはそれだけ言うと、早足で去ってしまった。

 スウォラは迷わずそのまま部屋の中に入った。

 部屋の中はきれいでとても広い。

「……なんか、トモエと敵対してるのに城に泊めてくれるなんて、不思議な人だね。」

「何かの罠でなければ良いのだがな……。」

 サフィアはアリナをベッドに寝かせた。

「……さて。オレは薬草を取りに行きたいのだが。」

「あ、私、城内を散歩したいんだよね。スウォラ、アリナの状態を見ててもらってもいい?」

 スウォラは大きく頷いた。

「それじゃ、行くか。」

 サフィアと咲香は部屋を出た。

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