第13話生まれ変わり

「だから、邪気全消しだなんてありえないし、許せないわ。それでも続けるというのなら……。」

 トモエは着ているジャケットのポケットから、短剣を取り出した。

『邪気を作り出す元凶……。』

 スウォラは小さな声でつぶやいた。

 まさか、リル女王の生まれ変わりではないか?

 いや、しかしこのままでは……。

 殺される。

「大丈夫よ、殺しはしないわ。」

 そういうと、トモエは手に持った短剣を投げ、咲香のすぐ近くの壁に刺さった。

「……え。」

 咲香は青ざめた顔で、壁に刺さった短剣を見る。

「……お前、何者だ。」

「馬鹿ね。あなたたちにいうわけがないでしょう?それに、あなたたち、その白い邪気も殺すのよ?邪気を全消しするのだから。」

『……悔しいですけど、あの方の言う通りです。』

 トモエはにやりと笑い、どこかへ行ってしまった。

 トモエが部屋から出ても、重い空気はそのままだ。

「……あいつ、一体、何者なんだ……。」

 姉上はうつむき、つぶやいた。

「咲香ちゃん、大丈夫ですか?」

 私は立ち上がり、青ざめた顔の咲香に近寄る。

「うん、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから。」

 咲香と姉上も立ち上がり、壁に刺さった短剣を見た。

「……あれ?」

 咲香は短剣に触れ、やがて短剣に巻き付いていた白い紙のようなものを取り出した。

「これ……。なんか書いてある。」

 咲香が紙を開くと、アウルの文字で何か書かれていた。

「アウルの北端、ルグ村へ行け……と書いてある。」

「ルグ村、ですか。」

 一瞬で空気が重くなるのが分かった。

「ルグ村って?」

「アウルの北端にある村だ。アウルの中で最も邪気が多く、別名邪気の森。その村の奥には、邪気使いがいるという噂だが……。」

 邪気使い……邪気を操ることのできる者。

 リル女王も邪気使いだったと聞いた。もしかしたら、そこにリル女王の生まれ変わりがいるかもしれない。

「あのトモエって人がリル女王の生まれ変わりなんじゃない?もしかしたら、ルグ村にいるかも。」

「ああ、その可能性は高い。しかし、ルグ村はとても危険な場所だ。」

 邪気は人を殺さない。しかし、邪気の数が多いと、人は病気になる。

 病気にかかれば、余命はわずか。

「それでも、行きますか?」

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