第12話アウルの住人

 女性の名はトモエ。歳は姉上と同じくらいで、髪は私や姉上と同じクリーム色で、胸下まである。

「どうぞ、こちらへ。」

 トモエに会った後、今日は少し寒いからといって、すぐ近くの小さい建物に入った。

 咲香の情報では、そこは『エキのマチアイシツ』らしい。

 室内は暖かく、椅子がいくつかあった。

「あの、トモエさんって、何か悩みとかってあるんですか?」

 私たち三人とスウォラは椅子に腰かけ、トモエは向かい側の椅子に腰かける。

「……悩み、ですか?」

 私はふと、トモエの後ろの邪気を見た。邪気たちはずっと黙って、その場から動かない。

「そうね……。あなたたち、さっきまでアウルにいたでしょう?」

「……え。」

 トモエは少し微笑んだ。

「ど、どうして、アウルを……。」

 姉上が前のめりになって、トモエに問いかける。

「簡単な話よ。黒い髪の子はともかく、クリーム色の髪。それはアウル国の住人である証拠。……それに、私もアウルの人だから。」

 つまり。

 私たちだけでなく、日本とアウルを行き来している人がいた、ということだ。

 アウルの国の人は八割がクリーム色の髪で、二割は茶髪。ステラはアウルの人だが、茶髪である。

 他の国に行けば、青髪や緑色の髪の人などがいる。

「勘違いしないで。私は、あなたたちの仲間になりたくて会ったんじゃないわ。」

 トモエが真剣な表情になる。

「あなたたち、邪気を全消しする旅をしているのよね?私は、反対だわ。」

 トモエの後ろにいる数匹の邪気は、黙ったままこちらを見つめてくる。

「邪気を消して、何が楽しいのかしら?邪気に心があるってこと、あなたたちが一番知っているんじゃないの?邪気を消すのは、人間を消すのと同じことよ。」

 何も、言えなかった。

 邪気に心があるのは、私が一番よく知っている。邪気も人間と同じように、感情を持って生きているのだ。

「だから、邪気全消しだなんてありえないし、許せないわ。それでも続けるというのなら……。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る