第9話サフィアの夜

 皆が寝静まった頃。

 オレ……サフィアは、こっそりと外に出て、近くにあった岩に腰かけた。

 去年、アウルの王から言われた命令。

『この世にある邪気を消せ。』

 そのためにずっと、努力してきた。

 邪気に弱い人は、病気になって約二年で死ぬ。王の娘も、その病気である。

 でも、自分にはできないだろう。

 なぜなら、人が殺せないのだ。

 母上は邪気をたくさんもつ者を、次々と殺していった。その者たちの心を知らずに。

 自分にはそんなこと、絶対にできない。

 しかし、邪気を生み出す元凶はいる。

 少しつらくなって、夜空を見た。

 満天の星と、青白い月。小さい頃、好きで妹と見ていた夜空。

 見とれていると、足になにか触れた。

 足元を見ると、スウォラだった。

「お前も、夜空を見にきたのか?」

 スウォラを持ち上げ、自分の膝の上にのせる。

 スウォラは満天の星が浮かぶ空を見上げた。

「……オレには、剣士の才能が無いな。」

 独り言のようにつぶやいた。

 スウォラはこちらを向いた。

「オレよりも剣士の才能があるのは、妹だ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る