第8話ステラの悩み

「剣士なのに邪気が見えない、か……。」

 彼女の名はステラ・ウイ・ツリル。剣士だが邪気が見えないという理由で、ずっと悩んでいたらしい。

 私たちはあの後、話を聞くためステラの家に行った。

 ステラは一人で暮らしているらしく、家は質素で狭い。

 私と姉上と咲香は、小さな椅子に腰を掛け、続いてステラも椅子に腰を掛けた。

「あの、私、お金無くて、それで……。」

 剣士の収入が高いということを聞き、剣士になった。

 しかし、自分には才能がなく、財産も無いため、剣士の中でも一番下の地位になった。

 剣士であるのに、弓矢が得意である自分。

 いつか有名な剣士になろう。

「……でも、甘かったんです。」

 自分には、邪気が見えないのだ。

 邪気が見えなければ、邪気を倒すことが出来ない。

 剣士の職業もすることができない。

「だから私は、死のうと思いました。」

 でも、自分には怖くて、できなかった。

「なるほどな……。」

 邪気が見えれば、剣士でいられる。

『……てことは、ステラさんは、ボクのことも見えていないということですかね。』

 スウォラら小さい机を占領して、茶菓子を食べていた。

「んー……。そうだな……。」

 姉上はズボンのポケットから、ミサンガを取り出した。

「サフィアさん、それは一体?」

 青と水色の紐と、花の形の銀のチャームがついている。

「これをつけると、邪気が見えるようになる。ただし、一日八時間が限度だ。スーレの村で邪気を倒した時に、お礼に村の人からくれたものだ。ステラ、お前にあげよう。」

 そういって、姉上はステラの手首にミサンガをつけた。

「ステラ、机の上に何があるか分かるか?」

 ステラはじっと机の上を見つめた。

「机の、上……。ひゃっ!?」

 スウォラは満面の笑みでこちらを見つめた。

「何ですか、これ。真っ白な、邪気?」

『アリナさん、ステラさん、ボクのこと見えているようです!さすがサフィアさんですね!』

 ステラは怖がりながらも、スウォラの頭を撫でた。

 スウォラはご機嫌の様子だ。

 「ありがとうございます!」

 ステラは満面の笑みを浮かべ、その後周りにいた邪気が消えた。



 夕方。ステラは夕食の準備で家の中。姉上は剣の鍛錬。私と咲香とスウォラは、ステラの家の外にいた。

「サフィアさんってすごいよねぇ。何でもできるって感じ。」

「ええ、まあ、そうですね。でも、姉上は人を殺すとか、傷付けることができないんです。」

 私と姉上の母は、人をたくさん殺していた。

 そのことも関係しているんだと思う。

「まあ、私も無理だなあ……。今日、思ったんだ。私は、剣術とかできないから……。」

 咲香は真剣な表情になった。

「私に、剣術を教えてください!」

「……分かりました。でも、基本しか教えられませんが……。」

 咲香は微笑んで、私の手を握った。

「ありがとう!」



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