第7話森の先は
「そういえばさあ、前から思ってたんだけど、サフィアさんってなんで女性なのに一人称オレなの?」
咲香はスオォラを抱え、私たちはトマラの森の上り坂を歩いていた。
「確かに、小さい時からオレですね。それが日常だったので、あまり気にしてませんでしたけど。」
「……そうだな。昔、男の方が強いと思ってたからな。それで多分、オレと言うようになった。」
昔は男の方が強かったが、今は平等である。
体力でいったら、女の方が強いかもしれない。
「なるほど。……ねえ、なんか変な音がしない?」
『アリナさん、邪気の反応があります。約百匹ほどです。』
「姉上、この先に邪気が百匹ほどいるようです。」
同時に、咲香が言ったように、何か不快な音が聞こえてきた。
「もうすぐ森の外だ。その付近に邪気をたくさん持った人がいるのかもしれないな。」
百匹だということは、咲香の時と同じくらいの数だ。
不快な音が、どんどん大きくなっていく。
「この音……。矢を飛ばしているのか?」
瞬間、こちらに矢が飛んできた。
その矢を、すんでのところでかわす。
「すぐそこにいるな。」
森を出るための道の先は、とても明るかった。
その明るい所の先には……。
一人の、剣士がいた。
赤いバンダナを頭につけ、肩までのびる髪を揺らし、腰には短剣が二本。手には弓矢を持っている。
「サフィア、さん……。」
彼女の周りには、無数の邪気が漂っていた。
『見られた。』
『恥ずかしい。』
邪気は口々にそう言った。
「アリナ、手繋ごう。」
私はちょっと不安だったが、咲香と手を繋いだ。
「……邪気って、なんかちょっと怖いね。」
「……私も、そう思います。」
邪気は姉上の方に向かってきたので、姉上は剣で切った。
邪気は悲鳴を上げた後、空気に溶けて消えた。
「……助けて下さい。」
「え?」
「助けて下さい!」
彼女の瞳には、涙が溜まっていた。
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