第5話白い邪気

 その時。奥の方に、白い光が見えた。

 咲香はそれに向かって、一直線に進んでいく。

 「ねえ、アリナ。」

 咲香は白い何かを抱えて戻ってきた。

「さ、咲香、それは……。」

「これは、邪気、なの?」

 よく見ると、顔がある真っ白な邪気。

「それは……邪気だ。」

 私が言う前に、姉上が言った。

「一万分の一の確率で現れると言われている白い邪気だ。」

「え、い、一万分の一、なんですか?」

 私はその貴重な白い邪気を見た。

「ねえ、この邪気と一緒にいてもいいかな?」

「咲香、オレの仕事を知っているか?」

 私はもちろん、知っていた。

「オレは、この世界中にいる邪気を全て消すことが仕事なんだ。」

 咲香には、残酷なことかもしれない。

 でも、姉上は世界中の人々を守るために剣士になったのだ。

「でも……。」

「あの、皆さん。」

 さっきから白い邪気が私に訴えかけてくるので、言うことにした。

「僕は、スウォラといいます。あの、僕は邪気ですけど、人間に害はないので安心してください。」

「……は?」

 私は白い邪気を指さした。

「咲香ちゃんが持っている邪気の言葉です。頼まれたので……。」

 小さい時から、邪気の声は聞こえていた。

 でも、いつもその言葉は怖いものだったから、聞かなかった。

 それに、私以外の人に、変な目で見られるから。

 でも、スウォラは違う。

「僕は色々あって、この森に来ました。正直、邪気を全て消すのは賛成です。あなた達に、ついていきたいと思います。」

 私は、スウォラが言ったことをそのまま言う。

「どうしますか?」

「私は、別にいいよ。ていうか、私が連れて来たから当たり前か。」

「……え?」

「ど、どうした?」

 スウォラは、真剣な顔を私に向けた。

「邪気を全て消すには、リル・ナラカ・セルスを倒すこと……だそうです。」



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