第3話ついていきたい。

 彼女が落ちようとした、その時。

 姉上が彼女を支えていた。

「えっ……。」

 姉上は彼女を引き上げ、橋の上におろす。

「姉上。」

 私は二人の元へ走った。

「おい、お前、なんで自殺しようとしたんだ?」

「……。」

 彼女は何も答えない。

「あの、な、なにかあったのですか?」

「……なんで、助けたの。」

「え?」

「なんで助けたのって聞いてるの!あのままにしておいてよ、あんたたちには関係ないでしょ!」

 姉上は一歩前に出た。

「オレはお前を助けた。その時点でもう、関係者なんじゃないのか?」

 彼女はポカンと口を開け、その場で膝をついた。

「……分かったわよ。私は咲香。山里咲香。」

「ん?山里って……。」

 私たちがこの世界に来た時に見た、ポスター。

 そこには山里京子と書かれていた。

「サキカ、か。面白い名前だな。」

「私のお母さんは、偉い人よ。あなたたちも知ってるでしょ?山里京子って人。なにがこの日本を変えてやる、よ。小さい頃からまともに私と話したことないくせにさ。あなたたちはいいよね。頼れる人がいてさ。もう、疲れちゃったよ。」

 姉上は話に飲み込めないのか、きょとんとした顔で咲香を見つめていた。

「ねえ、咲香ちゃん。」

 咲香の短い髪が、ほのかに揺れた。

「頼れる人、いるじゃないですか。」

「どこにいるのよ、そんな人。」

 私は、笑った。

「ここに、二人。」

 咲香はびっくりしたのか、急に顔を上げた。

「え?」

「私、咲香ちゃんのこと、応援します。ね、姉上?」

「……まあ、アリナが言うなら……。」

 咲香の瞳に、小さな希望が映えた。

「そっか……。」

 咲香は立ち上がった。

「そういえばさ、あなたたちどこの国から来たの?」

 私たちのクリーム色の髪が珍しいのか、咲香はこちらを見つめていた。

「アウルです。急にこの国に飛ばされて……。」

「アウル?聞いたこと無いな……。でも、面白そうだね、あなたたちについてってもいい?」

「……旅行気分でアウルに行くと、死ぬぞ。」

 姉上が低い声で物騒なことを言った。

「分かった。もう夜だし、私ん家に泊まって行きなよ。」

「あ、ありがとうございます。」

 私たちは咲香の家へ向かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る