第2話邪気を多く持つ女性

「姉上……。なんでここってこんなに邪気が多いのでしょうか?」

 大通りに出ると、人であふれかえっていた。

「……人が密集しているからだ。にしても、これだけの数の人と邪気がいるとは……。」

 私たちは人をかき分け、前へと歩いていった。


日が暮れるまで歩くと、辺りは低い建物に囲まれていた。

「日が暮れてもアウルに戻れないなんて……。」

「こんなの初めてだな……。ん?」

 姉上は急に立ち止まった。

「あの家から、大量の邪気が……。」

 姉上が見ている方を見ると、少し遠くの建物から大量の邪気が溢れていた。

 その建物から、私と同じくらいの歳だと思われる女性が出てきた。

 女性の後ろから、たくさんの邪気がついてきている。

「あの家の元凶は、あいつか……。」

 姉上は、女性の後をついていこうとする。

「あ、姉上。何をするのですか?」

「あいつが何をするのか見に行くんだ。」

「でも……。」

 邪気を持っている、というのは非常に怪しい。それに、あの女性は赤の他人だ。

「アリナ。オレの仕事は邪気を消すことだ。一人でも多くの人を守りたいんだ。」

 姉上はそう言うと、私に背を向けて歩いて行った。

 私も、少し遅れて歩き出した。

 しばらく女性についていくと、彼女は大きな川の橋の上で足を止めた。

「なんで、橋?」

 女性は橋の柵に登り、柵の上に立って両手を広げた。

「ま、まさか……。」

 彼女が落ちようとした、その時。

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