私はどれなのだろう

 私はどれなのだろう。私はどれなのだ。

 私自身は私自身を指し示すことさえない――ひとりである私の一人称は実効性を欠いており、私は決して私を見つけだせない。

 それにもかかわらず私は私を私と書きつける。私がひとりなのは世界には私のほかにはなにもないからではなく、ただ私がひとりだからであり、私でないあらゆるものたちがたしかに私でないかぎり、すなわち世界が世界であるかぎり私は私を私と書きつけねばならない。私はそのようにして私を指し示す――私を直接指し示すことなしに。私は私を世界のどこにも見いだせないがゆえに私なのであり、まさそのような方途によってのみ私は見いだされる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る