第8話 お菓子な工房。
工房に案内された俺は、ええい、成るが
それにしても、姫様御付きのお菓子職人のキッチンだけあって立派だ。様々な器具が
女装姿の俺は真剣な
すると、
「お待たせしました!」
と、エプロン姿のネージェ、コルネ、ルシールの三人が入って来た。
「お手伝い致します。何なりとお命じ下さい、ナオト様」
「えっ、本当?」
「はい。
「ルシールと申します。火加減ならお任せを。お好みの焼き具合にしてみましょう」
「コルネでございます。何でも巻きつけるのが大好きです。飾り付けなどの仕上げを担当します」
ん、何だ? この展開、もしかして、俺、作らなくても良い?
「よし!」
と、俺はこういうのを作りたいと、ネージェ達に提案した。
「はい、分かりました。コルネ、ルシール、よろしくて?」
「よろしいでございまする」
「
三人が各々の位置に着く。
ネージェが下地を作る。とろーり、とろーりな下地を。
ルシールが大きなフライパンで薄ーく、
冷やした後で、コルネがクリームとマーガリンを引いて、その後、巻き巻き。
はい、
「出来たーっ!」
と、俺は叫んだ。結局、見ていただけで、何もしていないのだが。
早速、姫様にご試食を。御前に参った。
「おお、出来上がりましたか!」
と、姫様は思わず椅子から立ち上がれたが、
「先ずは、
と、タルトが遮った。口に頬張り、モグモグと。
「なっ、どうである?」
「ん、うん、ん……暫し、お待ちを」
「あぁ、もう、早う、早うっ!」
「姫様が直ぐに頂かれては、
ショコラ姫は待ち惚けを食らいなされた。
「もう待てぬ!」
「
主従の攻防ならぬ、やり取りをよそに……俺は思いを巡らせた。
無事に元の世界に帰れるのだろうか? それとも、これは夢で、起きたら現実に戻れるのではないか?
猪口さんは? 彼女と商品ケース越しに話したあれは、あの瞬間は、俺の心を時めかせて。彼女の、チョコレート色に輝いた髪々が、はっきりと俺の脳裏に焼き付いていた。
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