第6話 お菓子な姉姫。

「あぁ……」

俺は目の前の光景に後退あとずりした。

「何で俺を、こんな世界に連れて来たんですが?」

と、俺はショコラ姫に尋ねた。

ショコラ姫は侍女のタルトにあごで促す。

「私めが代わりにお答えします。ナオト殿にはお菓子合かしあわせに挑んでもらいます」

「お菓子合?」

「はい。実はショコラ姫の姉君、シャルロット姫の御付きのお菓子職人がお菓子合を申し入れて来たのです。どちらがより美味しいお菓子を作れるのか、優劣を付けようと。所が……事もあろうにこちら側の、ショコラ姫様御付きのお菓子職人は勝負に恐れおののいて、逃げてしまったのです」

「それで俺を?」

如何いかにも」

と、ショコラ姫はようやく口に開いた。

「ナオト殿、そなたの力が必要なのです。どうかわらわの為に、いえ、国の為をと思って、美味しいお菓子を作って下され」

「えぇー! 国のとか、そんな大袈裟な。第一自分は」

「事は重要なのです、ナオト殿!」

と、タルトに詰め寄られた。

「国王陛下には御子は二人だけしかられません。シャルロット姫とショコラ姫です」

「つまり、どちらが跡を継ぐかで争っていると?」

わたくしは別に王座は望んでいません」

と、ショコラ姫はきっぱりと否定した。

「しかし、姉君は事あるごとに難癖を……」

「シャルロット姫は何事にもぜいらす御方で」

と、タルトゥが言葉を引き継いだ。

「歳を重ねると共に、度が益々ますます行き過ぎて。将来、シャルロット姫が王座に御着き遊ばれたら、国が傾くのではと危惧する声が一部にあり。それが元で、御二方の間に軋轢あつれきが生じているのです」

タルトは両手を重ね合わせて、懇願する。

「ナオト殿。どうか姫様に御力添えを!」

「そう言われても」

「時はもうございません。お菓子合は今宵こよい行われるのです」

「今宵って、今夜?」

「そう。ですから、取り敢えず御着替えを。この服装ではまずうございます。さあ、こちらに!」

「いや、俺は」

「ネージェ、コルネ、ルシール。あなた達も加勢しなさい」

「はい」

「さあ、ナオト殿。早くお部屋に」

「そおれっ」

「あ~、姫!。自分は……」

と、俺は侍女らに無理矢理、強引に別室に押し込まれた。

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