第31話

  ☯


 放送室をジャックしたことで、青葉ちゃんは青花ちゃんに突きつけた。


 周囲の声を聞いていると、戸惑っている声が響いてくる。


『青花さんに戦いを挑む、だって?』


『青花さんは魂生師じゃないの?』


『俺たちは青花さんに騙されていたのか?』


『東方の結界が崩壊するって、本当なのかよ……?』


『このままじゃ、この広輪京は滅ぶってこと?』


『じゃあ、どうしたらいいんだよ!』


『クズ葉が戦うっていうんだから、その戦いを見守るしかねえんじゃねえの?』


『見守るって……まあ、ただ見ているしかできないよなあ……俺たち魂装師は』


『どうなるか、見ものだね』


 大体そんな感じか……。


「この戦いで、葛原青葉は、葛原青花を倒し、広輪京の……日本の平和を守るために努力いたします!」


「ふざけたこと言ってんじゃないわよ!」


 青花ちゃんが放送室の扉を破壊する。


「青花隊、やつらをひっ捕らえろ!」


 葛原青花は自身の戦力である青花隊を俺たちに放つ。


 青花隊は青花ちゃんの魂装師の部隊だ。


 青花ちゃんの魂珠を使い、風の呪術を発動させる。


『風の矢!』


「超障壁」


 俺の能力で呪術である風の矢の効果をなくした。


「残念だったな。青花ちゃんの魂珠じゃあ、俺の障壁は突破できねえよ」


「ぐ、ぐ、ぐぬぬ……」


「もう、戦うしかねえんだわ。青花ちゃんが青葉ちゃんに、どんなに怯えていようがな」


「お、お、怯えてなんかないわよ! こんなクズ葉に!」


「だったら……正々堂々、勝負してみろってんだ」


「あんたたちに付き合ってられないわよ! 東方を守護する魂生師の時間を奪うな! 魂珠の作成に忙しいのに!」


「その魂珠をちゃんと作れるんだったら、いいんだけどな」


「どういう意味よ」


「青葉ちゃんの能力を奪って作る魂珠は、この世界にとって平和を導けるような、そんな代物になっているのかい?」


「……そうよ。それに非魂の巫女である青葉には魂珠を作ることができないし――」


「今、俺が、青葉ちゃんに仕掛けられた術式を解除しようとしたとしてもか?」


「…………」


「そうしたら、青花ちゃんは……青葉ちゃんと戦うことができる?」


「…………それは――」


「ちなみに今も陰陽院の全エリアに俺たちの会話は聞こえているけど」


「――!」


「青葉ちゃんにかけられた術式は解除しなくていい。ただ、少し調整はさせてもらう。青葉ちゃんにも魂珠が生成できるようにな」


「……どうするつもり?」


「青花隊と青花ちゃんで戦いに挑んでこい。俺は青葉ちゃんを非魂の巫女の立場から東方の守護する巫女への立場に変更するために協力して戦うよ」


「決闘をするってことね」


「陰陽院の生徒も、これで納得するだろう。葛原青花、俺たちを陰陽院の闘技場へ案内しろ」


「そもそも、おまえは自分が悪神であることを理解していますの?」


「確かに俺は日本から追放された神であるが、俺は今回の戦いで正式に陰陽院の生徒になるよ」


「なら、お互いにかけるものは決まったってことね。いいでしょう。あたしもかけます」


「よし、じゃあ闘技場へ案内してくれ」


「わかったわ。どんな立場になったとしても、後悔しないようにね」


 こうして、どちらが東方の巫女にふさわしいかをかけた戦いと、俺が陰陽院の正式な生徒になるための戦いが始まろうとしていた――。

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