第30話

  ☯


「わたしの……想い……」


「君は、どうしたいんだ? 君が、どんな答えを出すのか、楽しみにしているよ」


 俺たちは歴史的な書物が格納されている図書館を出て、放送室へ向かう。


 この国を守るには、まず、なによりも、俺たちが生き残ることを考えなければならない。


 そして、今の黒幕である青花ちゃんと話をしなければならない。


「まあ、すべてうまくいくとは思えないけどね……」


  ☯


「ふぅーん……なるほどね」


 俺たちは放送室にたどり着く。


「まあ、よくある放送室っていうよりは、ちょっと和風な感じだなあ……」


「和風っていうのが、よくわからないけど、蛭子くんは学校に通ってなかったんだよね? どこで知ったの?」


「う、うーん……そんな感じがしただけだよ。俺にも、よくわからないけど」


 俺は頭をポリポリかいた。


 ごまかしたのだ。


 転生者であることを。


「そんなことより、さて……どうしようかな?」


 放送室には、ふたりの魂装師がいた。


 俺たちの姿は彼らには見えていないし、俺たちの声ですら彼らには聞こえていない。


 チャンスだ。


「……えいっ!」


 ふたりの魂装師の首に手刀を決める。


『――……!』


 彼らは倒れた。


「入るぞ」


「うんっ!」


 俺たちは放送室に入っていく。


「装置の使い方は、わかる?」


「うーん、こういう装置に今まで触れたことがなくて……」


「……おっ、説明書あんじゃん! これを見てやろう」


「そうだね」


 青葉ちゃんは緊張した様子だ。


 今、俺にできることは彼女を見守ることだ。


 ただ、放送室で座っているだけでいい。


「まあ、なるようになるとは思うし、がんばっていこうぜ!」


「うん……がんばるよ」


 さて、とりあえず、この国の未来を決める戦いを始めますか。


「青葉ちゃん、準備はできた?」


「いつでもいいよ……!」


「よし、いこう」


 青葉ちゃんは装置に触れる。


 するとマイクのスイッチが入り、陰陽院の全エリアにマイクの起動音が鳴る。


『陰陽院の魂装師の皆さま、これから、わたし、葛原青葉は、ある真実をお伝えします』


 俺は瞬間的に放送室の扉に鍵をかけて誰も入れないようにした。


『今、葛原家は、葛原神社は、東方を守護する力を失いつつあります。


 現在の五方の巫女である葛原青花は自身の地位のためにわたしに術式を施しています』


 正直に言うことにしたんだね。


『本来の魂生師であるわたし、葛原青葉から術式を施すことにより能力を奪っています。ですから、葛原青花の生成する青龍魂珠は、うまく効果を使用できていません』


 彼女は現状を告白する。


『このままでは東方の結界が崩壊し、悪神が大量に侵略してきます。もう、時間は、ありません。だから、わたし、葛原青葉は再び、東方を司る五方の巫女として復活するために……葛原青花に戦いを挑みますっ!』

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