第29話
☯
「ある情報を取得?」
「ああ。その情報とは、とある術式についてだ。『魂の共有』をするための術式について書かれた書物だった」
俺は結論を述べる。
「『魂の共有』とは、そのままの意味で魂と魂をつなげる術式のこと。人の魂と人の魂をつなげることで、その能力を使うことができる。まあ、仲間同士で同じ術を使用するときに重要な術式だね」
「それって……それをお姉ちゃんが調べているってことは……」
「そう。青花ちゃんは双子の妹である青葉ちゃんに『魂の共有』をおこない、ある方法で青葉ちゃんに魂珠を生成できなくした状態で自分だけ魂珠を生成できるようにした。魂珠は選ばれた巫女にしか生成できないが、双子の魂は似ている。青花ちゃんは、その性質を利用し、自分だけが魂珠を生み出せるように青葉ちゃんに罠を仕掛け、なにもできなくしたんだ」
「そんな……それが本当だとしたら、わたしは……」
「青花ちゃんに騙されているってことだね」
「…………そっか」
青葉ちゃんは悲しそうな顔をしている。
俺は彼女に、どうしたいのかを問う。
「青葉ちゃんは、これから、どうする? どうしたい?」
「…………わからない」
「わからない……か」
おそらく、彼女は自分と青花ちゃんのどちらを優先すればいいのか、どうすればいいのか、わからないってことを俺に伝えたいのだと思う。
本当にやさしい子だ。
自分より他者を優先したい。
その気持ちは、誰よりも
でも、だからって《本当の力》を封印していいという理由にはならない。
「本当の後継者なら、ひとりより多くの人を救うことが使命のはずだよ」
「本当の後継者って?」
「五方の巫女の東方を司る巫女は『青葉』の名を継承する。先祖代々から『葛原青葉』が東方を守護する力となる。つまり、葛原青花は後継者じゃないってことだよ」
「でも、それがお姉ちゃんの望んだことなら……!」
「いや、そのうち悪神に侵略されるかもしれないんだ。広輪京は……
「……!」
「『魂の共有』は万能じゃないって、青花ちゃんにわからせるためには対話をおこなうしかない。それに、もう時間がない」
「時間がないって、どういうこと……?」
「今まで以上に強力な悪神は、もうすぐ来る。あの海を越えて」
「来る……の?」
「だから、これから第三段階へ移行する」
「第三段階?」
「陰陽院の放送室の占領するんだ。そこで陰陽院の魂装師に真実を伝えよう」
おそらく、これが最後の段階になるはずだ。
「葛原青葉、君の、ありったけの想いを、ぶちまけてしまえ!」
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