第28話

  ☯


「陰陽院に侵入する?」


「うん。今の陰陽院は青花ちゃんのせいで俺たちはお尋ね者みたいな状態だから、こっそりと歴史的書物を探しに行くってわけ。それが第二段階」


 俺は思うことを述べていく。


「本来、葛原家において魂珠を生成できる魂生師である者に与えられる名は『青葉』であると代々決まっていると書いてあった。なら、どうして名を継いでいない青花ちゃんが魂珠を生み出すことができるのか……知りたくないかい?」


「葛原家が間違っているという可能性はない、かな……?」


「それは、ないと思う。『青葉』という名は神託によって決められるものだから」


「しん……たく?」


「神のお告げってこと」


 俺は切り出す。


「じゃあ、行こうか。歴史的書物のある場所へ」


「うん」


 俺と青葉ちゃんは陰陽院の中へ侵入していく。


  ☯


 歴史的書物のある場所は陰陽院の中にある図書館の最奥部だ。


 俺たちは、そこで歴史的書物を読み込んでいくわけだけど……。


「多い、多いよ! どうしよう……」


「まあ、流石に多すぎるわな」


「このままじゃ、誰かに見つかって、しょ、しょ、処刑されちゃうよ……!」


「じゃあ、奥の手を使うか……」


「奥の手?」


「ああ、ちょっと待ってな」


 俺はゴーグルを装着して、両方の義手を構える。


「書物、吸収……!」


 俺の脳に大量の書物の情報が流れ出す。それをすべて拾い上げる。


「完了……! これで、ここにある歴史的書物の情報は俺の脳の中にある」


「なにをやったの?」


「要は書物のデータを俺の脳に格納したんだ。ヒルコ……蛭子神には『蛭』という文字があるだろ? それを利用したってわけ」


「ちょっと意味がわからないけど……」


「わかりやすく言うと、蛭……ヒルは手足のない血を吸収する生物だ。その吸収の力を応用して、すべての書物の情報を吸収したってこと」


「名前の文字で吸収の力が発動できるの?」


「名前には、もちろん意味がある。まあ、その力が使えるのは神や妖怪のような神霊に等しい存在だよ。もしかしたら巫女である青葉ちゃんにも使えるかもね」


「へえ、そうなんだ……!」


「仮にも魂珠を生み出せる家系だから、いつかできるようになると思うよ」


「そう、だと、いいな…………」


 青葉ちゃんは、ちょっとうつむく。


 まだ自信がないんだ、青葉ちゃんには……。


「さて、歴史的書物を読み込んだ結果だけど、その歴史的書物には青花ちゃんの読み込んだ痕跡のある書物が見つかった」


「えっ?」


「そう、青花ちゃんは歴史的書物の中から、ある情報を取得している」

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